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放課後。解放感と喧騒に満ちた教室は、不思議と混沌としてはいなかった。
「今日の帰りは夕飯の買い出しするからね」
朝食の時にルカがそんな事を言っていたのを思い出す。クラスが違うからしばらくここで待っていればあっちから来るか、何かしら連絡が来るだろうとふんだケイスは椅子に座ったまま、ダラダラと帰り支度を始めた。
教科書類の殆んどをそのまま机に残しているので、持って帰る物は自習用の筆記用具とかノートくらいだ。支度を終えたケイスは、ポケットから携帯を取り出し適当にネットサイトを見て渡る。
「………」
「………」
上からの視線。見下ろす様に、ジッとみている。いつの間にか目の前に立っていた彼女は、別に話すわけでもなくそこに立っていた。
「…………………」
「………あのさ、用があるなら話してくれないと、此方としても対処のしようが無いのだが…」
「…はぁ」
なんと言うか、独特の雰囲気を持った少女だと思う。クラスメイトの大高サヤだ。
「用があると言えば有るかも知れませんが…多分、今は有りません」
「どっちだよ」
「有りません」
「…あ、そう」
もう一度携帯に目を移す。メールが一件届いていた。
『シタニイル』
ルカだ。何故にカタカナなのか非常に気掛かりだが、あえて伏せておこう。
「…じゃあ、俺は帰りますんで…」
「はぁ、さようなら」
イマイチ会話が成り立たないまま、ケイスは教室を後にした。途中、ダイスケが何やらわめいていた様だったが、とりあえず無視した。