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午前二時。
深夜の闇のなか、自分の飢えを補うかのように少女は“何か”をむさぼっていた。這いつくばる様な姿、それはまるで獣だった。
─グジュリ…ズブ…クチャ…─
「…足りない…」
“返り血”を浴び紅く染まるのも意にかいさず、彼女は“人だった”物を喰らう。
「…やっぱり…彼を…彼の“力”を…」
ゆっくりと立ち上がり、頭上を見上げる。その表情は想い人を想う乙女の表情。愛惜しい、愛惜しいという感情がありありと伝わる。
ただ一つ、その想いが誰へ向けられているモノなのかは、彼女以外、誰一人として知るよしもない。
そして、この少女こそが事件の主犯者だという事も…
-Blood*Beat-
目が覚めると、そこは見慣れない部屋だった。
(…ここは…?)
辺りを見渡す。見慣れない、いや、そこは何度か来たことがある部屋だった。
(そうか…ルカんちか…)
昔、二人でよく遊んだ紅葉家の空き部屋。まさか自分の部屋になるとは、幼い頃は思いもしなかっただろう。
(“もう”こんな時間か…)
枕元にあるアナログ時計を見ると、六時を指していた。
(…あ…メシ、もう作んなくていいんだっけ…)
いつもなら兄のために早起きして用意していた朝食も、今は必要ない。手持ち無沙汰な感覚を覚えながら、ケイスはもう一度布団に潜った。
(…もう少しだけ寝よう…)
霞んでいく視界のなか、ケイスはちいさな人影を見た気がした。