第108話:女悪魔との衝突!(中)
今日は二話最新します。
まずは一話目。
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『っぅ、ゔぃぅぁぁぁぁ、ぁ……!』
空間から出現した女悪魔に操られる人間達ーーそれは驚くべきことに、不可解な現象事件の被害者となったことで不登校となった生徒たちだった。
全員が全員、その目には光が宿ってなく、また焦点が合っていなく真っ白だ。
明らかに意識がなく、あの女悪魔に操られている。
事実、一人一人に女悪魔の禍々しい魔力が身体から流れ出ていることが魔力感知で感じられる。
また、全員の身体にはその禍々しい魔力が黒色のモヤモヤとなって纏ってもいる。
(これはなんの冗談だ……この生徒たちは、不可解な現象事件の被害にあった生徒じゃないか! 今はそれぞれ家に、被害にあった恐怖で引きこもってるはず……! 今朝だって定期的に一人一人、家に引きこもってることも確認もしている。 なのになぜだ……!)
ちなみに任務がより良く進むため、事前に不可解な現象事件の被害にあった生徒たち全員の顔と名前を翔真たちは調べて覚えてある。
今も不可解な現象による恐怖で、家に引きこもっていること、だ。
無論、途中で家から飛び出したり、それこそ誰にもバレずにいなくなったりはしない。
なぜなら、エスパダ第七異能騎士団の団員たちが一人一人、裏で警護も兼ねて見張っているからだ。
なのに、なぜ? と翔真はだけじゃなくエミリーも分からず、頭が混乱してしまう。しかし、
『っゔ、ぅぅぅぅ、ヴァァァァア……!』
そんな二人が混乱する一方で操られている生徒たちは、翔真達へとまるでゾンビのような動きで、しかし凄まじい速度で、突撃していく。
「っ! エミリー、今は応戦するぞ! まずこの生徒たちをどうにかしないと!」
「っ、わ、わかりました!」
我にかえった翔真の慌てた指示に、エミリーは承知。すると、彼女は掌をシーちゃんにかざす。
「シーちゃん!」
『ヒヒーン!』
直後、シーちゃんの体の全身から聖なる光が湧き輝き出し、その聖光が徐々に収束していき……それが形へ……そして、最終的に一本の美しい“黄金色の細剣”が形成された。その細剣をエミリーは握る。
「《聖馬ノ細剣》ッ!」
それは、エミリー・フォリーヌの契約せし聖獣を己の武器となるフォーム。
『聖獣装』と呼ばれる、聖獣が武器化した形態だ。
細剣の使い手、それこそ彼女の最も得意とする戦闘スタイル。
魔の者たちを滅する聖なる武器だ。
そんな彼女が《ペガサス・レイピア》を顕現する、
その間に、
「《光り輝く力を用いて・防壁なる円となり・我らを守りたまえ》」
エミリーの傍にて、同じタイミングで翔真は唱えた。
光属性の防御魔術、『ライトフォース・シールド』。
光属性をくわえて魔に対する耐性をあげ、かつ防御性も格段に向上するーー通常の『フォース・シールド』の属性強化版の防御魔術だ。
突撃してくる操られし生徒たちの、その身に纏う禍々しい魔力が一層と上がったのも感じて、喰らえば一種にして身体の隅々までの骨が砕かれると予感し、普通の防御魔術……例をあげれば『フォース・シールド』では防げれるのか不安が大きかなったゆえ、自分が持てる悪魔との一番効率が良い属性付きのこの防御魔術を出したのだ。
ーーッドン! ッドン! ッドン! ッドン! ッドン! ッドン! ッドン!
