第7話:優奈は自分の正体を明かすが……。
「…………」
優奈の口から言い放たれた言葉。
優奈の聞きたい事とは、『白銀の召喚師』の居場所。
翔真はそこから、魔導士である優奈は『白銀の召喚師』の探索任務に、日本からエスパダへ来たと言う事になると、推測する。
優奈がどの国の魔導機関に所属しているのか分からない翔真だが、少なくてもこの推測が正しいのなら優奈が所属してる魔導機関はエスパダに『白銀の召喚師』がいると言う情報を持っている事になると察知する。
(いずれ来るとは思ってはいたが……こんなにも早いなんてな)
翔真は分かっていた。
『白銀の召喚師』を探す為に来る魔導機関の者達がエスパダに来る事を。
何故なら、英雄『白銀の召喚師』の探索がまだ行っていないのはエスパダだけなのだ。
だが一つだけ翔真は腑に落ちない点が一つあった。
それは、いずれ『白銀の召喚師』がエスパダにいる事を知り来る分かっていたが、それがなぜ自分なのか? だ。
こんな何処にでもいそうな異能者が、どうして諸国総出でも見つけ出す事が出来なかった英雄の居場所を聞いて来るのだろうか? と。
それが翔真は分からなかった。
兎も角、翔真は圧迫感を放ち鋭い目付きで見続けてる優奈へこう言った。
「あの、優奈さん。なぜ僕に英雄である『白銀の召喚師』の居場所を聞く? 僕はこのエスパダに住む、何処にでもいる平凡な異能者だよ?」
「あら、そうかしら? 喫茶店の騒動を起こした原因である異能者の男との戦いで、私の動きを全部見切ってたんじゃない。私はこれでも異能者の中で実力は高い方だって自負してるわ。並の戦闘に特化した異能者でも、私の速度を目で終える事はないわよ」
(気付かれてたか。さすが軍に所属する異能者、魔導士だな)
先の喫茶店騒動時に優奈の戦いの動き、特に男異能者の背後へ一瞬にして周り接近する動きを、翔真はそう来ると見切っていた。
まぁ流石に手刀で男異能者の意識を取る事は予想外で、黒い剣の柄で意識を取ると翔真ほ思っていた。
「でも、例え優奈さんの戦いの動きを見切ってたとしても、それが『白銀の召喚師』の居場所を知ってるとは繋がらない。 それにどうして『白銀の召喚師』の居場所を探してるの? そして英雄の居場所を教えなさいって言った時と同時に凄まじい威圧だったし、戦闘も長けてた。何より、喫茶店騒動時に優奈さんは異能レーダーを持ってましたよね? あれって軍の者しか持つ事が出来ないやつだ。優奈さんって何者なのだ?」
と、次々と質問を投げ打つ翔真。もちろん翔真は優奈が魔導士である事は気付いている。だが何処の魔導士かは分からないので、素性を探っているのだ。
「っぅぐ!」
次々と質問を投げつける翔真に、優奈は動揺してしまう。まさかこうなる事になるとは、優奈も想定外であった。 優奈は、当初翔真を見た時の印象は、普通の一般人だと思っていた。
だが手持ちにあった異能レーダーにより翔真が異能者だと分かり、驚いた。 それから直ぐにスマホから電話が来て、それが自身の父親からだと分かり電話に出た。 その父親から、
『優奈。今お前の近くいる少年から『白銀の召喚師』の居場所を聞き出すんだ』
と、下して来た。 なぜ近くに少年がいる事を知ってるのか、気になり優奈は父親へ尋ねるとこう言った。
『今回お前が担当している任務直前に、私の固有異能をお前の身体に掛けといたからだ』
この説明を聞いて優奈は納得した。その後に何か父親は呟いていたのを耳に入ったが、優奈は気に留めなかった。
兎も角父親の固有異能なら、遠い、それも別の国からでも無距離で掛けた者の位置情報やその場に付近にいる者等が把握できる。
だがどうして近くいた少年、翔真から『白銀の召喚師』の居場所を聞き出すのか、優奈には分からなかった。
各国が総出で探しても見つける事が出来なかった人物を、たった一人の異能者が知るわけがないと優奈は疑問を抱いていたのだ。
だが、男異能者との戦い時に優奈は勘付いたのだ。
自分の戦いの動きが、翔真に見切られている事を。
これでも、様々な戦闘訓練を受け続け且つ死闘による修羅場を突破して来たのだ。
何処にでもいる異能者により見切られるなんてありえない。
故に優奈は翔真が只者ではないと分かった。
そして、この少年はもしかしたら知っているのでは?と希望にも近い意念を抱いたのだ。
だが、聞いて見たところ、どうやら知らないらしく、その希望にも近い意念は砕かれた。
これにより、同時に失態も犯してしまった。
それは、翔真から何者なのか?と尋ねられたのだ。
今回の任務は、極秘によるものだ。
ゆえに正体を明かすわけにはいかないであった。
(どうすればいいのよぉ!)
