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最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第2章:呪縛の姉妹
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第84話:動き出す島

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



『水天』ウォーナの人間の姿は、本来の天獣の姿の上半身である人間部分と変わらず、美しいサファイア色の長髪と眼をした艶肌と豊満なスタイルの美女だ。それはまさかに、老若男女が心を奪われるほど、女神の如く神々しい美貌と色気だ。人間の姿になっても、この段違いな容姿端麗すぎるウォーナ。


 そんな姿を目する翔真は、当然の如く見惚れそうになるが……自分の召喚獣や二年前まで見慣れているほど見てきた事、また優奈という絶世の美女とここ毎日接しているのもあり、身につけた高い美女美少女耐性が備わってる故、見惚れることはなかった。それがなくても、今の状況が状況であり、見惚れる場合ではないのである。


(《アクアレス・ソード》で『審判ノ破壊ジャッチメント・デストラクション』を繰り出して正解だったな)


 そんなウォーナに身体を支えてもらいつつ、翔真はそう思うのだった。先の清水の硬水銀剣を、何も変哲も無いただの水を突然戻った起因は、ウォーナの天獣装《水神剣アクアレス・ソード》の特殊能力……性能にあった。


 ーー『天水掌握』。


 それは、あらゆる水を自由自在に変換、操作などできる。それがたとえ誰か強力な水系統の術でも、我が物とできるのだ。そしてこの特殊能力を破壊神刃に含ませた故、それで硬水銀剣を水へ変換させたのである。

 無論、天獣装の特殊能力は膨大な魔力を消費するために、今の翔真の異能力(魔力・霊力)量だと、使用回数は三回までだ。凄まじい魔力質量をもつ翔真でもこれが限界である。


「……っ」


「どうした? ウォーナ」


 と倒れそうになった自分を体を支えてくれているウォーナの様子が変に感じた翔真はそう訊くが、彼女からの返事はなかった。

 しかしウォーナの視線が前方、魔霊剣技の三絶技の一つの破壊を重点とした絶技『審判ノ破壊ジャッチメント・デストラクション』によって、東の地帯全体から極大なクレーターになった方へ注視している。それにつられて翔真もそこへ向けると……驚くべき、信じられざる光景が目に入った。


「なん、だと……どう、なってる……嘘だろ……」


 茫然と目の前の光景の出来事に、翔真は現実逃避してしまう。それはーー極大なクレーターが、まるで生えていくように東の地帯が、島の東の全域が……急激に、驚異的の速さで、元通りになっていく光景だった。


「この現象はいったい……」


 誰による異能的な仕業じゃないのは一目見ればわかること。これが人為的になせるのはありえないのである。


「…………」


 そのありえない光景を眺めつつ、その原因が何なのか思考を巡らし続ける翔真をよそに、ザーナ島の東の地帯は、元通りの緑色の森林地帯へと完全に戻っていった。そこで、翔真は感じ取った。元通りになった地帯に、異常な質などの魔力の残滓が……そこら中に感じ取った。


「……っ」


 その魔力に残滓に当てられた翔真の身体から、尋常じゃない吐気が襲いかかる。しかしそれを唇から血が流れでるまでに噛み締め、抑えた耐えた。

 同時に翔真の脳裏に、何か途轍もない存在が間近にいると。 それは、この島に来てからずっと、間近にいると。そして同時に直ちにこの島から脱出しないとダメだという危機音も走った。故に翔真は今すぐに脱出するため、島にいる仲間達と合流へと動き出そうとした直前、


「無理はしちゃダメだわマスター。多大な疲労は勿論だけど、『審判ノ破壊ジャッチメント・デストラクション』を使った振動で身体が一時的に麻痺してもいるみたいだからね。 充分に動けるようになるまで、わたくしの力でマスターを運ぶわ。そして仲間達と合流して、すぐ島から脱出しないとダメよ。絶対に。必ず、ね」


 翔真の考えを察しそう言うウォーナは、どこか落ち着かない様子だった。 あの水を司る天獣『水天』のウォーナが、神と呼ばれてもいる存在が、こうも焦っている様子はかつての第三次海域災害の時以来だ。


(それほどに、この島を危険と感じとったのか?)


