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最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第3章:異能学園への潜入調査(仮)
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第117話:対面、激突、その一方で(中)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ーー魔導士よ」


 そう言い放った黒髪の女――優奈は、更に本当の素顔を晒し出した後、女性会社員スーツを派手に勢いよくサラッと、剥ぐように脱ぎ捨てた。その隣にいる金髪の女――エミリーも、続けてそうする。

 すると、二人の服装が黒ずんだ魔導士の戦闘服へとなり変わった。いや、正確には戦闘服のその上に、上着として重ねて会社員スーツを着用していたのだろうから、スーツの上着を脱ぎたとみるべきだろう。

 しかしそうなると感覚的にも客観的からみても、物凄く違和感をするだろうが……魔導士の戦闘服故にそうした違和感を感じさせないようにその服に備えている機能で、本当に会社員スーツしかしてないと感じさせてるのであることができる。

 その下に魔導士の戦闘服をきてないと、当人の感覚的にも、また人の目から見てもそう見て取れるのだ。異能騎士の礼服や異能学園の生徒の制服と同様に便利な異能的機能が備わっているのであった。


「これはもう必要ないわね」


「そうですね」


 本当の服装と素顔をあらわした直後、最後の仕上げとばかりに二人は耳につけてある物を外した。 限りなく本当の人間の声にできる耳栓型変声機だった。 それは耳から発声器官を異なった声へと変えられるものだ。 そして外した耳栓型変声機を二人は懐にしまう。 するとその直後に前方から笑い声が飛んできた。


「っこれは驚いたわ。まさか魔導士だったとは!」


 驚いてはいるが、それ以上になぜか可笑しそうにシュラードは言った。そして――、


「改めて名乗りをあげるようか。クソ魔導士の二人。オレはカラス・イルミナティの三大幹部組織の一角、ペティル・ファミリーに属する『鴉子カラス・ヴァイカウント』のシュラード・デモネス・スミス。お前たち二人を死へと(いざな)う者だ」


 エスパダ第七異能学園に偽装し潜り込んだ不可解な現状事件の犯人は、ことここに至り、遂に己の正体を名乗り明かした。 続けて、


「新たにきた魔導士どもが誰なのかは知らなかったが、まさかうち一人が憎っくきアメリカで二大聖獣貴族とうたわれるその片方、フォリーヌ家のご令嬢エミリー・フォリーヌとはな。 それにもう一方は、先週高等部に留学してきた女子ときた」


 愉快そうな、しかしその声には確かにある殺念を滲ませた言葉を放った。 二人はこの男の最初部分の言葉を聞くに、どうやらあちらはあちらで自分たち……新たに魔導士数名が異能学園に潜り込んでいる情報を掴んでいたようだ。 その魔導士が誰なのかは知らなかったようだが。


「ということは――なるほど。 なら、もしかしたらもう一人の留学生も魔導士かもしれないな。 どうなんだ?」


 そう聞くや否や、シュラードはそのドロドロとした敵意あるその双眸を二人へ、特にエミリーへと射抜くようかの如くむけた。 無論、この男のその質問には素直に本当のことを答えるわけにはいかなく。


「さぁ、どうかしら?」


 答える義理はないという風に、優奈は曖昧な答えを返した。更に、


「それよりも、シュラード・デモネス・スミス。一連の事件を引き起こして、貴方の目的はいったい何なのか答えて頂戴」


 はぐらかすように、そして今度はこちらの質問の番だというように問いをなげた優奈。すると、


「何の目的なのか、か……ハハハ! それは既にお前たちは調査して分かったんじゃないか?」


「……異能原爆、ですか」


 ボソッと呟くように、エミリーは言った。 しかしこの静かなる校庭でその呟きの声は拡散とし、よく聞こえた。故にシュラードはエミリーのその答えに「その通りだ」と、憎みの眼差しを向けた。


「その通りだとも、蛮国(アメリカ)(魔導士)


