面倒事1
「ッッッッ!!!!!」
何やら隣の方が驚いた様子で振り向いた。
「やっぱり。ま~たこんなところにいましたか。」
パッと見20代くらいの若い男性だった
しかし、その服装が異常だ赤と黒を基調とした浴衣のようなものに膝や肘を始めとしプロテクターを付けていた。そしてその胸にはある紋章が描かれていた。
―――『世界樹と地をはう龍』―――
ユグドラシルの根を巨龍ニーズヘッグが巻き付く様子を模したこの紋章は……
(王国騎士団か……)
そう、この紋章を持つものはアレスガルド王国が保持する最高戦力軍、通称『ナイト・オブ・シールド――――騎士の盾』そう呼ばれている。
(何でここにこんな奴らが……?)
無論、別に理由が思い当たらない訳では無い事を燈夜はじゅうじゅう承知していた。だから、
(よし、ここはこの騎士にこの子を連れて帰ってもらおう。)
そう素早く決めるとこの少女を差し出すべく(決して言い方が悪いだけで何一つ悪意は無い)一歩下がろうとした時だった
「ええい!ここはひとまず逃げるわよ!」
と、言うが早いかそのバカ美少女?に襟首を捕まれ一気に走り出した
「え?えええぇぇぇぇぇ!!????」
相手もさぞかし動揺してるだろう。だって俺もだもん。
「あ〜もう!コイツには聞きたいことが山ほどあるのに!!!」
「?」
聞きたいこと?何を言ってるのだろう?そう聞こうと思った時だった
「お~いそこの君そのまま行くと取り返しのつかない国家反逆罪をその年で犯したことになる可能性が結構あるけどいいの?」
その騎士が言ってる事は意味不明だがひとつ言うなれば
「全員ちょっとストップ!!!!!」
「「!?」」
いきなり叫んだものだからみんな少し驚いたらしい
ティリアに掴まれていた襟首を自由にし、追いついてきた変な格好の騎士と少女に向けて言い放った。
「お前ら何だかんだで俺今回一番の被害者なのにほとんどなんも言えてないんだけど!」
被害者と言うのはもちろん言いたい事が言えなかったり遮られたことも当然含まれているが、向こうはそんな事言われても分からない。
「それにまずお前、俺をどこに連れていくつもりだったんだよ。」
それは至極真っ当な質問だった
「第一、どこの世界に魔法実技の練習試験でなかなかの異常事態を起こした男の面倒を見たいとか言う初対面の女がいる?」
もっともな正論にどう対応していいか分からなくなった少女は次第にオロオロし始めた。しかし、もちろん口を止めることは無い
「もっと言うと君、結構上級階級の貴族なのに騎士に怒られ連れて帰らそうとされるってどういう事だよ。」
「そ、それは……うぅ」
ティリアは助けを求めるように周りえと視線を向けるがもう一足遅かった野次馬にしてみれば話の全貌が見えず、しかし明らかにティリアのやったことは不自然なので目を逸らしたりしている
その光景に耐えかねたのか、
「あの〜、もうよろしいんじゃないでしょうか……?」
「なんで?」
俺はまだ言い足りないぞ、と言ったがその瞬間背後にドロップキックが直撃した
「イッてぇな、オイ誰だよ!…って言うか今日何回目だよバカ!」
背後より全力のドロップキックをかましたライディルに軽いデジャヴを感じなが様子を伺うと
「テメーには言われたかねえよ、馬鹿なのか!お前絶対に馬鹿だ!!」
それはもう御立腹でした
「ふざけんな、俺にはこのバカ女を問い詰める権利がある!」
「ねえよ!第一、お前は世間を知らなさすぎなんだよ!」
「?」
何を言ってるんだろう?そう思い始めたところでTOUYASシックス・センスが本日何度目かの危険信号を発した。
……これまでに無いぐらいの特大な信号を……
ゾゾゾと背筋に嫌な汗が浮き出るそして燈夜はこの少女と出会ってからの周りの反応を思い出した。
違和感があった、何故最初この少女の誘いを断った時に皆は唖然としていたのか?
今までは(わけのわからない誘いであっても)この生きてて1度お目にかかれるかレベルの美少女の誘いを断ったからかと思っていたがはたして、それだけであんな顔をするのか。
他にもある、起こった事が突然過ぎて間に入れなかったのは納得出来る。
だがしかし、あの実際は違うがクラス委員長気質なフロリスでさえ、やはり唖然としていたのは何故か?まるで、接し方についてどうしたらいいか分からないように。
さらに、あの騎士はなんと言ってた?
国家反逆罪だなんだ言ってなかったか?
その時燈夜は前にテレビに魔術回路を組み込むことにより、用途を大幅に広げることに成功したと言うアレスガルド産の『テ=レビ』なるもので似たような顔の持ち主を見たことを思い出した。
確かそれは……「う、うええええぇぇぇぇん!!」
それまでビクビクしていた野次馬+最悪の結論に至った燈夜は(バカ?で出情緒不安定?)な美少女のほうを向いた
そこに居たのは、勿論この騒乱の全ての元凶である少女だ。
しかも何故か泣いている。