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最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第1章:舞い戻り召喚師
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第18話:今後について

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 日本国軍異能者組織である日本魔導機関。


 その日本魔導機関のトップに君臨する機関長は、四十代前後の威厳ある褐色の大男であり、名前は"(やなぎ) 志郎(しろう)"と言う。

 その男、柳 志郎は魔導士階級のトップであるS級魔導士で、前職は海を戦場とした海軍の大将、将軍に就いていた。 海軍大将から魔導機関長へ転職であった。

 そしてその大物なる男の異能は、魔力を源とした黒魔術であった。 類い稀ない超絶な黒魔術と前々からずっと軍人として鍛錬し続けた軍隊式格闘術……と、この二つを用いて圧倒的な戦闘力を待ち、達人級の戦士達すら手も足も出なかったと言う。

 そうして表の世界でも裏の世界でも、その存在は畏怖している。

 そして最も大きくその存在を畏怖したのは、二十五年前の【東アジア異能戦争】で国軍の十数の師団と一軍を壊滅した事から更に知名度などが大きくなり……後に付けられた異名が『黒魔(くろま)(おに)』であった。


 と、ここまで世間に知られる柳 志郎と言う男の戦歴であった。


 そんな偉人である日本魔導機関長が、個席ソファーに座っている絶世の美女である柳 優奈の父親だと翔真は知り、


(うわぁ〜、マジか〜い! 避けたいランキングトップクラスにいる人達の一人が優奈だったなんてマジかあああああああああ!!)


 と、なんてこったぁ! と心中混乱する翔真。


 そもそも、優奈と日本魔導機関長の関係性に繋がる所もあった。

 勿論、翔真も当初は優奈が魔導士、そして苗字が「柳」と聞いてもしかして? と思った時もあったが……だが、「柳」と言う苗字なんて持つ人は日本中に数多くいるので、これはないと直ぐに頭から切り捨てた。

 それに同時に『白銀の召喚師』探索の極秘任務を手伝わされたり、A級異能犯罪集団『風ノ忍衆』の件だったり、と色々あったので優奈の家族が誰かなんて興味持つ暇すらなかったである。


 よってそれ以降は優奈が日本魔導機関長である柳 志郎だと思わんかったのだ。


「え? 翔真知らなかったの?」


「優奈。 もともと彼の方とお前が父娘関係だったなんて公にしてはない。 知ってるのは俺達三人含め日本魔導機関内の者達だけだ。 それとサラッと外部者である加藤くんにバラしておって……はぁ〜、まぁ隠してる訳でもないしな。 知ってようが知らないようが、どうでもいいんがな」


「まぁ確かにそうですよ」


 と、自身の父が日本魔導機関長だと知った翔真の驚きを見て間抜けな声でそう言う優奈だったが、それを澤田が優奈と日本魔導機関長の関係は日本魔導機関内だけ者達が知るのと、別に隠してるわけでもないのでバレてもどうでもいいと優奈へ愚痴混ざりに言うと、優奈はそれに同意した。そして優奈は言葉を続ける。


「けど、私と日本魔導機関長は親子関係だけど、血は繋がってないのよね」


「っえ! そ、そうなのか優奈さん!?」


「え、ええ。 日本魔導機関長の柳 志郎は私の父は父でも、義父(・・)なの」


 それじゃあ血の繋がった本当の両親は? と言おうとしたが、翔真はそこで口を閉じる。

 もしかしたら、深刻な事情があるかも知れないし、何より無用心で不謹慎である。

 だがそれが顔に出ていたのか、翔真が何を言おうとしているのを察知した優奈は、


「お義父さんに聞いた所、私は日本魔導機関が所有する一施設の付近に捨てられていたって言ってたわね。 私の血の繋がった親は今何処にいるのか、はたまた既に他界してるのか……それは分からないわ。 でも、私はお義父さんを本当の父親だって思ってるわ」