 だとしたら、尚更早くこの島から脱出しないといけない。


「頼む、ウォーナ。お前の力で、島にいる仲間達を上陸した海岸にある軍船に送り飛ばしてくれ。あと、おそらくエスパダ異能騎士団の遠征部隊もこの島にいると思うから、その部隊の軍船を僕達の軍船から数百メートル離れた海岸に海流を操作してそこへおいて、そして遠征部隊をその軍船に同じく送り飛ばすことお願いできるか?」


 するとウォーナは落ち着きのないものの妖艶な笑みで、


「お安い御用だわ、マスター。わたくしを誰だと思って?」


 直後、ウォーナの身体から凄まじい眩い青き輝きが放たれた。

 そこから感じ取れる力も他と比較にもならない一線を超えた強大な力。

 それは翔真から伝達・供給される魔力などではなく、正真正銘ウォーナ自身の力ーー『神力』だった。


「わたくしは愛するマスターの忠実なる召喚獣よ」


 いつも通りに戻り、心酔した表情で言い捨てた。 そして翔真から言い渡された命を、


「ーー『私の水界』ーー」


 たった一言の呪文によって……たった三分ほどによって……達成されたのだった。



 ◆◆◆



 どこかふかふかな心地よい感触が全身をめぐる。このままこうしていたい気持ちだと思いになった直後ーー少女、恵里奈はハッと我に帰りパッと起き上がった。


「……ここは?」


 目を覚まし起き上がった恵里奈は、周囲を見渡した。


「……部屋」


 見渡したことにより、どうやら恵里奈はどこかの寝室だった。 しかし普通の寝室とは違い、どこか軍の寮部屋に似ている。 恵里奈が眠っていたベットは、部屋の左右それぞれ二段ベッド……その左の二段ベットの下のベッドだった。


「…………」


 自分の身体を見ると、いつのまにか病衣を着ていた。誰かに着替えされられたのだろう。 腕や足などに包帯が巻かれている。 おそらくは自然回復能力が届かなかった部分の手当てされたのだろう。


「璃子……!」


 と、そこで右にある二段ベッド……その下の方のベッドで、眠りにつく璃子がいた。 彼女の身体にも自分と同じくある程度包帯が巻かれている。 ベッドから起き上がり近くに寄ると、気持ちよく眠っているのが窺える。


「……それにしても、ここはどこ?」


 そう口からこぼした直後、部屋の扉が開いた。

 開いた先には程度に水が入った水入れ器具と、二、三枚のタオルなどがあるトレイを持った優奈がいた。

 一方で優奈は目覚めた恵里奈を見て「あ!」と急いで彼女の元へ寄る。


「早い目覚めだったわね。ここに運ばれてから五分も経ってないわ」


「ここはいったい……」


「ここは私達が乗ってきた軍船の寝室よ。もうすぐエスパダへ出航するわ」


「……それじゃあ、つまり」


「そう、島での戦いは終わったのよ。もう貴女達姉妹を苦しめる奴なんていないわ。これでやっと本当の意味で解放されたの。 よかったわね」


 トレイを近くにテーブルに置き、恵里奈の背中を優しくさすりながら……優奈は微笑み表情で優しく安心させる声で言った。


「……ほ、本当?」


「ええ、本当よ」


 その言葉をたしかに聞いた恵里奈はーー途端に目元から涙が溢れ出した。


「……っゔ、っうぅぅぅぅっぅっっ!」


 これまでの苦しみ、悲しみ、辛いさ、痛みをおってきた闇い日々。 その日々から本当に……本当の本当に解放された事がわかったことで……恵里奈は心奥底にまで押し殺していた様々な感情が、一気に爆発した。

 おそらく恵里奈も精神的に限界がきていたに違いない。 しかし持ち前の感情の乏しさや、精神的に強い故に弱い自分をさらけ出したくなかったのだろう。


「もう、大丈夫よ」


 そんな喜びに涙を流す恵里奈へと優奈は静かに、慈愛ぶかく、そっと抱きしめ背中をさすり続けたのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ーー軍船の甲板前にて。


「おい、翔真。そろそろ説明しろ。なんでオレ達はともかく、エスパダ異能騎士団の遠征部隊までも、そいつらが乗ってきたもう遠征用軍船に戻した? それにたった三分でオレ達をここに送ったあの凄まじい水はいったいなんだ?」


 身体の手当てを終えた小太郎が、ゆっくりと歩みつつ、ザーナ島へ睨む翔真に問いかける。 現在、この軍船には待機していた異能騎士数名と、翔真、優奈、小太郎に坂本姉妹……そして軍船の牢室に幽閉している『鴉男カラス・バロン』のカタリーナ・メアリーがいる。

 そして小太郎は突然と身体が宙に浮き、瞬く間にこの軍船に飛ばされた事と、それを自分含め島にいる味方全員にしたのか?それを問うたのだ。 すると同じく手当てを終えた状態の翔真が、まるで切迫詰まったような……緊張感ある声でこう返した。