そんな『ライトフォース・シールド』に突撃し、激しい衝突音とともに、次々と操られる生徒たちは跳ね返り、後方へ吹っ飛ばされていった。
「エミリー、その細剣は……! なるほど、よし、なら操られる生徒たちは頼む!」
そしてエミリーが握る《ペガサス・レイピア》をみて、何かを悟った翔真はそう彼女へ頼んだ。
「はい! お任せを!」
尊敬する翔真からの面と向かっての頼みに、エミリーは高揚感を抱きつつしっかりと頷いた。
そして彼女は操られし生徒たちの吹っ飛ばされた先に……この暗闇で閉ざされている出入り口付近へと身を低くし、駆け出した。
「ーーさて」
そんな彼女が駆け出したのを確認した翔真は、立ち上がり、ゆっくりと祭壇へと歩いてゆく。
「女悪魔、いつからあの生徒たちをお前は操っていた?」
そして翔真はここにはいない、
この場のどこかにいる女悪魔へと語りかけた。
すると、すぐにその返事が遠くから聞こえる声音で返ってきた。
『あら? っふふ、それを知ってどうにかなるのかしら? この状況を。ままいいわ、教えあげる。わ。坊や』
愉悦しているということが、声からしてわかった。 それはおそらく、自分が大いに優勢であると認識し、油断しているということ。
こことは別の某所にいる女悪魔は、この時、自分の予想外な出来事を、後に翔真とエミリーが仕出かすことを知 知る由も無いだろう。
『あなたたちは主人から聞いていた魔導士と呼ばれる人達、つまり敵なのはわかっているわ。それはつまり、この学園とやらの人間たちを守る者たち。なら、あなた達が守っている子達を使って、あなたたち魔導士を殺しにいったら、無闇に手を出すことはできないじゃない? その手段を使ったまで』
「…………」
『まぁ、人間の生徒たちをあなた達への対策のために主人が決めいたこと。 あの人は卑劣な手段をもとる。 まぁそこにワタシは惹かれてのだけどねぇ。っふふふふふ」
こことは別の場所にいるため、どんな顔をしているのかはわからない。
だが恍惚な表情で嗤っていることは確かのは間違いないだろう。
しかしここまでの話はもちろん知りたかった事だが、肝心の部分をまだ女悪魔は口にしていない。
「僕が知りたいは、いつ、どこで、生徒たちを操り、そしてどうやってここに来させたかだ。常に僕達の協力者達が警護も兼ねて見張っている。いつの間に操り、ここに召喚させたのかが知りたい」
『……っぶ! ふ、ふふふふふふふふ』
すると、突如して女悪魔が吹き出したかのように高らかに嘲笑った。 まるで、まだ気づかないのか? という風にと、そんな感を翔真を感じた。
「主人の予想通り、あなた達はまだわかってないのね。 人間って凄く感が鈍いのね? っふふ! そんなの最初からよ? 最初からね。 ずっと、ワタシの悪魔術『収納空間』の中においているのよ?』
(……まさか!)
……それを聞き、翔真は悟った。 気づいたのだ。
それは、女悪魔が人形へ自らの魔力を注ぎ込ませ分身と同じだやり方だということ。
「今まで僕達が家で見張っていた被害者の生徒たちは、偽物。本物は最初からお前の手中の中だったのか……!」
『あら、やっと気付いたの。でも遅いわよ。っふふふふ』
なんてこったと、翔真は自身を責めた。
つまり、今も異能騎士達が見張っている被害にあった不登校の生徒たちは、女悪魔が悪魔術で作り出した偽物だったのだ。
本物は、被害を受けた時の時点から、女悪魔の手中に置かれ続けていた。
ずっと、あの女悪魔の収納空間内に意識不明のまま置かれていたのだ。
「てことは、お前の『収納空間』内に、まだ沢山の生徒たちが置かれているということか……! エミリーが相手にしているあの生徒の十数人だけじゃなく、そのほかのお前が被害させた生徒全てを」
『ッフフフ! そういうことよ。それにしても、坊やはあの小娘の手助けはしないでいいのかしらねぇ? 守るべき子達だから反撃できず、防戦一方じゃないかしら?』
愉悦な声で女悪魔がそういうが……しかし、
「それはないな。なぜならーー」
突然と。
翔真は、一転して悠々しく答えた。
まるでエミリーたち側が最終的に自分たちのいい結果になることを、信じて疑わないよう。
しかし、それはすぐに確定された。
直後のことだ。
出入り口付近から眩い光が迸り、次に瞬く間に温かい聖なる光の輝きが出入り口付近を包み込んだ。
それに応じて、ゆっくりに歩いていた翔真は祭壇に着き、早速とある《動作》をした。
『っな!』
この場を遠くから悪魔術で観ていた女悪魔が、翔真とエミリーへ度肝を抜かれてしまった。
『ワタシの『操りの悪魔術』がーー解かれた!?』
エミリーに襲いかかっていた生徒たちの体内にある、操り人形にさせている女悪魔の禍々しい魔力が……女悪魔の『操りの悪魔術』と呼ばれる術が……解かれたのである。
『ーーーーっ!』
しかしそれ以上に、翔真がやろうとしている事に女悪魔は看過できなかった。いや、できるはずないのである。 それは、祭壇の後ろの壁に飾られてある『大きな十字架へ攻撃魔術を放とうした』ことを、だ。
「ーーっ!」
その寸前、その翔真と大きな十字架の合間に突然と魔力の奔流が渦巻き、そこから女悪魔が現れた。
まるで、大きな十字架への攻撃を守るかのように。
その現れた女悪魔の顔は、初めて焦った表情になっていた。
それを目にした翔真は、やっぱり、と自分の考えに確信をえた。
そして、同時に現れたのが今度こそ本体であろう。
「みなさん、安心してお休みなさってください」
一方、女悪魔の毒牙から解放した生徒たちを自身を中心に1箇所に集めて寝かせ、聖なる障壁ーー『ホーリー・シールド』を展開して張り、眠る生徒たちを守る。 また何かしらの手で生徒たちへ害するだろう現れた女悪魔から。
それを現れた女悪魔を警戒しつつ一瞥して確認した翔真は、再び前を向き、なぜか焦りの色をみせる女悪魔へ、
「どうした? 突然現れて、さらに焦った顔をして」
その理由を分かっていながらも、あえてとぼけた顔で言うのだった。
朝7時00分に二話目を最新投稿します。