第6話:優奈の聞きたい事
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「さ、翔真。着いたわよ」
「ここって、すき家ですね」
自己紹介も終わり、翔真と優奈はあれから数分後経過して前方を進み、商店街に立つ店の一つである牛丼チェーン店のすき家へと2人は到着した。
「すき家の中で話をするんですか?」
「そうよ。本当なら別の所で話をするつもりだったけど、私お腹空いちゃってね? で、今牛丼が食べたいからすき家に来たのよ」
「へ、へぇ〜、そうなんですか」
てっきり誰にも話を聞かれてはいけない、自身の事や異能関連の事だと思っていた翔真だったが、この状況を見る限り大した話をする事の内容じゃないか、と翔真は密かにホッと胸をなでおろした。
それなら2人はすき家へと入店する。
すき家の店内では、それほど多くはないが、かと言って少ないとも感じない程にはいる客達がカウンター席やテーブル席に座り注文した料理を食べいる。 殆どが牛丼だが、中にはカレーライスを食べている者等もいる。
そして2人が入店した直後、店内にいる客達や店員達といったすき家にいる全員が翔真達へ、いや、正確には優奈の方へ口を開けてうっとりとした。
優奈の美貌へ店内のいる全員が目を惹かれる事は翔真は想定しているので、「まぁそうなる」と小さく呟いた。その中には、男性だけではなく女性も惚けている。
その女性の中には、「やだぁ、目覚めちゃうぅ」とこちらでもヤバイ声が聞こえた事に翔真は「またか」と聞こえなかった事にする以上に、呆れた。
そんな店内のいる人達の視線を気にする事なく、悠然と優奈な奥に位置するテーブル席へと向かい、その後に翔真も向かう。その際にも、多くの視線が優奈へ向けられるが、
(《偽装変換》)
と、優奈は心の中で異能の発動を呟く。すると、優奈へ視線を向けていた者達の全員が、視線を自然と優奈へ向けなくなった。
彼等はなぜ彼女をずっと見ていたんだろうととても不思議そうな様子で、首を傾げている者もいる。その一部始終を見ていた翔真は、
(異能の一つ、偽装術で、発動した術は《偽装変換》か。掛けた相手から自身の本当の姿とは別の様々な姿へと変える事が出来る。それに加え、発動者の本当の姿を見ても、《偽装変換》を掛ければその本当の姿を見た記憶を消す事が出来る代物。変装に最適な技の一つでもある。それを容易く駆使出来るとは凄いな)
と、優奈の異能技術を褒め称えた。
それから数秒を経過した後、奥側にある一つのテーブル席へと到着し、椅子席へは翔真が座り、その反対側に優奈が座った。その直後、優奈はテーブルにあるメニューに手をつけ、開く。
そこから優奈は「何の牛丼食べようかな〜」と、緩々な感じで言うと、
「ねぇ、翔真はなにを注文するの? チキン牛丼? それとも普通の牛丼?」
「あ〜、では僕は普通で並の牛丼でお願いします。優奈さんは?」
「そうね〜どの牛丼にしよっか迷うわね。ん〜、あ! チーズ牛丼の大盛りにするわ。沢山食べたいしね! あ! 後豚汁もいいわね。これ二つ注文するわ。これならお腹一杯になるわね」
(そ、そんなに食べるの!?)
と、翔真は優奈の発言を聞きそう思った。
翔真のは女性は少食だと認識している為、同じテーブル席で対面の席に座る優奈の注文の数を聞き、表情には出さないが内心はかなり驚いている。
そして2人は注文の品を決めた後、店員を呼び、決めた品を注文した。
それから暫くして、優奈はチーズ牛丼と豚汁二つ、翔真は並の牛丼、が2人の店員が持ってきてテーブルに置いた。その後2人の店員は配置へと戻る。
「さ、食べるわよ」
「はい」
優奈の言葉に翔真は返事し、2人は食べ始める。
その際に翔真は、優奈が食べている所を見て呆気にとられた。
何故なら、優奈はチーズ牛丼をゆっくり食べているのだが、一口に食べる量が物凄いのだ。
これなら直ぐにチーズ牛丼は完食するだろうと、翔真は思った。
そして翔真が思った通り、五分で優奈はチーズ牛丼を完食してしまった。
それも、大盛りのをだ。
たった五分でこれ程沢山食べる人を、翔真は見た事がない。
「す、凄い食べっぷりですね……」
「それは私の知り合い達によく言われるわね。けど、私の父からは『沢山食べてこそ、力が漲るのだ』と言う教えがあるのよ。それでその教え通りに、私は食事で沢山食べる事を欠かさないわ」
「そ、そんなんですか」
優奈から家の教えによる食事習慣を聞いた翔真は、ぎこちなく返事をする。だが内心では、
(優奈さんからの話なら、幼少の頃から毎日大量の食事をとってる事になる。それならーー)
翔真は、本人に気付かれない様にチラッと、優奈のスタイルを見る。
よく太らずこれ程のスタイルを保てるな、と不思議に思う翔真で出会った。
それから暫くして、翔真と優奈は注文した注文した料理を食べ終わり、本題に入ろうとするが、
「それで、僕に話、いえ、聞きたい事とは?」
「その前に聞くけど、翔真って年齢いくつ?」
「え? まぁ、18歳ですけど」
「なら敬語使わなくても良いわよ、私も18歳だからね」
「え、そうだったですか。それにしてはーー」
と、優奈のナイスバディな身体へと視線を向けると、それに気付いた優奈は悪戯心が出たようで、いたずらっぽく微笑むとわざとらしく身体を抱き隠す。
するとその所為で胸がムギュッ!と自己主張して、翔真は優奈の双丘へ目をやってしまう。すると、
「へぇ〜、翔真って結構いやらしいなのね。私の身体、特に胸をガン見してるし」
「ッハ! ち、違いますよ! ガ、ガン見なんてっ……!! て言うか、優奈さんわざとそうしたんでしょうが!」
「ふふふ、つい悪戯したくなっちゃってね! でも、私の悪戯による色気に引っかかった翔真はどうなのかな?」
「っうぐ!」
翔真は言葉に詰まる。 まぁしょうがない事だ。 それが男の性であるのだから。
図星をさされたかのように翔真がぐっと言葉を詰まらせたのを見ると、優奈は悪戯な微笑みから真面目な顔にチェンジさせて言う。
「ま、遊びはここまでにしましょ。ここからが本題に入るわ」
「……そうですね、非常に釈然としないですが」
少しの間をした後、翔真は渋々であるが賛成した。と、そんな翔真に優奈は途端に不満な顔になる。
「ねぇ翔真? さっきも言ったけど、私には敬語使わなくて良いわよって」
「……分かり、分かったよ」
「そう! それよ! うんうん! それで良いのよ!」
やっと敬語を使う事をやめた翔真に、優奈な大喜びでピースをかます。余程翔真と気楽に話したがっていたのだろう。
「それで僕に聞きたい事って?」
「うん、それはね。単刀直入に言うわ」
と、翔真がそう聞くと、優奈は途端に真剣な表情になり、
「英雄である『白銀の召喚師』の居場所が何処なのか教えなさい」
と、今さっきの和やかな雰囲気が嘘かのように、只らなぬ凄まじい威圧を翔真に向けながら言い放った。
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