第39話:終戦後のあれこれ(中)
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ルーナイ・オズボーンが退散した事で一先ず一息つく翔真と優奈だったが……その直後、周囲に唐突とエメラルドグリーンの光が発光した。 眩い光により二人は目を瞑り、その数秒後に光は止む。 すると前方から少女の大きな声が二人の耳に入った。
「マスター!」
「っおわ!」
その少女の声と共に二人は目を開く。すると翔真に抱き付こうと飛んでくる、素足で中学生ぐらいのエメラルドグリーン色のワンピースを着た少女がいた。 少女は翔真の腰に抱きつき、それに翔真は突然の抱きつきに吃驚して二、三歩退けた。
「っえ? だ、だれよ……!?」
一方で優奈は翔真に抱き付いている少女に目をやり、なぜか分からないが若干不機嫌になりながら尋ねると……答えたのは少女ではなく、彼女の頭をいつの間にか撫でている翔真だった。
「優奈さん、この少女はフウナだよ。 僕の召喚獣の一体……十二天獣の一柱・風天。 その風天が人化した姿がこの少女だ」
「っえ?」
翔真に抱きつき甘えている少女の正体を知り、間抜けな声を洩らして茫然とした。
そう、翔真に抱きついて「マスターマスター!」っと言いながら甘えている少女はかの十二天獣の一柱・『風天』である。
身長は160センチ程で、大き過ぎず小さ過ぎずといったバランスのよい胸、肩口まで整えられたエメラルドグリーンの髪と、思わず引き寄せられるエメラルドグリーンの瞳をした美少女が、《人化》した風天のフウナなのだ。
「天獣って人化が出来るの!?」
「当たり前だろ。知らなかったの? 魔導士学校とかで習わなかったか? 上位の召喚獣は人化ができる奴は殆どだって」
「し、知ってるわよ……けど、天獣が人化できるっていうのは今初めて知ったもの! それに天獣が姿を現したのが二年前の第三次海域災害が初めてよ! 天獣が人化できる情報はなかったわ。 さっきの天獣装とかいうのも!」
「あの時は天獣装よりも、天獣のまま協力してやった方が一番効率が良かったからだ。まぁ最後には天獣装で先に銀次郎を一撃で斬り倒した魔霊剣技でとどめをさしたけども……」
ギャーギャー喚きだして言う優奈に、翔真を返答した。 と、翔真に抱きつき甘えていたフウナが優奈に喋りかけた。
「ねぇ、貴女のこと優奈ちゃんって呼んでもいい? あ、ボクの事はフウナって呼んでね」
「え、ええ。 い、いいわよ……わ、私もフウナちゃんって呼ぶわね……」
天獣の姿で発せられた神々しい威厳なオーラがなく、何処からどう見ても普通の可愛い少女にしか見えない事で、優奈は若干戸惑いながらも承知した。
そして優奈の返事を聞いた後、フウナは「やったー!」と言い嬉しそうな顔になった。 その可愛らしい少女に見ていると、本当にあの強力無比といわれる天獣なの? と疑わしい気持ちになる優奈だった。
「ちょ、フウナ!」
「イェーイ! 久しぶりにマスターの匂いだー!」
今度は翔真に胸囲に顔を押し付けて匂いを嗅ぎ始めるフウナ。 そのバランスよい胸の膨らみが腹にあたり、翔真の頬が緩む。
(まぁ、しばらくーーっ! な、なんだこのゾッとする寒気を感じる視線は!?)
突然の寒気に翔真は反応し、恐る恐るその視線を向けてくる人物へ目を向けると、
「…………」
(ひぃ、っこわ!!)