 そんな見下すように汚名を呼ばれ、エミリーの表情はムッとなる。しかし何か言い返そうになるも、グッと抑えた。


「けど、色々と謎な部分が多々あるわ。 調査で分かったことだけれど……どうやって異能原爆を、仕上げようとしているのか分からない。 そもそも、異能原爆はあまりにも危険すぎるゆえに、その異能兵器は禁忌とされ、使用することは大罪になるにおろか、その製造方法も異能連盟の力をもってして厳重に隠蔽されているわ」


 難しそうな表情で、淡々と優奈は言う。

 それに不快な表情のエミリーは続けて言い放つ。


「確か、異能原爆を迅速に製造しようとしても、とても長い時間を有すると聞きます。異能原爆に関する資料によれば、とても数人だけで、しかもたった二、三年だけでは異能原爆を半分近く造り上げることは不可能です。なのに、あの女悪魔が守護する地下の礼拝場にある異能原爆は、半分完成に近づいているまでに仕上げていました」


 大都市すら焦土せんとする異能兵器。 その製造方法は、異能連盟により隠滅され、それを知ることは無駄だ。 世界最高峰のセキュリティを何重にも敷いている。 万が一、億が一にも、たとえ知れば即重罪である。

 そして知ったところで、その製造方法をやるのは超・最難関だ。その異能原爆を、どうやって半分近くまで造り上げたのか謎である。

 もしかして、カラス・イルミナティという最凶最悪の犯罪組織は、異能連盟の世界最高峰セキュリティすら掻い潜り、異能原爆の製造方法を奪っていたというのだろうか? そんなありえない馬鹿げた事まで思考に及んでしまうのであった。

 しかし――、


「いったいどうやって、異能原爆を半分近くまで仕上げたのですか?」


「それに異能原爆を、いったい何に使用としているのかも答えて頂戴」


「やれやれ、こっちの質問には答えずに、自分たちが知りたいことを尋ねてくるか……まぁ仕方ない。そちらの憎っくき金髪小娘はともかく、麗しき黒髪の小娘の質問には答えてあげようじゃないか。ズバリ――」


 直後。

 シュラードの雰囲気が、表情が、目つきが……


「――アメリカを滅ぼすためさ」


 暗黒に堕ち続けるかの如く、復讐の鬼を見ているのかと錯覚する程、その凄まじい復讐心をむき出し、答えた。


「「――っ!」」


 急激に変わった、そのむき出した凄まじい復讐心の鬼に、二人は額から脂汗が流れ、後退った。

 同時に。

 このシュラード・デモネス・スミスという悪魔使いの男を、尚更野放しになどできないと、速やかに捕獲せねばならないと、その責任感が、そして危険度が高く跳ね上がらせる。

 そんな二人をよそに、シュラードは何やらビクッと、まるで誰かから突然と何事かを知らせてきたかのように反応。

 すると、


「なるほど。 オレの契約女悪魔から知らせが今入ってきた。どうやら、今時にて全てにけりをつけるらしいな。秘密にしていた地下の礼拝場に、異能騎士の群れが押し寄せてるようだな」


 どうやら今の反応は、契約者と契約悪魔によるテレパシーによる遠隔通信的な能力で、今頃『卒業試合の間』で突入している異能騎士隊らの、あの地下に構える女悪魔から報せをしてきたのだろう。


「ええ、そうよ。そして私たち二人が、貴方を捕らえる役目ってわけ」


「無駄だとわかっていますが……降伏してくださると大いに嬉しいのですがね」


「ッハハ! 戯言を抜かすな、アメリカの雌犬女(エミリー・フォリーヌ)。誰がそんな三下野郎な真似をするか」


 笑みを取り繕った表情で、しかしその裏面では軽蔑なもので、シュラードは言い返した後、


「しかし妙なだな。オレの契約女悪魔から報せによれば、魔導士は一人もいないと言っていた。 お前ら二人の他にもまだ魔導士がいるはずだ。いったい何処に?」


「教えると思う?」


「いや、思わないな。 しかしお前たち以外の魔導士が、何処で何をしようとしているのかは、だいだいの予想はつく。 おそらく、お前たちからしてもう一人の敵へ注意をいっているのだろう」


