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─視点[ケイス]─
「ここは…」
『硝子の牢獄』。そんな言葉が浮かんだ。それは見えるだけで、触れることは許されないからだったと思う。
俺=僕は洋館の一室に立っていた。古ぼけた、冴えない部屋だ。
見覚えは無い。初めて見る場所だ。間違いない。
室内を見渡す。
ソファー、テーブル、机、ランプ、椅子、本棚、蓄音機、譜面…隅に寄せられた楽器たち。多分、作曲家の部屋だろう。
───√………
と、蓄音機が勝手に動きだした。聴きなれない、重く、ゆったりとしたメロディーが響く。
(…詩が無い?)
という事は『音楽』だろう。唄の作曲ではなく、あくまで音楽家な訳だ。
俺<僕は蓄音機に近付いてみた。楽器とはまた別の、隅に置かれた棚にそれはある。
ゆっくりと回る黒い円盤。僕は手で回転を停め、円盤を手に執った。
『Resistance』
タイトル覧にはそう書かれていた。
─閃光─
次の瞬間、俺>僕は別の“空間”に居た。
白い空間だ。
ただ、宙には沢山の黒い円盤(あの洋室にあった物、もしくは同種の物だろう)が浮いている。
目の前の一枚。さっき見た『抗う者』だ。それに触れようと手を伸ばす──
─暗転─
Blood*Beat
ケイスはゆっくりと瞼を開けた。
「…おはよう」
傍らに座っていた少女。ルカは、瞳を潤ませながら、振り絞るように呟いた。