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夕暮れの商店街を二人は歩いていた。時間帯的にもみて、一番の賑わいをみせる頃だろう。
「金曜だしな」
「え?」
「こっちの話。気にすんな」
そう。と、そっけなく返事を返すルカ。
当たり前の話しだが、ケイスの両手は買い物袋で塞がっている。いわゆる荷物持ち役である。
「…にしても、ちと多いな」
普段の1.5倍近くのそれらは、確実に彼の体力を削っていた。
「文句言わないの」
「言いたくもなる」
「…休む?」
「イエス」
即答だった。
商店街の端は駅になっており、そこには小さな広場があった。発展した町中にあるからか、人通りが激しい。
「はい」
「ん、さんくす」
近くの自販機で買ったジュースを受けとり、ベンチに腰を降ろす。
「……」
「……」
話す話題が見当たらないまま、喧騒にまみれた沈黙が流れる。
「…不思議だよな」
「?」
「人が一人死んだ位じゃ、何も変わらない…それがどんだけ大切な人でも、ほとんどの人にとっては“他人”なんだよな…」
「ケイス…」
「…ま、変わってしまっても困るんだけどな」
グシャリと、空になったアルミ缶を潰す。
「うん…変わっちゃ駄目なんだよね、きっと」
ふわりと笑いかけるルカの顔は、夕陽をおびてるからか妙に色っぽくケイスの目に映った。
「……そ、そろそろ帰るか」
「?そうね」
買い物袋を持ち、立ち上がる。近くの踏み切りを越えて百メートルも歩けばもう家だ。そんなに近いのであれば着いてから休んでも良かったのだろうが、こんな無意味な時間も嫌いではないとケイスは思った。
不意に
「!?」
一人の少女と
「………」
目が合った。
その少女は薄く笑うと、きびすをかえして歩き出した。
「着いて来い」
とも、逆に
「来てはいけない」
ともとらえられる表情をのこして。
「ちょ、ちょっと!キミ!」
見失ってはいけない気がて、ケイスは駆け出していた。
「え?ケイス!?」
後ろから聞こえるルカの声は、しかし彼には届いていなかった。






