うえまつさん
なし
「まさあき、まさあき」
店内にかかっている
プロモーションの音かと
おもったら
自分のことだった
まいどのことで
副店長によばれた
1週間にいちどある日
シフトの関係で
かならずそう
店長と副店長がそろうときは
なぜか副店長は機嫌がわるい
はんぱなく
いや
めちゃくちゃわるい
よばれると
決まって
トイレ掃除。
バイトのおばちゃんには言えないから
おれっちがよばれて
外のトイレ掃除をまたやらされたりした
出勤して
今朝やったんですけどね
バイトでも
なめてなくて
床はデッキブラシで
こすったし
便器もゴム手して
モップでこすったんです
もうほんとに
手抜きせずにやったんですけど
しかし、
正直にいえば、ちょっと女子トイレは
引き気味でしたけど
いまだもっても
女子トイレはなれない
汚物処理がいやで
赤い袋がとってもひく
おばちゃん
わらわないで
かわってくださいよと
店内にげっそりしてもどると
いつも思う
店長は生え抜きで
あきらかにできる人
そして若い
昔はヤンキーだったらしいけど
とても丁寧な接客で
あちらの人だったとは
まったくみえない
オーナーも何をかんがえてるんだか
もともといた
40の店長を
降格させ
副店長に
こういうこともあるんだね
そして、その情報は
バイトのおばちゃんの
井戸端話で知った
だから、二人そろうと
降格さんは機嫌がわるいんだ
大学がやすみになって
新学期まで
そうとうあった
怠惰な
そして終わることのない
ぐうたら
パチンコの生活から
ぬけるために
おれっちは
社会人になった
社会人と言ってもバイト、そうバイト
でもきっかけは
なんのことはない
後期試験も終わりになって
入試がはじまる直前。
じょしたちは
さっそうと
長い休みを実家にもどっていき
つれの
学割の申請につきあい
なんか記入しているあいだに
つまらんなあと
思って
手に取ったファイルに
その求人はあった
泣く子も黙る
大手レンタルビデオ店
でも、地元資本がはいっているけど
それにしてもでかい店
よくいくパチンコ屋は
通りをはさんでむかいがわだなあと
思い
なんのことはない
いつもの通勤コースだ
つれもいないし
人生変えてやろと
その場で電話
そして2月中旬から
9:00~17:00のバイト生活となった
結論からいうと
よくまあ続いてる
カレンダーは
あっという間に3月になった
はじめは
パチンコ屋の連中に送ってもらっていたが
やつらの勝負は8:30現着で
うちは8:55についていれば
いいほう
ただっぴろい駐車場を
うろうろしていれば
ゴミ袋をもたされて
掃除の展開に
ええと
勤務9時からなんですけど・・
おいおい
これがうわさの
ブラック企業かあああ
ぶつぶつも言いたくなる
お店は
レンタルと、セルと、書籍で
おれっちは
レンタルに配属になって
おばちゃん1 30代前半主婦1、20代女子の
ローテンションに配属になった
はじめは20代女子の
もとでレンタルのいろはを学んだ
時々セルに出張にいったりもした
うえまつさんは
身長が160cm
おれっちよりも
だいぶひくい
この店でも
3年のキャリアで
もはやベテラン
そして
今までは父さんに送ってもらっていたのが
わたしが入社したころ
免許をとった
車も、軽を買ってもらった
そんなこんなで
うえまつさんが
わたしの送り迎えをしてくれることになった
大学のバス停にまっていると
カノジョがやってきて
おれっちをのせてくれる
昼の休憩時間は
ほかの人は弁当やらパンやら
たべるが
いつもおれっちは食パンに
サラダをはさんだもの
食パンを週に1回買って
あとは毎日サラダを買う。
野菜不足を心配している
おれ
まあ時給もふんだくられて
650円しかもらえなかったからな
ほんとうはすぐあげるって副店はいったんだけど
うえまつさんのいえは
しらないけど
昔からの市街地
大学の先の本町のようだった
いがいにお屋敷町
はじめはみんなに驚かれた
「あんたたち、つきあってんの」
みたいにして
そりゃそうだ
まさに同伴出勤
だれだって驚く
でも
うえまつさんは善意だったろうし
もしかしたら
若葉マークで
なんかあったらとおもって
なんじゃないかと
運転の時だけ
きりっと
メガネをかけるうえまつさんを見て
そう思った
そんなこともあったし
CD、DVDのレンタルは
奥が深くておもしろかった
なし