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破月.11

〈まずは相手の動きを止める事だけを考えろ!〉

「応ッ!」

 相手の間合いと自分の間合いは、武器の差を考えると相手の方が有利だ。しかし、手数や射程、そのハンデをゼロにする程のパワーをこちらは持っている。

「……なら、おもくそぶん殴ってカチ上げるまでッ!」

 霧散させた血液をカタパルトにして加速する。全身を押す力は相当の物で、少しでも加減を間違うと身体を串刺しにされてしまいそうだった。

 一呼吸で距離は十から零になる。俺はタックルのインパクトと同時にサイドステップ。反撃を予測して行った行動は、どうやら読まれていたみたいだった。案の定、大剣を盾にした彼女は無傷。手には銃剣(バイアネット)。こちらの着地と同時に、ノーモーションからの射撃。

〈これ以上離れては彼奴のペースだぞ!〉

 頭に響く声。俺だってそのくらいは承知のうえだ。

「はっ。なら、壁ごとブチ抜くぜ?」

 絶え間なく、的確に撃ち放たれる銃剣を、距離を離さないように避ける。避けながらも、俺は次の攻撃の準備にかかる。

 血風を操るうちに理解した。ようは『イメージ』だ。速く翔けたいなら、加速すればいい。当てられたくなければ、打ち払えばいい。そのために『力を利用』する。

 そして『貫くイメージ』。

〈くっ……おい! まだか!?〉

 悪態を吐く右腕。というのも、俺が意識を左腕に集中させると身体の動きが止まってしまうため、その間は右腕に身体を預けていたのだ。

「……よし。OKだ」

 迫る刃を右腕が払いのける。盾の形をしているのは伊達じゃないらしく、その硬度は高いようだ。一瞬の隙をみて、再度加速。左腕は手刀を作り、さらにイメージを固める。

「オオォオオッ!」

 三本の鞭を手刀に、そして腕にまで絡め、一本の突撃槍を作る。更に血風を纏わせ、超高速で渦巻く。

「貫けェェエッ!」

 熱量×加速度×集中加重。衝突する大剣とドリル。火花を散らしながらも、ゆっくりと大剣は削られて──

「ッ!?」

 上空から迫る殺意を、寸でで回避する。

〈……まぁ、これだけ大きな隙を作ったのだからな。仕掛けてこない道理が無い〉

 大剣を目隠しにして、その瞬間に跳躍。俺の隙だらけの背中目掛けて切りかかったという訳か。

「くそう。動くなよ……」

 結局振り出しに戻ってしまった。

「とりあえず動きを止めろ……か」

 手っ取早く、四肢をもいでやりたいが、そんな隙があるワケがない。

「簡単に言ってくれるよ……なッ!」

 一撃で済ませられないなら、連撃を食らわせている最中に隙を見付けるしかない。

「アアアッ!」

左腕の一撃をまたも大剣に抑えられる。今度はサイドではなく、上空へ跳び、蹴りを放つ。相手を確認する前に出した蹴りは、大きく空を切った。

〈上だ!〉

「ッ!」

 目で確認するよりも速く、三本の鞭を走らせる。一息で切り伏せられる鞭。鋭い痛みに目が霞みそうになるが、攻撃の手は休めない。俺は更に槍状にした血風を放つ。今度は無理な体制から放ったせいか、狙いが大きくそれた。

〈ええい! 使えないヤツめッ!〉

「なら、何かあるのかよ!?」

〈ふん。見くびるなよ!?〉

 上空に居る相手に向かって振り上がる右腕。

〈『銀鍵解放』!!〉

 バキンと音を立てて割れる盾。まるで両開きの扉のように開いたそこから、仕掛ナイフよろしく飛び出す刃。

「これは……剣!?」

〈否ッ!〉

 更に盾の両脇から、今度は折り畳みナイフのように現れる二本のレール。そしてそれは中央に現れた剣を固めるように重なる。

〈これぞ我が真髄その一柱。砲撃鍵『レヴァンティー』!〉

 『魔を焼く焔』と呼ばれたその砲身は、白い炎を燃え上がらせ、月を背にした怪異を捕らえた。

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