「そ、そう、なんだ……」


 清々しい顔色で答えた優奈に、翔真は遠慮がちに返した。 そんな一方で澤田と江本も優奈の言葉を聞いて心配そうな表情でありながら、心中感心した。そしてーー、


「それで話を本題に戻すがいいか?」


 澤田と尋ねに、三人は頷く。


「風ノ忍衆が優奈を狙っていて、その理由はわからない。 だが奴らの目的を成功させるわけにはいかない。 派遣された俺達は奴らから優奈を守護し、そして奴らを壊滅させる」


「でも澤田さん。 どうやって奴らを壊滅させるつもりなんですか? 奴らの居場所は第七県内なのは確かですけど、どの区にいるかーー」


「そんなの、一区一区隅々まで探し回ればいいじゃない?」


「あんたは黙ってなさい、小太郎」


「そうだ、お前は黙ってろ」


「っな! 二人ともひど!」


 優奈の風ノ忍衆の探索策をどうするか澤田に聞くと、それに口を挟む様に馬鹿な事を抜かす江本。 そんな江本に、優奈と澤田は邪魔者扱いの様に黙れと言い、それに江本はなんてぞんざいな扱いなんだ、オレはぁ……と、落ち込む。 そんな江本に、翔真は苦笑いするしかなかった。


(これが、有名なB級魔導士の江本 小太郎の普段の扱いか……なんとまぁご愁傷様だな〜)


 と、知られざる有名魔導士の普段の仲間達からのこの様な扱いだったとは、心中呑気な思いをする翔真だった。


「今後についてたが、今日は既にホテルを取ってあるから明日の朝、またここに来る。そして優奈の極秘による 『白銀の召喚師』探索任務には俺達二人も同行する。 フェリックとエミリーは風ノ忍衆の探索をして貰っている。つまり、俺と江本はお前の守護に回り、フェリックとエミリーは風ノ忍衆の探索に分担している。奴らを見つけ次第、派遣された俺達四人で速攻で排除するつもりだ。 そして風ノ忍衆の居所の手掛かりは明日にまた知らせる事にする。今はもう直ぐに深夜に近づいてるからな」


「ちょ、ちょっと待ってください! さっきから話を読むに私は守られる側って事じゃないですか! 私も奴らを壊滅させる為、協力します!」


「「それはダメだ! 優奈 (ちゃん)!」」


 と、自分も風ノ忍衆の壊滅へ協力する主張する優奈へ、澤田……そして江本の二人が強く拒否する。


「奴らの狙いは優奈、お前だ。 そんな奴らの前へお前は自ら素直に狙われに行く様なものだ」


「それにオレ達は日本魔導機関上層部から優奈ちゃんを敵らへ近づけるな、遠ざけろ、絶対に引き渡すなって言われてんだから」


「っぐ、で、でも……!」


 二人の言葉に、優奈は言いたい事を口に出す事を挟む。 何故なら二人の言葉の意味からするに、敵の標的とされた者が敵地へ赴く、と言うのは敵側にとっては好都合という事だ。もし優奈が風ノ忍衆へと赴けば、奴らからしたら手間が掛からない。


「しょ、翔真はどうなのよ!?」


「え?」


 ここで澤田と江本から拒否された優奈は、何故か翔真の意見を聞いてきた。察するに、優奈も風ノ忍衆へよ壊滅に協力させるか、させないか、だろう。


(うむ。 どうしたもの、か……)


 戦力面としては、優奈も協力すれば高くなるだろう。 だが風ノ忍衆の目的は優奈だ。 奴らの目的とする優奈が自分達の前に現れれば手間も掛からず、目的達成になるだろう。 それに奴ら一人一人は上位魔導士でも敗ける格率が高い程に強い。 人数差なら四対四よりも、五対四の方が有利に勝利へ運べる。だが、


(う〜む〜……)


 と、考える考える翔真だったが……そこへ澤田が発言した。


「これも言っとくが、翔真は優奈に担当している極秘任務から降りてくれないか?」


「っな! 澤田さん! それはーー」


「優奈。もともとお前が彼に強引に手伝わさせてるんじゃないか。 彼だって本当は嫌々になってると思うぞ。 それにエスパダに住む異能者が、俺達魔導士の過酷な世界に首を突っ込む事は許されない」


