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最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第3章:異能学園への潜入調査(仮)
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第124話:一方、高層ビル屋上で(下)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ――いるんだろ? エスパダ上層部にカラス・イルミナティの内通者(裏切り者)が――


 突きつけるようにクレス・アークレスから問い放ってきたそれに、


「……素晴らしいですよ、クレス団長。 そこまで自らの行き過ぎた推理の話を切り出すとは、いやはや、ある意味で感心しました。 ええ」


 ルーナイ・オズボーンはとぼけた感じで応える。 あくまでも知らんぷりする姿勢である。しらを切るのなら、それはそれで知らんぷりをし続ければいいさと、クレス団長は割り切る。 しかし知らんぷりしてる様子なら、裏切り者がいることは確信した。


「しかし一方でクレス団長殿には失望しましたよ。裏切り者がいる? そんな盲信を抱くとは。行き過ぎた妄信、でしょうかねぇ」


 呆れた感じでルーナイは言った。


「っはは、お前がそう解釈するならそうするといい。だが裏切り者がいると、俺は確信した」


 そう確たる意思で言ってきたクレス団長にルーナイは僅かに眉を寄せるが、しかし直ぐに余裕顔に引き戻し、


「話はこれで終わり、と見ていいじょうか。それではこれで失礼しますよ」


 そして転移魔術でこの場から離れようとした刹那――、


「っ!?」


 転移魔術が発動しなかったことに、ルーナイは目を引き見開く。 その直後、背中に小さな赤い魔術陣が貼ってるように付いていることに気づく。


「『炎陣の繋ぎ』――それは術者と対象が一定範囲内より離れた位置へ異能によって移動しようすれば、瞬時に異能を打ち消す炎の魔術だ。あの火柱の攻撃に紛れ込ませて、転移魔術で避けようとした直前にお前の背中へその炎陣を飛ばし、付けさせてもらった。 これでこの場から転移魔術で離れることはできなくなったってわけだ」


 と、クレス団長は左手の甲をルーナイへ見せつけた。その左手の甲に、ルーナイと同じ小さな赤き魔術陣が貼り付いていた。この炎陣が、二人を一定範囲内に繋ぎとめているのだ。


「……なるほど。 あの火柱の攻撃はこのためのフェイクでもあったってことですか。 先ほど失望しましたと言いましたが、訂正しましょう。貴方は油断ならない人ってことを」


「はじめに言ったことを覚えてるか? ここで足止めさせてもらうと。 だからこの場から逃がさない。 あちらで事が全て終わるまで、この『炎陣の繋ぎ』を解除しないぞ」


「なるほど」


 ルーナイは理解した。 そしてこれは引くつもりもないとわかっていたからこそ、この魔術を仕掛けたのだろうとも。 この術はこの場から引くことできない。 ハナっから悪魔使いとの戦いや、異能原爆の処理が終わるまで足止めするつもりで、また、この場から逃がさないようにしたのは捕らえることも考えてのことだろうと。


「仕方ありません。足止めされてあげますよ。しかし私を足止めできても、他の者達を足止めできるでしょうかねぇ」


「……なに?」


 ルーナイ・オズボーンの聞き捨てならない台詞に、クレス団長が顔を顰めた直後。 ルーナイは両手を広げた。 すると、彼の両隣に大きな転移魔術陣が展開された。 そこから三人の男女の組がこの場へと転移し、現れた。 その三人にクレス団長は驚いた。その者達に見覚えがあるからだ。


「……これは」


 更に面倒な状況になってしまったと、クレス団長は顔をしかめた。 その見覚えある三人は、一人一人がA級犯罪組織の長の三人で、指名手配されている者達だった。


 A級犯罪組織、【魔妖の面】の頭領――『妖頭』、男性である以外素性不明。

 A級犯罪組織、【ブラック・ブラッド】のボス――『レッドウーマン』、女性である以外素性不明。

 A級犯罪組織、【蛇紋組】の組長――『蛇長老』、老年男性である以外素性不明。


 カラス・イルミナティの三大幹部組織の一角、ペティル・ファミリーの傘下にいる犯罪組織の中でも、この三者一人一人が率いる〈魔妖の面〉・〈ブラック・ブラッド〉・〈蛇紋組〉はトップスリーの犯罪組織である。

