第103話:留学から三日後の晩にて
今月最後の投稿!
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ーー留学日から三日後の夜。
エスパダ第七異能学園高等部男子学生寮の翔真と流介の寮部屋にて。
この学生寮の寮部屋にはそれぞれ個別の寝室がある。
同じ部屋で過ごすが、寝室は別々なのである。
そして11時00分が過ぎた頃、夜に定時調査や進展具合の報告など、通信魔導具を用いて五人で秘密会議し終え解散した後、すぐに自分の寝室のベッドへと行き眠りについた流介の一方で……翔真は自分の寝室にある勉強卓の椅子に座り、難しい顔をしていた。
(留学した日から三日が経ってここまで調査した結果、カラス・イルミナティの者らしき人物は未だ、その手がかりすらつかめない)
つい30分前までの優奈達との秘密会議を振り返りながら、翔真は内心呟いた。そしてーー、
(…………)
その時に、翔真は四人に伝えなかった報せがあった。
実はカラス・イルミナティの者らしき怪しき人物が、翔真のその観察眼を以って学園の教師陣と生徒陣を観察し独自の探索調査をしていった結果、潜伏している敵なのではないかとーー今のところだがーー睨んでいるのが二人いる。
(二年A組の担当教師と、三年B組の担当教師が怪しいんだけど……まだこの二人が敵の正体と決まったわけじゃないしな)
それはあくまで、この三日で独自に探索調査した結果ででた過ぎない二人。
正体を隠している敵である可能性は確証はないのは勿論、極めてそうであると頷くには至れない。
もしかしたら違うかもしれない。
もっと他に偽装して潜り込んでいるかもしれない。
それこそ、
(教師にあらず、敵は生徒として潜んでる可能性もある)
この三日間で生徒達を観察してり話をしたりしたが、敵かもしれないと怪しき情報や雰囲気などなかった。……ある一人の女子生徒を抜けば、だが。
(けど、流介はそれはありえないと言っていた)
ともかく翔真、流介、優奈の探索組は未だ敵の正体はつかめてはいないままだった。が、何もそれだけじゃない。良い報せもある。
(調査組は順調に、不可解な現象事件の発生源の場所を突き止めたと言っていた。 これなら夏の長期休暇まで任務を遂行できそうだ)
小太郎とエミリーの調査組は、昨日の晩にて今翔真が内心言った通り、不可解な現象を起こす根源なる場所を昨日の朝方……4時00分前後あたりの時刻に突き止めたのだ。
だがその報告を聞いた時は、今まで調査してもその場所を突き止められなかったのはなぜ? と物凄く怪訝した。
流介の潜入調査開始日をいれて、一年もの調査しているはずが一向にそんな場所など突き止められなかったのだ。
それがなぜ?
夜の調査開始から三日後という短い期間で突き止めたのか?
翔真と優奈はもちろん、一番疑問符を浮かべていた流介の三人は思った。
だがそのあとにその場所が何処なのかを聞き、そして突き止められなかった理由に三人は気づいた。
それはエスパダ第七異能学園の広大な敷地内にあるーー人工森林地帯の最奥ーー『卒業試合の間』だ。
そこは、最上級生達が卒業する際、互いに互いが誰だけど異能者として実力をあげたのか、どれだけ成果を得られたのか、それを試合という形で対戦し、公開する。
つまり今まで高めてきた異能を他の者達に見せつける公開試合ーーそれは今までの最上級生が誰もが通る学園イベントである。
(あそこは不可解な現象が一度も、全く起きなかった。そして最上級生の卒業日以外では全く使用しないから、普段から『卒業試合の間』に立ち入ることや、それこそあの場付近にさえ近づきにいく人なんていない。それ以前に、使用時以外は立ち入り禁止になってもいる)
今までの調査活動範囲は学園の校舎や部活棟に寮、そして訓練所や研究所といった施設など、不可解な現象が起きた場所や人が寄り付く場所しかしてこなかった聞く。
そして『卒業試合の間』は調査任務とは無縁な場所ゆえ、その場所には一切目がいかなかったと流介は言っていた。
不可解な現象が起きた場所を中心に調査を進みたが故に、無縁である場所での調査を怠ったというべきか……ともかく、それらの事により道理で調査が一向に進まないわけである。
しかし不可解な現象事件については着々とに解決へと進んだことは確かだろう。
(『卒業試合の間』には明後日、土曜日に僕も行くわけだが、果たしてそこには、学園内に起こしている不可解な現象の仕組みがあるはず……もしかしたら、悪魔も潜んでる可能性もある)
けどーー。
(悪魔は自分の力だけじゃあ現世には降りれない。つまり術者、契約者、もとい人間の力を借りないといけない。または人間の身体を我が物としてのりうつりか、だが……)
翔真の頭のなかでは、おそらく悪魔は異能学園内で正体を隠している敵の術によってこの世に召喚した、そう見立てている。
しかし、それはあくまで被害にあった不登校中の生徒たちの証言が本当ならば、の話だが……この現状なら、本当に悪魔がこの世に降ろされている確率が高いとみえる。
(悪魔を召喚したのなら、敵は悪魔使いの可能性大だな)
ともかく謎を解き明かすには、やはり土曜日に決行する『卒業試合の間』へ密かに赴くしかないだろう。
そうして独白の時間は終わり、翔真は就寝に入ろうとベッドへ入り、布団をかけて横になろうとした直後ーー、
『マスター、マスターよ』
………ここ最近何度もきく、恐れを他者へ抱かせるような低声が、翔真の頭の中で直接呼びかけてきた。
「…………」
しかし翔真は無視する。
普通なら、そこで反応して呼びかけに応えたところだったが、如何せんその声の相手はーー実は留学日から時間が空き、そして周囲に誰もいない一人の時に、ある要求を頭の中へ直接うるさいほどに何度もかけてきたのであった。
その度に断っているのだが……それはまだ諦めていないようである。
さて、その今も引き続き翔真の頭の中に直接呼び続けている相手とはーー闇を司る天獣『閻魔天』である。
『余の呼びかけに返事をしてくれまいか、マスター?』
と閻魔天が頭の中へ声をかけたが、引き続き翔真は無視し眠りに必死につくことを頑張っている。 そんな主人の無視に、遂に閻魔天はいじけてしまった。
『…………仕方ないではないか、先の今までの戦いで風天、水天を召喚して共に戦ったと聞き、余はいてもたってもいられないのである。その矢先に、マスターにまた新たなこの人間たちの学び舎に潜む敵へ戦うと分かった途端、今度はその戦いに余を召喚してくれと頼んで何が悪いか! 答えよマスター! 余は再びマスターとともに戦いのだ! この気持ちがなぜ分からんのだ!』
(あぁぁぁぁ、うるせぇぇぇーー!)
頭の中へ直接話しかけているので、全く就寝につけない翔真は遂に爆発。 もはやここ最近で連日に続くこの天獣からのしつこい要求を何とかしないとダメだと答え出した翔真は、
(分かった、分かったから! 戦いになったらクロマを召喚してやるから! だから今は眠らせてくれ! わかったか!?)
閻魔天に名付けた名前で、そう命じた。
『っ! うむ、承知した!』
そしてクロマは主人のその言葉に、満足といった声で承知したのだった。