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.06


夕暮れの商店街を二人は歩いていた。時間帯的にもみて、一番の賑わいをみせる頃だろう。

「金曜だしな」

「え?」

「こっちの話。気にすんな」

そう。と、そっけなく返事を返すルカ。

当たり前の話しだが、ケイスの両手は買い物袋で塞がっている。いわゆる荷物持ち役である。

「…にしても、ちと多いな」

普段の1.5倍近くのそれらは、確実に彼の体力を削っていた。

「文句言わないの」

「言いたくもなる」

「…休む?」

「イエス」

即答だった。


商店街の端は駅になっており、そこには小さな広場があった。発展した町中にあるからか、人通りが激しい。

「はい」

「ん、さんくす」

近くの自販機で買ったジュースを受けとり、ベンチに腰を降ろす。

「……」

「……」

話す話題が見当たらないまま、喧騒にまみれた沈黙が流れる。

「…不思議だよな」

「?」

「人が一人死んだ位じゃ、何も変わらない…それがどんだけ大切な人でも、ほとんどの人にとっては“他人”なんだよな…」

「ケイス…」

「…ま、変わってしまっても困るんだけどな」

グシャリと、空になったアルミ缶を潰す。

「うん…変わっちゃ駄目なんだよね、きっと」

ふわりと笑いかけるルカの顔は、夕陽をおびてるからか妙に色っぽくケイスの目に映った。

「……そ、そろそろ帰るか」

「?そうね」

買い物袋を持ち、立ち上がる。近くの踏み切りを越えて百メートルも歩けばもう家だ。そんなに近いのであれば着いてから休んでも良かったのだろうが、こんな無意味な時間も嫌いではないとケイスは思った。


    不意に


「!?」


   一人の少女と


「………」


目が合った。


その少女は薄く笑うと、きびすをかえして歩き出した。

「着いて来い」

とも、逆に

「来てはいけない」

ともとらえられる表情をのこして。

「ちょ、ちょっと!キミ!」

見失ってはいけない気がて、ケイスは駆け出していた。

「え?ケイス!?」

後ろから聞こえるルカの声は、しかし彼には届いていなかった。

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