表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強召喚師の舞い戻り英雄譚  作者: 林 小
第3章:異能学園への潜入調査(仮)
108/127

第106話:『卒業試合の間』で(下)

 ◆◆◆



 隠し扉を通り、その先へ続く通路を10秒経過した程度で進むと、下へ続く階段に着く。

 その階段から先は先ほど通った扉からの日の光は差していない。

 代わりに四段ごとに階段の壁際上部には一個ずつランタンが飾れられ置かれていて、そこから灯す火の光だけが階段を照らしている。

 しかしそれでもやや薄暗く、階段を降り始める一番上の段の場にいる二人と一匹の目からでは、階段の途中でまでしか見えなく、その先はいくらランタンが灯しても暗くて見えなかった。


「予め事前に『卒業試合の間』の旧校舎の図面を見てきましたが……このような隠し扉と通路ら図面にのってありませんでした」


「図面には載せなかったんだろうな。なんたって隠しの扉と通路なんだから。けど、その図面は当てにならないと思う」


「と言いますと?」


「あの隠し扉、そしてそれを隠蔽する魔術式が描かれてたのと、その先のこの見渡す限りの階段や通路を見る限り、作り出されたのは随分前の話じゃないってこと」


 翔真は隠し扉を通り、その先に進む間にあたりを観察していた。 その観察した結果、この隠し扉、通路、階段と、何もかも随分と前から作り出されてはいないと分かったのだ。


「多分二、三年ほど前に、ここが途中で造り出されてたんだと思うな。 その仕業かは、異能学園の誰だれかだろう。 それもさっきの隠蔽魔術式からして、誰にも知らないように、な」


 そ言い終えた後、翔真は目の前の下へ続く階段を降り始めた。直ぐにエミリーとシーちゃんも後についていく。

 薄暗い階段に気をつけて、警戒し慎重に降りながら、話の続きをするように翔真は最後に言った。


「そしてその誰なのかは十中八九、異能学園に潜む敵ーーカラス・イルミナティの輩なのは間違いない」


 下へ続く階段を降りていく、降りて、降りて、ランタンに灯された階段を降り続けていく。

 そうして暫くすると、シーちゃんが緊張感ある小さな鳴き声をだした。


「この先には、今まで謎につづく不可解な現象の事件の真相があるのは確かかもしれないね。 シーちゃんが禍々しい魔の力が濃く、そして大きくなったといっています」


 その自身の召喚獣の鳴き声の意味を読みとったエミリーは、先頭で降りてゆく翔真へそう伝える。

 翔真は彼女の言葉を頷き承知すると、更に慎重に降りていった。


 それから2分後が経過して、翔真達は一番の下の段の場に足がつき、階段を降り終えた。

 そしてその先には、肌寒さを感じるほどの寂れた、灯りもない通路。

 その数メートル先には、大きな出入り口があった。

 そこからは翔真達がいるところから見ても、明るさがある。


「行こう」

「はい」

『ヒーン』


 そして、二人と一匹はその明かりがある出入り口へ向かった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「っな、この旧校舎の地下にこんな場所があったなんて……!」


 出入り口を進み、通った先の光景にエミリーは驚きに口を開けた。

 そこは、天井高くある広場。

 一言で表すならば、礼拝堂に違い内装をした場だ。

 言うなれば、礼拝場と言うべきだろうか。

 しかしそれは普通の礼拝堂と違って、不気味なものだった。

 壁や床に敷かれている絨毯、奥の祭壇に整然とされている長椅子、飾れる装飾など……泥黒く、呪印のようで、悪魔を連想させる色合いだった。

 また、壁には大きな飾り絵があり、殆どが恐怖心を抱かせる絵ばかりだ。天井にぶらさがるシャンデリアからは赤色の灯りゆえになお不気味である。


「あ、あれを見てください翔真さま!」


「…………」


 言われて、エミリーが慌てて指をさした方向を見る。

 さした方向には、祭壇の後ろの壁に飾られある大きな十字架。

 それにはくっきりと刻まれている魔の術式が組み込まれていた。 そこからは、禍々しくチカチカと淡く黒く光っている。

 その大きな十字架から禍々しい魔力を感じた二人は、すぐさま駆け寄った。


「間違いない……これは悪魔術式だ!」


 悪魔が使う独特の術式、それが悪魔術式だ。

 その術式が大きな十字架に組み込まれていた。

 そしてそれを使える者とすれば、悪魔使いしかない。


「異能学園に潜んでいる敵が悪魔使いなのは、もう確定だと頷けるな」


 しかしますます疑念が高くなる。 容疑者にかけられているシャリル・デネーナはそもそも悪魔使いではない。 情報によれば、医療系の魔術を得意としていた。 そんなことをふと思った翔真に、


「……う、そ、ですわ……こんなもの、が……ここ……」


 祭壇の卓上に置いてあった『ソレ』を発見したエミリーは、言葉がうまく発せられず、また顔を青くしていき信じられないといった表情で、呟かれた。


「どうした!?」


 そんな彼女の異変に気付き、そうなった原因である祭壇の卓上に置いてある『ソレ』を見ると、


「ーーっ!!」


 翔真は絶句した。

 祭壇の卓上に置かれている『ソレ』ーー本ほどのサイズをした、黒く濁った結晶玉を。

 その結晶玉内に数多の粒子と、そこに細かく組み込まれてうごめく数多の異能の術式を。


 それは、この結晶玉がいったいどいうものものなのかを……二人は知っている。

 知っているからこそ。

 二人は今、信じられない、信じたくないと。

 現実逃避したくなる気持ちになってしまった。

 しかしそれは当然目を背けたくなるのもわかる。

 なぜなら、それは。


「なんで……なんで! 異能原爆の結晶玉・・・・・・・・が、ここにあるのですか!?」


 必死に振り絞った声で、エミリーは言い放った。


 異能の原子爆弾ーー結晶玉型『異能原爆』。

 通常の原子爆弾とは似て非なるもので、異能の力によって造り出された異能原子爆弾。

 大都市すら地図上から・・・・・・・・・・消し去りたらしめる・・・・・・・・・威力・破壊力を持つーー異能兵器だった。


 こんな予想を遥かに上回ってしまう超危険なものがなぜここ!?