そこには、笑顔な顔で翔真をみている優奈がいた。 だが彼女の目は笑ってはいなかった。 それに翔真はかつてない優奈からくる恐ろしさに物凄い冷や汗をかいてしまう。 先の風ノ忍衆との戦い以上に命の危機に陥ってしまったよう感じた。
「……へぇ〜、翔真。 貴方、もしかしてロリコン?」
「断じてロリコンではない!」
「じゃあなんで少しデレデレしてるのかな?」
「こ、これは二年ぶりに人化したフウナを見たから、懐かしくて、つい……!」
危機的状況に何とか優奈の誤解を解こうと弁解する翔真だったが、
「懐かしいなら、二年ぶりに今日一緒に寝ようよマスター! 今回は三人、ウォーナとチリネにツクミもいなし、ボクはマスターを独り占めできる! 嬉しい! やったー!」
余計な事を悪気もなく口走ってくるフウナ。 因みフウナの口から出たウォーナは水を司る天獣『水天』、チリネは地を司る天獣『地天』、ツクミは月を司る天獣『月天』である。 十二天獣の中で、風天・水天・地天・月天の四体の性別が女 で、残りの八体の性別が男 である。
「っちょ、フ、フウナ何言ってる!?」
「っ!! それはどういうこと〜? 翔真〜」
余計な事を口にしたフウナの所為により更に優奈の表情は恐ろしいものへ。 すると彼女の背後に世にも恐ろしい鬼仮面のような者が現れた様見えたしまった翔真。 緩やかな優しい声で聞いてくるが、翔真にはその声が背筋がゾッとする程の寒気を感じさせる怖さの声であった。
「まさかあの英雄『白銀の召喚師』様がロリコンだったなんてね〜」
「ち、違う違う違う違う! 誤解してるよ! さっきも言った通り僕はロリコンじゃない!」
「っええ! マスターはボクのこと好きじゃないの!?」
何をどうしたらそんな風に解釈したのか、フウナはそんな事を言いだした。
「いや、なんでそうなんの!?」
「だ、だって、ボクもロリコンの枠に入ってるじゃないぃぅ!」
「自分の事をそう認識してたの!? ああもう! 泣き出そうするなよ。フウナの事は嫌いじゃない! これでいいだろ?」
「っ! よ、良かった〜」
自分を嫌いじゃないんだと分かりフウナは安堵。 そんな安堵したフウナを見た翔真も安堵するのだった。が、一方で、
「……やっぱりロリコンなのね」
腕を組んで冷めた目つきで翔真をみて言う優奈。
「だ、だから違うって言ってるじゃん! 何回言わせるんだよ! 僕はノーマルな女性が好きだ!」
「ふーん。本当に?」
「ほ、本当だとも。近しい年齢……だいだい17〜20ぐらい? の日本人の美人だな」
なぜか付け加えるように、さりげなく自身の女性の好みを口にする翔真。
「ええぇぇ! そんな〜! ボクは15歳だからマスターの好みの女性年齢に入らないよ〜!」
そんな翔真の女性の好みをもう一人聞いていたフウナは慌てふためく。
「嘘を言うな! それは人化したお前の外形からしたら15歳の少女だろ! お前は天獣だから何百年以上は生きてんじゃん! 」
「あわわわわわわ! そ、それを言わないでよマスター!」
自身の年齢に指摘された事にフウナは顔を真っ赤なり慌てる。 その後はなぜか翔真の好みの女性を聞いた優奈は微かに頬が赤らんで俯いてたり、フウナは更に翔真に甘えようと強く押し倒す勢いで抱き着いたり、それに翔真が離れろと言い放ったりと、気を取り直した優奈から更なる誤解を招いたり、それを解こうと必死に弁解する翔真だったりとーー。
緊張感高まるシリアスが崩れ、場は緩んだ雰囲気が続いたのだった。
そして暫く経過してーー。
なんとか優奈への誤解を必死に弁解して解け、フウナとの言い争い? もなんとか終わらせ……落ち着いた雰囲気になった事で、
「取り敢えず、フウナは十二天部に戻ってくれ」
「えええ! まだマスターと一緒にいたいよ!」
「わかったわかった。 後日また呼び出して、今度は遊んでやるから」
