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長女アイラ

 

 騎士団の詰所、そこに走り込みを終えた騎士達がやってきた。


「本日の走りこみはここまで!後は各班隊長の指示に従え!以上、散会!」


 騎士団長モルドの掛け声で今まで騎士達は各隊の隊長の下へ集まった後各々別の訓練に向かう。


「隊長~今日はこの後は何をします~?」


 アイラの元へのんびりした口調でやってきたのは追跡班の班長を務めるビットだ。


「おいビット、その口調はどうにかできないのか?」


 ビットの喋り方を咎めながらやってきたのは索敵班の班長クータ。


「俺の口調を咎められる筋合いはありませ~ん。隊長に言われるならともかくクータには言う権利はありませ~ん」


「お前・・・喧嘩売ってるのか?買うぞ?捨て値で買うぞ?」


 ビットは与えられた任務はきちっとこなすのだが、間延びした喋り方をしていることや眠そうな目つきもあり、あまりビットの事を知らない人物からの評価が低くなりがちだ。クータは細かいところもきちっとした性格で、他人の事を指摘することが多く、彼もまた周囲からは敬遠されがちな人物だ。


 ビットの目つきは生来のものだし、クータは人に厳しいが、自分にはもっと厳しい。それにクータが周りの人間に注意するのは本人のことを思ってのものだ。だから多少なりとも付き合いがあれば彼らを良く知らない人間が言っている事は、優秀な人間に対する妬みなのだとわかる。


「二人ともやめませんか。隊長の前ですよ」


 もめている二人を制したのは副隊長、陽動班のギッツだった。


「すいません副長。こんなところでやるべきことではありませんでした」


「クータもこういってるんで許してやってくださいね?たいちょ~」


 素直に謝罪するクータとその揚げ足すら取ってしまおうとするビット。アイラはそんなやり取りを笑いながら見ていた。



 薬屋「イナバ」の白兎三姉妹長女。機動力に長け、市内での追跡などを得意とする部隊、跳躍隊の隊長で騎士団の中でも五本指に入る実力を持つ。

 整った顔立ちに腰ほどまで伸ばした白い髪。士郎の美醜感で言えば間違いなく美少女に分類される人物である。しかしこの世界の価値観では中の下に分類される。

 一に筋肉、二に強さ、そして次に顔立ちなのだ。アイラは鍛えても筋肉が付くタイプではなく、見た目はほっそりしているのだ。なのでこの世界の筋肉が至上とされる美醜の中ではあまり評価されてこなかった。


 今の彼女は士郎に始めて出会ったときのようなフルプレートではない。直接の戦闘がわかりきっている場面では完全装備をすることもあるが、基本的には動きやすさを優先してチェーンメイルのみであることが多い。


「今日はそうだな・・・このまま走りこみを続けようか」


 朝集まってから巡回の担当者以外で行われる走り込みは重装部隊なども居るため軽いものだ。とはいえチェーンメイルを装備して10キロ近く走っているのだから常人には厳しいものなのだが。

 そして跳躍部隊は機動力が重視される部隊だ。当然ながら走り込みだって簡単なものではない。


「ルールはいつもどおりでいいな?走っていいのは建築物の上のみ。今日はそうだな・・・南門の門番の前を目標としようか」


「わっかりました~クータは俺に負けたら晩飯奢りな~」


 目標を告げたらスタート。それも跳躍隊で走りこみをするときのルールだ。ビットはクータに宣言すると近くの建物に飛び乗り走っていってしまった。


「おい!勝手に決めるんじゃない!くそ、またないか!」


 一方的に賭けを決められたクータは怒りながらもビットを追いかけて走り始めた。負けると律儀に奢るのが彼らしいといえば彼らしいのだが。


「ほら、班長達はもう行ってますよ。貴方達も向かいなさい」


 班長達が出発したのを唖然と見送る部下たち。それに発破をかけてからギッツも走り始めた。そこへアイラがとどめの一言を告げる。


「私は5分後に出発するから、私より遅かったものは特訓ね?」


 特訓、それは筋肉をつけるためアイラが普段自分に課しているトレーニングである。それを1ヶ月続ければ常人でもムキムキになれると噂されている。しかし、実際は1日のトレーニングで皆心が折れてしまう。それほどアイラは普段厳しいトレーニングをしているのだ。納得の強さである。


「は、はしれぇぇぇぇぇぇ!」


 隊長より遅かったら地獄のトレーニング、団員たちは己の身を守るため一斉に走り出したのだった。





 クータはビットに追いつけず晩御飯を奢ることになり、隊長のトレーニングの道連れが2人ほど居たことを伝えておく。

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