 ペティル・ファミリーのファミリーボス含め血縁者達たるトップの中枢の次において、この三人は二番位にいる。そして三人とも『鴉子カラス・ヴァイカウント』を鴉王カラス・キングから与えられている。

 それらの情報を知っているクレス団長は、そんな一度に凶悪の三人が現れた事に、顰めっ面のまま眩暈が起こりそうな気してしまう。そして――、


(魔妖の面の頭領で、ブラック・ブラッドのボスに、蛇紋組の組長か……流石にこの四人のメンツを相手するのはヤバイな。いやほんとマジで)


 いくらエスパダ第七異能騎士団長と言えど、『鴉伯』にA級犯罪組織の長が三人は厳し過ぎることは間違いない。 この四人を相手してしまうことにクレス団長は冷や汗し、危機感が身体中に走る。 まさかの伏兵に、クレス団長はルーナイ・オズボーンへと問う。


「……なるほど。こっちだけじゃなく、そちらもそちらで予見していたか。しかも裏の裏を突いてくるとは。 流石にこれは驚いたぞ」


 転移魔術は術者の魔力量や技量面に比例して、転移する範囲が定まる。 連中のアジトからエスパダ第五区のこの高層ビル屋上までの転移することはどんな優れた卓越者でも不可能。 故に、この三人は出陣が来るまでエスパダのどこかにずっと潜んでいたということになるだろう。


「そうですか? 仮にも私からしてここは敵地。故に予めそれ相応の人員を備えておきますよ」


「…………」


「さて、いくら異能騎士団長、『炎の剣聖』クレス・アークレスでも、私含めこのメンバーを相手にどこまで持ち堪え、足止めできるのでしょうかねぇ」


 嗜虐のごとく不敵な笑みをするルーナイ・オズボーン。 彼の言葉を合図に、それぞれの犯罪組織の三人の長は、無言で戦闘体勢に入る。 そんな彼らに、クレス団長は険しい表情で無意識に少しづつ後退してゆく。


(さてどうするか……)


 クレス・アークレスという異能戦士は、今までに何度とか窮地に立たされた事もある。 その中には、この強敵四人対自分一人という不利な状況以上もあった。

 故にこの状況においてもクレス団長は当初冷や汗をするが、それは当初だけで……今は現状をどう長時間、優奈達や異能騎士隊が事を終わらせるまで足止めするかを、冷静に頭の中で考え、模索する。

 増援を呼ぼうとしても、この四人だと生半可な者を動員することことは無理だろう。 無駄死になる。 ならばやはり異能騎士団長クラスを呼ぶか? しかし角団長は管轄の県にいるので、時間的にここまで到着するのは大いにかかる。


「三人とも、行きなさい」


 ルーナイ・オズボーンの合図と共に、三人はクレス団長へと襲いかかっていく。しかしそこで――クレス団長も、ルーナイ・オズボーン達すら予想だにしかない事が起こった。


「「「「「――っ!」」」」」


 それは、クレス団長へと襲いかかっていく三人の前……一人の陣営と敵四人の陣営の合間に、出入り口の扉から突如として飛び込み、敵三人の襲撃を妨害した二つの人影が現れたからだ。

 そしてその人影があらわになって姿を見せる。


「な、なんとか間に合いました、ね、柿谷・・さん。 はぁはぁはぁ」


「ギリギリだったがな! ははははは!」


 息切れをしている一人は戦闘服を着た青年。

 豪快に笑っているもう一人は中年の男性で、そしてなぜかコンビニ店員が着る服装だった。

 しかしその二人に姿を見て、クレス団長は驚きながら、言った。


「小太郎くん! それに――」


 戦闘服を着た青年の正体は、今頃悪魔使いシュラードと戦う優奈とエミリーのサポートに回っているはずの江本 小太郎だった。

 そしてもう一方の中年男性。

 こちらはクレス団長だけではなく、ルーナイ・オズボーン含め敵四人すらも驚愕の表情をする程に、本当に思わぬ登場をした中年男性に目を引かれた。


「――おま、いや、貴方・・は」


 クレス団長は、驚き顔で声を張って、そのコンビニ店員服を着る中年男性の名を呼ぶ。


元日本魔導機関長・・・・・・・・源三郎・・・さん……!」


「久しぶりだな、クレス」

次回は優奈側の話に移ります。

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