表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合、微かに揺れて  作者: ぺりぺり
7/7

お祭りの話

遅くなりました。

 少し遠出してお祭りに来た。

「思ってたより大きいもんだねぇ」

「そうだね」

「たこ焼き! かき氷! りんご飴!」

 はしゃいでる恵を見て、来て良かったと思う。

 毎年夏前になるとやってるお祭りらしい。地元でも一昨年までは同じくらいの時期に祭りをやってたけど、予算と人手の都合で去年からやらなくなってしまった。恵が凄く落ち込んでいたから、今年はと思い調べておいた。

 そんなに大きくはないけど、にぎやかだ。

「へいへいかなちゃん、たこ焼きあーん」

 いつの間にか買っていたたこ焼きをつまようじに刺して向けてきた。

「ん、あ」

 開けた口に熱い塊が入れられた。めっちゃ熱い。

「お、わ、は、はっふ、う」

「あっはっは」

 楽しそうでなによりだった。

「んー、混んできたねぇ」

「そうだね」

「手、手つないで」

「はいはい」

 指を絡め、握り合う。

「ふ、んふふ……えっへへぇ」

「気持ち悪いよ」

 テンション上がりすぎだろう。

 屋台を見ながら歩いていたら、なんか変なのを恵が見つけた。

「なにあれ」

 でかくて真っ赤なハートの形の箱の側面にたくさん穴が空いていて、そこから紐が出ている。

 困った。何がって、恵があの変なのに興味津々だからだ。

「あれ、なんだろね」

「……えぇ」

「おじさんコレなんですか?」

「ちょ」

 屋台の店主っぽい人が勢いよく振り返った。

「お、客か! いらっしゃい!」

「客ですが、コレなんすか?」

「んああ! コレな、2人でそれぞれ一本ずつ紐を選んで、引っ張るんだ。そんでその2本が繋がってたら縁結び完了ってことで、神様から御加護がもらえんだ」

 恵が首をかしげた。

「縁結び……ここの地域ってそういうのあるんですか?」

「なんだ、知らんで来たのか?」

「…………かなちゃん」

「え、な、なに?」

「ちょっとくらい言ってくれても良いと思うんですけどー」

 んぐぅ。

「い、いいじゃん。それより、ほら、やるんでしょ」

「まぁいいけどさー。おじさんコレ景品とか無いの?」

「もちろんあるぞ。金一封!」

「おお!」

「っていうのは流石に重たいから、お菓子の詰め合わせとそこの神社で売ってる縁結びの御守りだ」

「えぇー」

「まあまあ、一回百円でお菓子と御守りまでもらえるんだぞ? 総額1500円くらい」

「んー、まあ、そのくらいだったら結構お得なのか……百円だもんなー」

 そう言いながら財布から百円を取り出して店主の手にのせた。

「ありがとさん! んじゃあ、1人一本ずつ紐を選んでくれ」

「ちなみに何本当たりあるんですか?」

「紐の数は全部で80本、そのうちの6本が当たり。つまり3組だな」

「うわ、結構シビアですね」

「引かれた紐は戻してないから外した客の数で確率は上がっていく……まあまだ2組しか引いてないけど」

 いや当たらないだろ、と思いつつ紐と箱を眺めてみる。

「んん……」

 そもそもこの見た目じゃあほとんど客が来ない気がする。ハートから毛が生えてるようにも見えるし。

「よし、君に決めた!」

 そう言って恵が紐を掴む。

 じゃあ、と適当に目の前にあったやつを掴んだ。

「いい?」

「ん」

 せーの、と恵の声で引っ張った。

「っと」

「んおっ」

 一瞬手応えを感じで紐を放しそうになる。ぐっと指に力を込めて押さえると、紐は抵抗なく引けた。先はまだハートの中だった。恵を見ると、自分の手元を見て目を丸くしている。

「まさか」

 スルスルと紐を引くと、結構な長さで出てきた。

「お、おおお」

 おじさんが手をわなわなさせて叫んだ。

「当たりだあぁー!」

「おおおーー!」

 ついでに恵も叫んでいた。マジか。

「やった! かなちゃん、当たり! すごい!」

「え、あぁ、あはは、あ、あうあうあう」

 ガクガクと肩を揺すられる。まさか、本当に当たるとは。確率はどれくらいだろう。

 おじさんがいそいそと屋台の中から袋を取り出してきた。

「ほれ、お菓子と御守り。おめでとう!」

 恵に袋を渡して大きな音をたてて拍手をする。なんだなんだと周りの人が集まってくる。恥ずかしいので恵を連れてさっさと輪の外に出ることにした。

 祭の喧騒から少し離れたところに神社があった。多分この神社のお祭なんだろうけど、参拝に来る人は見当たらなかった。

 道のわきにベンチがあったのでそこに座ってもらった袋を開けた。お菓子がいっぱいと御守りが2つ入っていた。

「赤と青だね」

「どっちがいい?」

「かなちゃん赤好きでしょ」

「ん、ありがと」

 青を恵に、赤をあたしに。

「いやぁ、これが奇跡ってやつですかな」

「そうかもね」

 葉が生い茂った木々が風に吹かれてガサガサと音を立てて揺れる。心地いい音が 耳に触れ、二人きりなのを実感させる。

「お菓子、どうする?」

「かなちゃんの家で食べまする」

「泊まってく気?」

「いえーす」

 足をパタパタさせながら恵が笑う。ほほえましさを感じて自然と顔がゆるむ。

「あ」

「ん?」

「んむ」

 キスされた。

「……………………は、えぇ?」

「へっへっへ」

 笑って。

「ありがと」

 なにに対してだろう。いくらでも思い付くけれど、でも感謝されたなら良いことなんだろう。

「どういたしまして」

 夜の闇に声が溶け込む。できることなら、話したことを全て覚えていたい。けれど、できないからこそ尊いのだろう。

 終わりがないなんてのはあり得ない。けれど。

 この関係が終わらないのをただ願って。

「大好きだよ」

 そう、お互いに言い合うんだろう。

携帯で書いているのですが、最近初めて段落をつける機能があることに気づきました。スペース打っても全部半角になって、半角スペースだと表示されてなかったんです。今回は入れてみましたが、めんどかったんで次からは無くなってると思います。見辛いかとは思いますが、モチベーションをこれ以上下げてもあれなので、ご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