 確信したような表情でシュラードは不敵に口を吊り上げた。 すると、優奈はそれを無視して右手に握りしめる魔剣《黒転狼剣》を、抜刀するかのごとく構えた。 と、同時にエミリーも動く。溢れ出す魔力を左手に集約させ、掲げる。


「《我は聖なる力を持ちし者・大いなる聖馬よ、汝、我が呼に応え、降臨せよ》」


 直後、光り輝く聖なる五芒星の召喚陣が、放射状に発光するとともに展開。 それから聖なる光の粒子が火花のように拡散し飛び散るとともに、聖なる獣ーー聖馬(ペガサス)が『ヒヒィーーン!!』と鳴きながら降臨。 その直ぐに、


「ひーちゃん!」


 その呼び声に応えたペガサスことひーちゃんは、己を聖光の塊へと収束。 するとそこから瞬く間に形へと――1本の美しい黄金の細剣に形成――『聖獣装』――《聖馬ノ細剣ペガサス・レイピア》となる。 その黄金細剣を、エミリーは右手に強く握り、西洋剣術の構えへ。


「さぁ、どうかしらね?」


 またも曖昧な返答をする優奈に、シュラードはやれやれと肩を揺らす。 その直後、中等部の校舎の四方八方に異変が起きした。 それは、校舎と外との隔たりの間から上へ上へと踊り昇るように上がった色鮮やかな三色をする異能エネルギー。それが中等部の校舎を球状に囲み覆った。


(あれは……)


 それを目にしたシュラードは、それが何なのかがわかった。

 ――『異戦場の界バトル・フィールド』。

 敵を結界に閉じ込める罠の異能結界機。

 外と内を隔離させた状態で、どんなに内で暴れようが外への影響は受け付けない機能を持ち、また外から内側を見ても、何ら変わらない風景が映し出させるようにしてる。

 中で何が起こってようが、外からではいつもと同じ風景に見えるだけ。

 無論それだけではない。

 結界内でどんなに建物が壊れたり崩れようが、また燃えようが……結界を解除すれば元戻りになる。

 しかし生命ある物体には無効だ。

 また、起動中は外からでも中からでも、結界へ入ることも抜け出すこともできない。

 軍の組織しか所有していない物で、おそらく異能騎士団から取り寄せたのだろうと、シュラードはわかった。


「『異戦場の界バトル・フィールド』。 なるほど、これならここでどんなに激しい戦いをしようが心配ないな。 どうやら、オレはまんまとお前たちの罠に、術中に、既にはまっていたわけか」


 校庭に誘き出し、そこで『異戦場の界バトル・フィールド』を起動すれば、こうして二体一という数で優位に立つことができる。 またたとえシュラードが二人を倒しようが、この結界が起動したままでは結界から出れない。 外で起動している異能結界機をなんとかしないといけない。 しかし、内側から交渉は不可能。 察すると、その装置には起動した者がいるのも確実。その者も、魔導士だろうと予想がつく。

 一方で。


(作戦の第一段階はクリアね)


 自分とエミリーという数の優位にたって仕留めるため、敵を結界に閉じ込める――その作戦の第一段階を成功したことに優奈はほくそ笑んだ。


「そうよ。因みに校舎内にいた警備員たちは、貴方を校庭へ連れてくる間に、三人目の仲間がこの校舎から退避してもらったわ。この結界の中は、わたし達三人だけ」


 そう言い終えた後、優奈とエミリーは同時にシュラードへと、その魔剣(黒転狼剣)聖馬細剣(ペガサス・レイピア)の刃を斬りつけるため、駆け走った。

  ……が。

 ことここに至り、事が順調に進んでいた二人だったが、後により困難を有する状況ーー即ち、


「――悪魔武装」


 一筋縄ではいかないことを、思い知ることになる。


 ここに、二人のB級魔導士VS『鴉子カラス・ヴァイカウント』の戦いの幕が、切って落とされた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 そして――時刻を遡り。

 一方で佐々木 流介は、これから先に待ち受けるもう一人・・・・の敵の潜入者へと、赴く。


:次回の最新は5月21日です。

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