第95話:高等部三年A組(上)
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「おはようございます! シャリル生徒会長!」
「今日もなんて麗しい!」
「「「「「シャリル様〜!」」」」」
「「「「「シャリルさん〜!」」」」」
そんな女子生徒達の感激な数々の挨拶や声が、エスパダ第七異能学園内の正門から続く道ーー高等部の第一、第二、第三校舎へと続く中央通りにて響き渡った。
因み左側に続く道の先には初等部の校舎があり、右側に続く道の先には中等部の校舎がある。
そして朝の登校時間により、寮から生徒たちが学園校舎へと登校する中で、一際目立ち注目の的とされている女子生徒がいた。
その女子生徒へ、登校する生徒達から憧れ、尊敬、恍惚といった視線を向けている。
「ええ、皆さんもおはようございます」
『キャァァァァァァ〜〜〜〜ッ!』
『おぉおおおおおお〜〜〜〜ッ!』
注目のされる女子生徒によるただの挨拶の返事をしただけで、周囲の生徒たちが騒ぎ立てる。もはやパレードでも開かれているような有様だ。
膨よか身体に、太陽の日差しにより煌めかせるロングヘアの金髪、相手を心を癒されるような碧眼、優しげでどこかおっとりとしておりその顔を見れば相手は元気が湧き上がるような感じになる端麗な顔立ちをした美女。
そんな女子生徒の正体はーーここ、エスパダ第七異能学園高等部の生徒会長"シャリル=デネーナ"と言う名前である。
年齢は18歳といったところだろうか、三年A組のクラスに配属している。
「ふぅ……」
天気は快晴の中、夏らしい暑風が吹き、シャリルの長い金髪が靡く。
彼女は靡かせる金髪を学生鞄を持つ右手とは逆に、左手で優雅に押さえた。
その仕草はどこか気品が感じられるものである。
そうして周囲の生徒達から注目される中、高等部玄関の下駄箱場へ進み行くシャリルへ後ろから近づいてきた四人の男女が声をかけた。
「おーい! シャリルさーん!」
「おはようシャリルさん」
「おっはー! シャリルさん!」
「おはようございます、シャリルさん」
後ろからやってきた四人の男女が、シャリルへ親しげに朝の挨拶をおくる。その四人はシャリルと同じく高等部三年の生徒だった。
最初に彼女へ元気よく挨拶したのは、とても大柄な体格をした黒髪黒目の日本人である男子生徒"近藤 雄一"だ。
次に挨拶をしたのが知的な印象を受ける顔立ちをした茶髪茶目のアメリカ人である男子生徒"エリアス・オルコット"。
三番目に挨拶をしたのが、活発そうな印象の黒髪ショートである日本人の女子生徒"斎藤 寧々"。
そして最後に朝の挨拶をかけたのが、小動物のような可愛らしさのある黒髪ボブカットの中国人"李 美友"である。
四人はシャリルと同じく三年A組のクラスメイトである。
「あ! おはようございます。 雄一くん、エリアスくん、寧々さん、美友さん」
そんな挨拶をおくってくれた彼らへ、振り返ったシャリルも親しげな笑みを向けて挨拶する。
「今日も注目されてるね、シャリルさん」
寧々が周囲の生徒達の反応を見渡して、言った。
「こうも毎朝の登校で注目されると疲れないですか?」
続けて美友が心配そうにシャリルへ訊くと、
「そうですね。すこし疲れはしますけど、かといってこうして皆さんから朝の挨拶をしてくださってくれることは嬉しいですね」
と、微笑の表情で四人へ答えたシャリル。
そんないつも通りの優しさ溢れる彼女に、四人はそれぞれ呆れた仕草をした。
「今日も今日とていつも通りのシャリルさんだね」
と、エリアスが肩を竦めた。