どうすれば自身の正体を明かさずこの場を乗り切るのか、優奈は既に本題である『白銀の召喚師』の居場所を聞き出す事から別の事へと移った。優奈は悩みに悶える。
だがそれは無意味である。何故なら、
(自分が魔導機関に所属する魔導士だって事を隠してる様だが……既に僕は分かってるけどな。それに隠してるなら喫茶店で異能レーダーを出したのが失態だったな)
優奈の心中悩んでいる事を察した所翔真は、優奈の失態した行いを内心呟く。と言っても、もしその失態がなければ翔真は、優奈が戦闘に特化した強い異能者、と言う認識だったのである。なので異能レーダーさえ見せなければ翔真は気付く事はなかったのだ。
「もうこうなったら! 付いて来なさい!」
「っえ? ちょ、ちょっと待て、うお!」
どうしたのか、優奈はいきなり立ち上がり、翔真の腕を掴み、すき家のレジへ支払いを直ぐに済ました後、翔真を引っ張りながら優奈はすき家を出る。
その後、翔真を引っ張りながら優奈は誰もいない狭い路地裏へと暫くして行き着く。
そして優奈は翔真の腕から引っ張っていた手を解き、腕を組みながら翔真へ言った。
「いい、翔真? これから私が話す事は他言無用よ! 分かったわね?」
「……分かった」
優奈の迫力ある発言に、翔真は少したじろぐが、承知する。だがその直後、
「あ! ちょっと待て、優奈さん!」
「なに?」
「その他言無用にする話の前に、優奈さんの手握っていいか?」
「っな、なな! なに言ってるのよ貴方は!?」
当然の手を握りたい発言をした翔真に、優奈は彼から距離を取り真っ赤になり恥ずかしながらそう叫ぶ。
初めて見る優奈の恥心の反応に、翔真は珍しいものを見た時の驚きになる。
まだ出会って数時間しか経ってないが、これまで余裕な感じの妖艶な美女と言う認識だったのだ。
「別に手じゃなくてもいいよ」
「っはあ!?」
「ん〜……よし。なら優奈さんが僕の肩に手を置いてよ。こっちの方がいいな」
「っえ! あ、や、まぁ、それなら別に構わないわよ」
そう言い、優奈は近付き翔真の肩へ手を置いた。すると翔真は、やはり、と思った通りと言った様子で何かを分かった様だ。
それは、優奈に掛けられている固有異能である。
翔真はこの狭い路地裏行き着くまで優奈に腕を引っ張られた時、優奈が何らかの異能に掛けられていると勘付いたである。
故に、優奈の手が自分の肩へ置いているこの行いは、その優奈へ掛けられている固有異能が何かを突き止める為であった。
(……なるほど。これはおの人の固有異能だったのか。ならこの固有異能はアレか。そしてこれで優奈さんがどの国の魔導機関に所属してるのかも分かった。でも……この固有異能は絶たさせてもらうよ)
この優奈へ掛けられている固有異能の正体とその掛けた人物が分かった翔真は目を瞑り、
(ーー《絶》)
直後、優奈に掛けられいた固有異能は術者から絶たれた。
掛けられた本人である優奈はそれに気付かなく、目を瞑る翔真を不思議そうに見ていた。
「はい、もういいよ」
「そう、分かったわ」
「それで、その他言無用の話とは?」
翔真は肩から手を離した優奈へと目線を向け聞くと、優奈は言った。
「私は、日本魔導機関に所属する魔導士よ」
「あ〜、それか。 実を言うと、優奈さんが魔導士ってことを僕分かってたんだよ」
「……え?」
翔真の予想外の反応と言葉に、優奈は呆気になった。
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