 そんな知りたくても知れない疑問が頭にこびりつく。

 もしかすると、敵はこれを使ってこの人工島・都市エスパダを滅ぼすつまりなのだろうか!? と。

 しかしそうならばとっくにそれを実行している筈だ。


 と、そこまで考えた時、ふと、二人は疑問に思った。


 ーーそもそも、異能原爆を製造するには膨大なエネルギー(異能力)と、膨大な術式を組み込まなければならない。

 とても異能学園に潜む敵だけではこれを完成させることなどできるわけがない。

 ということは……つまり……


「っ!!」


 今までにない緊張感を抱きながら翔真は、異能原爆の結晶玉に手をかざし、解析の魔術を使って調べあげる。すると、


「……よかった。 ふぅ、まだ異能原爆としてまだ完成していない。組み込まれている多数の術式、その半数の術式が途中までできてない。起動もしないし、たとえ強い衝撃を与えても、爆発が強制起動する恐れはないよ」


 と、安心したように伝えた翔真。


「ほ、本当ですが? はぁぁぁ〜〜……よかったですわぁ……」


 翔真が頷いたのを見たエミリーは胸を手でおさえ、安堵して息を吐きた。と直ぐにその場にへたり込んだ。

 どうやら切迫詰まった緊張感が解けたせいか、足腰の力が抜けたのだろう。

 そんな彼女に、聖獣ペガサス(シーちゃん)が寄り添い、彼女の頬へ自分の頬を擦り付ける。


『ヒィ〜ン……』


「よしよし、わたくしは大丈夫ですわよ、シーちゃん」


 寄り添ってくれるシーちゃんを、エミリーは撫でた。そんな主従関係が高い一人と一匹を微笑ましく見る翔真だったか、しかし直ぐに気を引き締めた。


「エミリー、まだ完全に安心はできない。 異能原爆は未完成で爆発する恐れはないけど、だからって危機的状況は変わらないんだ」


「それはどういう……」


 訝しそうに眉を顰めるエミリーへ、翔真は告げた。


「たしかにこの異能原爆は今は未完成だけど……どうやらこれは、自動でどこからかエネルギーを吸い取って、爆発に充分な量まで集めるように、起動している。 いずれ近いうちに大爆発まで至るに充分なエネルギー量を蓄積される。それに術式の方も、どこからか何者が空間を超えて練りこんでいる。 だからこうも術式がブヨブヨうごめいているんだろうな。描いた術式を、そのまま空間転移でこの結晶玉へ組み込まれてるようだ」


「ーーっ!」


「しかも、この異能原爆の結晶玉には特殊な防御呪文が張っていて、それを無理に解除すればその瞬間ーー少なくても、このエスパダ第七異能学園全体を吹っ飛ばす程の爆撃が発生する仕組みになっている」


 次々に告げられる事が、エミリーの心を再び絶望へと近づけさせる。これでは安心なんかできない。危機的状況はまだ続いている。


「ではまだ、未完成であるこの異能原爆結晶玉が完成させないため、今も蓄積するため起動しているエネルギー吸収と、組み込まれ続けている術式を、なんとか止めないといけないのですね」


「ああ」


 エミリーの答えに、翔真はゆっくりと頷く。と、同時にもはや異能爆弾という死の破壊兵器が出た以上、自分達だけでは解決できる範疇を超えている。

 この問題は、自分達だけのものではなくなってしまった。直ぐにエスパダ異能騎士団含め、エスパダ政府へ報告しなければならないだろう。抜き差しならない事態である。


「ですけど気になるのは、膨大なエネルギーはどこから来てるのでしょうか? 」


 それは翔真も思っていたところだった。

 しかしここで深く考えても分からないままだ。

 ともかく、この事をすぐにエスパダ上層部へ知らせる必要がある。

 それをエミリーへ伝えて、彼女は「了解しましたわ」と承知。


 そしてすぐさま翔真達は、この礼拝堂に似た不気味である内装された地下場から出ようと、地上に続く出入り口へ引き返そうと身を翻した刹那、



 ーーッゾク!



「「ーーっ!」」


 二人の背中に寒気が走った。と同時にどこからか、突如として黒く禍々しい魔力が溢れ、場に漂った。



 その直後のことだ・・・・・・・・



『この場から逃がさないわよぉ、人間さんたちぃ』



 それは、この地下の礼拝場中に響き渡る……



『何故なら、主人の命令からぁこの場でねぇ?』



 ……悪意と殺意と敵意を感じさせた……



『侵入者が来たら排除させなくちゃいけないの? だぁ、かぁ、らぁ』



 ……その悍ましくも、甘く妖艶で綺麗な声で発せられたその言葉が……



『あなた達、ここでワタシに殺されてーー死んで?』



 ……目の前に突然出現した〝人ならざる存在(女悪魔)〟から、告げられたのは。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