「ま! だからこそ、俺ら高等部の生徒達から“天使の会長”と呼ばれてることはあるだし」
「や、やめてください……は、恥ずかしいです!」
雄一の悪戯っ子のようにシャリルを揶揄う。
すると彼女は恥ずかしそうに止めるよう言うが、その慌てぶりは美人ながら可愛すぎる仕草になってしまい、周囲の男女生徒と達は見惚れさせていることに、彼女は気付いていない。
「……す、すまん」
そしてシャリルを可愛すぎる仕草にさせてしまった雄一も、彼女の仕草に頬を染めつつぶっきらぼうに彼女へ謝る。
「「ッジ〜〜」」
そんな雄一の様子に、寧々と美友はジト目を向けた。そして、彼の両足を踏む。
「っいって! 何すんだよ!」
「別に」
「そうです。別に、です!」
雄一の怒鳴りに、寧々はすっけなく、美友はプンプン丸顔のように頬を膨らませて言葉を返す。
そのあとは一対二による言い争いが勃発。
それをエリアスが必死に宥めようと間に入った。
しかし四人はどこか晴れ晴れしい顔だ。
いつもの事で。いつもの日常で。いつもの感じ。
そんな何もかもいつも通りな時が流れてるのを四人は体感してるだろう。無論それはシャルも同じで、柔かな顔で四人の様子を見つめている。しかしーー、
「ん? なんか前の方が騒がしいぞ?」
今日はそんないつも通りではなかった。
雄一の言葉を聞き、シャリル達は騒がしくなっている高等部三年の下駄箱玄関前の通り道まで走って行く。
そして通り道で人集りになっている大勢の生徒達が、ある方向へと珍しいものでも見るような、または見惚れてるような顔を向けていた。五人もその注目を浴びている方へ視線を向けると、
「っうわ! スッゲー美女だせ!シャリルさんに匹敵する美貌だ」
「それだけじゃないよ! 見たことない美青年もいるよ!」
雄一、寧々が興奮気味に騒ぎ立てた。
そう、下駄箱玄関の前の通り道を歩く、見たことない豊満な褐色美女と逞しい体つきをした金髪美青年がいたからだ。
どうりで男子生徒達は褐色美女へ、女子生徒達は金髪美青年へ興味深く視線を向けているわけである。
見たところ、この異能学園の制服を着ているが、しかし二人の生徒は知らない顔だった。
「あ! もしかしてあれが事前に聞いていた二人の留学生じゃない?」
「ああ、間違いないぜ」
寧々のうきうきとした答えに、雄一は同意する。
今日より少し前に担当教師から二人の留学生くるとホームルームで言われていたので、間違いないだろう。
そしてそんな留学生だろう二人と一緒に仲良く会話しながら通う、見たことのある一人の男子生徒がいた。
「お、おい! あいつ流介じゃねーか!」
「あ、本当ですね」
雄一の気づいた叫びに、美友が静かに頷く。
「あの野郎、なんであんな親しげに話しかけるんだよ」
「おそらくあの留学生の二人との知り合いなのでしょう」
「あーなるほどね!」
「うむ、あれが噂の留学生二人と知り合いだったとは……」
そんな感じで、四人も周囲と同様に騒ぎ立て、二人の留学生と流介の関係に興味深く眺めた。 そんな中、ここに着いた時から黙っているシャリルはーー、
(ーーなんで留学生とあんな親しげなんですか!? 単なる知り合い関係ってだけなのに……! というか流介さまがあんな綺麗な人と仲良くしてたなんて……!)
流介と留学生の褐色美女を見比べる様に血眼になって視線を交互に忙しく見やっている。
彼女に心に湧き上がるは嫉妬の炎。
それにより表情が強調した嫉み顔だ。
そして美人ゆえにそれが更に恐怖を引き立たせている始末。
『ッヒィィィ!』
そんな嫉妬による激おこプンプンの彼女に、雄一達四人含め周囲の生徒達が恐怖でちびるのだった。