「この島が……危険すぎるからだ。何に対して危険なのか、それは具体的には根拠はわからないけど。とにかくあのままい続けたら危険なんだ」


「おいおい、理屈になってねぇぞ。 もっとちゃんとしたーー」


「小太郎は不思議に思わなったのか? このザーナ島が変だって。滞在中に何か、この島で不思議な出来事とか起こっていたりしてないか?」


「そんなことーー」


 言いかけて、ふと、小太郎の脳裏にある信じられざるを得ない出来事と遭遇した事が過ぎった。それは、カタリーナとの戦闘でできた痕跡が、あたかもなかったように元通りになっていたこと。 戦闘の痕跡かひどく残っていた森林が一気に復元したような光景に。


「それにこの話を優奈にも話した際、どうやら彼女は不思議な声を耳にしたそうだ。まるで悍ましく恐怖を感じてしまうような、そんな声だって。それがこの島から聞こえたような気がしたと、優奈は言っていたよ」


「…………」


「だから僕はすぐさま『水天』に神術を使えさせ、僕も含めみんなを軍船に送り飛ばした。無論、エスパダ異能騎士団の遠征部隊もだ。島での調査は中止させるつまりだ。このまま島に残れば、取り返しのつかない事になると……僕じゃなく『水天』、ウォーナが口したことだ」


「水天って言うと、あの水を司る天獣か。伝説にして、人知を超えた力を持つ存在。それがお前の召喚獣だったな。 じゃああの強力な力の水でオレや優奈ちゃん、そして遠征部隊を乗ってきたそれぞれの軍船に送り飛ばしたわけか。 はぁ、すくすくお前があの伝説の召喚師なんだと思い知らせるな。っくそ!」


 どうやら小太郎は翔真が『白銀の召喚師』だと一応は理解はしたが……納得は未だにしてないようだ。


『この坊や。 マスターを侮辱してるような気がするわね。懲らしめてやろうかしら?』


 と、翔真の頭の中にウォーナの少し起こったような声が響いた。

 話に出てきたウォーナは現在、翔真の中のいる。

 軍船に翔真達を送り飛ばした後、誰にも姿を見られないようにするために人化から霊化して翔真の身体に入ったのだ。

 彼女の姿を色々と理由はあるが、一番は異能騎士達にバレないようにするためである。自分の正体をバラさないように。彼らや遠征部隊へは一応納得ができるまでの誤魔化しは後々に翔真はするつまりだ。

 無論、これらの事は当事者(翔真)しか知らない。


(シャレにならないからやめてくれ。今はこの島から離れるのことが先決だ)


『はぁ、わかったわよ』


 とそこで、頭の中でウォーナとの一言二言のトークが終わった直後、甲板前へと階段を上がってきた優奈が近づいてきた。


「恵里奈と璃子の様子はどうだった?」


「無事よ。璃子は今もぐっすり眠ったままで、恵里奈の方は目覚めたけど、戦いが終わったとわかった途端に、涙を流し泣き出した。今まで耐えてきた苦しみの感情がここで一気吐き出したのようだわ。そのあと泣き疲れて再び眠りについたわ」


「無理もねぇな。オレ達とは違って、本来の彼女達姉妹は平和な世界に暮らしていた普通の女子だからな。酷く辛い気持ちになって泣くのは当然のことだぜ」


 それから数分後ーー軍船のコックピットにいる異能騎士から遠征部隊との連絡の元、ザーナ島からかなり離れた海上の場に合流すると決まった。


 そうして翔真達が乗る軍船が出航して……その数分後になって、それは起きた。



 ーードドドトドトトドドドォォォォォォォォオオ

 オ!!



「「「ーーっ!!」」」


 突如として騒めく大きな地響き。

 それにより発生した凄まじい波。

 どよめき騒めく荒れうごく海。

 その上の軍船は大きく揺れ、波の水が船上にふりかかり、船上は水浸し。

 身体が濡れ濡れになった三人は姿勢を低くし、近くの手すりに掴まり……そして発生源であるザーナ島へ注視する。


 その島がゆっくり、ゆっくりと動き出していた。


 それにより発生する大小様々な荒れる数多の波が、軍船を襲いかかり……そして動く島から、



『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!』



 天を突き抜け、空気が破れる程の大咆哮が響く。そして翔真は気づいた。


(間違えない! あれは島なんかじゃない・・・・・・・・れっきとした巨大生物・・・・・・・・・・だ! 僕達は、その巨大生物を島だと思っていたんだ!)


お読みくださりありがとうございます!

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