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「そこまでにしておきなさい」
距離はあったが、少女の声はしっかりとケイス達の耳に届いた。
「ひはひへほ(痛い目を)…見ますよ?」
右の銃のスライドを口にくわえて、それを引く。カシン、と小気味よい音を響かせ、銃口を白い少女に向けた。
「狗め…」
「狗だから何だと言うの?私の気が変わらないうちに失せなさ…」
直後、鋼の噛み合う音。ほぼ瞬間移動に近い動きで斬りかかる少女。
「…引く気は無さそうね」
「貴女の方こそ、御引取り願おうかしら?」
その斬撃を、エモノを交差させつつ受けとめる二挺拳銃の少女。ギリギリと、鋼が擦れる音が響く。
両者が弾け合うように跳躍する。好機とばかりに、二挺拳銃の少女は銃口を向けた。
「豆鉄砲なんて、距離をつめればッ!」
再度、超高速で切りかかる剣使い。今度は、銃をトンファーの要領で逆手に持ち替え、一挺で受ける。
「…豆鉄砲がどんなモノか解っても…そんな事が言えるかしら?」
剣を受けた銃のグリップ裏。マガジンの底から青白い光がはなたれる。それは一瞬のうちに銃全体に走り、銃口に集まる──
「ッ!?」
と、次の瞬間。その光は白い少女の剣へと"移った"。まるで、化学反応を起こしたかのように光は狂暴になり、赤紫の光を放ちながら少女の身体を焼くために刃を伝い、走る。
閃光、炸裂、衝撃。
まるで、爆弾が爆発したようだった。
ギリギリの所で、爆弾と化した剣を手放した少女は、二挺拳銃の少女“大高サヤ”を射殺すように睨んだ。