「っぅ!」


 澤田の言葉に、確かにそうかもれしないと自分自身にも感じてる事なので反論出来なくなった優奈。 その二人の様子を見ていた江本も、うんうん、と頷く。


 そして翔真は、確かにここで極秘任務の手伝いから抜ければ、もう優奈達との結ぶ縁がなくなり、余り関わらなくなるかもしれない。一応お隣に住むので、多少はこれからも関わる事もあるだろうが。


(僕からすれば、ここで手を引けば面倒事から抜け出せて願ったり叶ったりだけど……)


 だが、果たしていいのだろうか。翔真は考える。

 面倒事から抜け出しせば……後にバイトしながら静かに暮らし、暇な時間やバイト休みな日は何処かで訓練場や修練場などに行って鍛錬する。

 そんな日々を優奈と出会う前からしており、そんな何時もの日常が連想される。


(…………)


 頭の中で考えに考えまくる翔真。以前の翔真なら、すぐに面倒事から手を引くが……今の翔真は違った。 翔真は今、合理的な思考へ感情面が入り込んでいる。 それが続き、悩んで悩みんでいるのだ。 だが他はそんな悩みから結論出してくれるなんてなかった。


「……そう、分かったわ」


 黙りな翔真を見た優奈は、澤田達の言葉に同意したと勘違いしたのか、勝手に解釈した。 それから、澤田は今後についてまだ言ってなかった事を皆に言った後、解散。


 そして澤田と江本は予約したホテルへ帰る為に駐車場に停車している車へ向かい、優奈は隣の七○十一号室の自身の自宅へと帰るのだった。








 ーー午後11時00分・場面は深夜の中で点灯する駐車場にある一台の黒の車、その黒車の運転席と助手席に座る、二人の黒髪の男。


 バーブルーマンション第七階の七○十二号室、加藤 翔真の自宅から退散した、日本魔導機関所属の澤田 辰久と江本 小太郎だ。運転席が澤田、助手席は江本だ。


「先輩。 本当にこのままでいいんですか? 」


「……なんがだ?」


「優奈ちゃんが狙われる理由ですよ! 恐らく、風ノ忍衆はあの最凶最悪異能犯罪組織(・・・・・・・・・・・・)が手引きしたと思うっす! なら優奈ちゃんが狙われる理由はーー」


「分かってる。 そんな事はわかってるとも」


 焦りになりながらキツめで答える江本に、澤田は最後まで言わせまいと遮り、何をかは知らないが、分かってると強く主張する。


 分かる通り、実は優奈が風ノ忍衆に狙われる理由は知っていた。知っていてなお、当人へ伝えなかった。 だがそれは、優奈を幸せを思っての事だ。

 これは二人に限らず、日本魔導機関内のごく一部の者達もしっていおり、二人と同じ思いだ。

 その中の一人である江本は、


 ーーこのままでいいのだろうか?

 ーー果たしてこれで優奈はこの先幸せになれるのだろうか?

 ーー優奈ちゃんは……柳 優奈はいずれ《(のが)れられない運命》から外れ、幸せになれるのだろうか?


 と。

 意識せず、勝手に頭の中でそれらが入り込み、数ヶ月前から悩みに悩む江本。


「それとは別に……あの青年、加藤 翔真という男は気になるな」


 と、徐に澤田から先程上がられてもらった自宅の住み主、金髪碧眼で江本とそう年の差が変わらない男、加藤 翔真の事を口に出した。すると、江本は途端に不機嫌になった。


「なんで、あいつなんか気になるっすか? あんな奴に!」


「はは、お前のその不機嫌な様。お前もあの青年が気なってるのか?」


「べ、べべべ別に気になってなんかいないっすよ!」


 嘘だな、と江本の取り乱した様子を見てそう思った澤田。 まぁそれは気になると言うより、嫉妬心なものだろうな、と続けて思った澤田だった。


 そして澤田は車を動かし、二人は予約したホテルへと帰るのだった。


お読み下さりありがとうございます!

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