破月.12
そして、光の柱が天を突いた。
―Blood*Beat―
反動を空中で受け止めた身体が、コンクリートの床に叩き付けられる。堅い感触が背中を痺れさせた。
〈チッ……外したか!〉
悪態をついたアガートラームが、再び炎をその刃に宿らせる。
「な、何だよさっきのは!?」
〈言ったろう? 『レヴァンティー』と〉
得意げな口調が勘にさわるが、見たところ飛び道具である事は間違いないらしい。
上空から投げ付けられたバイアネットを、転がりながら避ける。起き上がった所を再び狙われたが、半歩踏み込みを入れてかわした。
「クソッ! 上からじゃ狙い撃ちされっぱなしだぞ!?」
苦し紛れに床に刺さった剣を放つが、当たる寸前で霧散する。恐らく自分の能力をコントロールしているのだろう。
〈ふん。ならば左腕で引き摺り降ろさんか!〉
「んな事、やれたらとっくにケリ着いてるっての!」
ジクリと、一瞬だけ左腕が疼いた。コイツも自らの意思が有るっていうのか?
「使え……って事かよ」
一層強く脈打つ左腕。俺は再び『鞭』のイメージを固める。
「行けぇッ!」
降り注ぐ刃を打ち落としながら、鞭はまるでロケットのように上空の女に走る。
「散ッ!」
握った手を開くように、鞭を放射状に広げる。そこから更に相手を取り囲む様に、幽閉する様に鞭を走らせる。
(まだだ……ッ! こんなんじゃ直ぐに破られちまう!)
イメージをもっと鞏固なものへと昇華する。形作るのはキューブ。密度を上げ、四肢の動きを封じ、更に剣を錬成させる空間を埋める事により、攻撃手段を奪う。あとは、『必殺の一撃』を食らわせだけだ!
〈……オイ。一つ言っておくが、我は汝の考えてる様な物では……〉
何か言っている様だったが、構ってたら集中が乱れてしまう。そう、あと少しで完全に束縛出来るんだ……あと、もう少し……
「よしッ! 捕った!」
まるで巨大なコンクリートブロックの様になった血塊。その中心を貫通するように空いた空洞には、四肢の自由を奪われた身体があった。
「オイ! 動き止めたぞ!」
〈おのれ……話を聴かんのも兄弟そろってか!?〉
そうぼやきながらも、右腕はしっかりと標準を定めている。
〈汝も覚悟を決めろよ!? アビリティーブレイカー……シュートォォォッ!〉
衝撃と閃光が、赤黒い血塊と、夜の闇と月明りさえも蹂躙した。