「う〜ん、うん。 わかった!」
首を左右に傾げながら悩んだ末、翔真の言葉に元気な笑顔で頷いたフウナ。 悩んでる所や笑顔な頷きの仕草、それが美少女であるなら……耐性のない一般男性が見たら一発でおちるだろう。 そのあとフウナの身体は光の粒子にとなり、そして消え去った。十二天部界に帰ったようだ。 『十二天部』とは十二天獣が住む所で、地球とは別世界の所に位置している。
「もう直ぐここに澤田さんたちがくるよ。そしたらエスパダ第七異能騎士団もここにくるだろうね。 まぁ当然か」
フウナが帰った所で、早速今後の事を話し始める。
「なるほどね。 なら澤田さん達がくるまで待つわわね。 色々な事を話しておかないと」
「そうなんだけど……今のところ、澤田さん達に僕の正体が『白銀の召喚師』だと告げようか悩んでるだよね」
「っあ!」
翔真から言われらるまで気に留めなかったが、彼が『白銀の召喚師』なのだと改めて優奈は実感した。 すると優奈は翔真の顔をジッと凝視する。 この18歳の青年が二年前の世界崩壊寸前に追い込んだ第三次海域災害を止めた英雄なんだと、今でも信じられないと心のどこかでそういう気持ちである。 二年前という事は、当時まだ15〜16歳といったところだろうか。 中学生三年生〜高校一年生の年齢で世界を救ってしまうとは……。
(私と同じ歳なのに……。これでも周囲から天才なんて言われた事は何度もあったけど……上には上がいるものね。 同年代で私より強い人は初めて見たわ。 ……なんだか悔しいわね。それに負けていられない気持ちが感じるわ)
これまで戦闘力で優奈に勝ったものなど同年代にはいなかった。 魔導士学校時代では首席で戦闘訓練でも模擬戦や試合も負けた事はない。 それから魔導士学校を卒業し、日本魔導士機関に所属してからも、同年代の魔導士は優奈だけだった。 日本魔導士機関で優奈は歴代最年少で魔導士になったのだ。
故に優奈は同年代に自分よりも戦闘力が上の者などあったことはなかった。 しかしながら、それを初めて自分よりも上である同年代が現れたと実感して現れた感情がーー闘争心と悔しさの二つ。今、優奈の心には闘争心と悔しさがあった。
「…………」
「? な、なに?」
そして優奈は更に間近で翔真の顔をジッと見る。それに翔真は動揺を隠せない。 翔真の鼓動が、心拍が徐々に上がる。
褐色の美女がほんの1センチの近い距離で顔を近づけて来たら、男なら突然な反応だろう。 翔真の頬は微かに赤らみが出ている。 しかし、なぜこうも顔を近づけているだろうか? とそんな疑問を浮かべる翔真の一方で優奈は、
「〜〜〜〜っ!」
突然、顔を真っ赤にして翔真からすぐさま離れ、両手で顔を隠した。 その素早い動作、それはもう音速の速さである。
「ど、どうしたの優奈さーー」
「さん付けはいいってさっき言ったでしょ! 普通に呼び捨てで呼びなさい!」
「あ、はい」
「そして暫く私の顔を見ないでよね! わかった!?」
「あ、はい」
優奈の気迫なる言い渡しに、翔真は気迫に呑まれ返事をするしかなかった。 因みに先ほど優奈への誤解を解く時に、優奈から自分の名前を呼び捨てに呼ぶ様にと命令し、それに翔真は承知したのである。
それと優奈の顔が真っ赤なのは、翔真の顔が整った顔立ちで見惚れてしまったからだ。 それに気付き、彼女は離れたのだ。
それから3分ほど経ちーー。
翔真はすっかり調子を取り戻した優奈と話し合い、結果、翔真の正体については今のところ特定の者達しか明かさない事に決定した。 無論、この事態についての話もある程度話し終えている。
そして数分後にてーー澤田 辰久、江本 小太郎、フェリック・ダンバート、エミリー・フォリーヌの四人の魔導士が到着した。
お読み下さりありがとうございます!
多分、あと2話で第1章が終わると思います。




