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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

6匹の蟻

掲載日:2025/10/25

学校の中庭には、蟻の巣がありました。珠ちゃんは、そこに座り込んで、蟻をじっと見ています。トコトコ列をなして歩く姿が、とても可愛らしくて、いつまでも見ています。蟻もまた、珠ちゃんを見てくれているような気がします。

「やーい、珠美がまたアリンコと話してるぞー」

「やだ、気持ち悪〜い」

そんな珠ちゃんを、周りのみんなはいつも揶揄します。誰かが、珠ちゃんに石を投げつけました。

「痛い!」

「当たった!やーい死ね死ね!」

珠ちゃんは、それでも、蟻を見続けました。

「いつか、ありさんだけの世界になったらいいのにな」

珠ちゃんがポツリと呟きます。蟻だけが、珠ちゃんの唯一のお友達です。お母さんが死んでからは、特に、毎日蟻とお話をしています。そんな珠ちゃんにとって、蟻は大事な話し相手でした。


「あっ」

蟻が見えにくいなと思ったら、辺りはすっかり暗くなって、誰もいなくなっていました。珠ちゃんは、蟻を見ていると、他のことが気になりません。だから、帰りが遅くなることはよくあります。だけど、こんなに暗くまで見ていたのは初めてでした。

「暗いよ、怖いよぅ」

珠ちゃんは、急に闇の中にいて、独りぼっちで、とても怖くて泣いてしまいました。でも、学校には誰もいないし、誰も珠ちゃんを探しには来ませんでした。

「ありさん、まだ起きてる?」

珠ちゃんは、見えない蟻に声をかけました。返事はありませんが、きっとそこにいるはずです。そのとき、雨が降り始めました。真っ暗な中庭に、バチバチと雨粒が落ちる音が聞こえます。

「だめ!ありさんが死んじゃうよう!」

珠ちゃんは、手探りで巣を見つけて、その上に覆い被さりました。十月の雨は、寒くて冷たくて、珠ちゃんの体力をみるみる奪っていきます。そして、珠ちゃんは雨の中、とうとうその場で眠り込んでしまいました。


ふわふわ、夢見心地の中、誰かの呼ぶ声がします。

「珠ちゃん……珠ちゃん」

珠ちゃんが、目を擦って見ると、そこには蟻が1匹いました。

「ありさんだ!無事だったんだ!」

「うん、他のみんなは流されちゃったけど、巣穴にいた子は、珠ちゃんのお陰で無事だったよ」

珠ちゃんはびっくりしましたが、さっきの声の主は、なんとその蟻でした。

「ありさん!お話できるの!」

珠ちゃんは、寝転がったままだけど、飛び跳ねたいくらい喜びました。

「珠ちゃんは、僕たちのお友達だから、お話しできるのは当たり前さ」

「うん、お友達!」

珠ちゃんは、蟻にお友達だと言ってもらえて、とても嬉しい気持ちになりました。珠ちゃんが、もっと蟻とお話ししたいと思っていると、蟻は、真剣そうな顔で言いました。

「珠ちゃん、実はお願いがあるんだ」

「お願いってなあに?」

珠ちゃんは興味津々で聞きます。蟻は続けます。

「僕たち蟻は、小さいから、僕たちの力だけじゃ、人間に勝てない。だから、大きくなりたいんだ」

「でもどうやって?」

すると、巣穴から出てきた蟻が5匹、珠ちゃんの体を這って登り始めました。

「やだっ、くすぐったいよう!」

珠ちゃんは、大好きな蟻がくっついて来たから、くすぐったいけど、とても可愛く思いました。そして、最初の蟻も、珠ちゃんの体を登り始めました。そして、鼻の頭まで来たとき、こう言いました。

「珠ちゃん、珠ちゃんの体、食べさせてね」


次の日、珠ちゃんは、出席しませんでした。

「お、今日はアリンコ休みか」

「臭いから嫌い」

「あんな子、死ねばいい」

そのときです。廊下の方から、ドタドタと音がしました。みんなが驚いて、ドアの方を見ると、そこには、巨大な虫らしきものが覗いていました。その姿を見て、みんなは恐怖に震え慄きました。それは、2メートル程もある、巨大な蟻だったのです。

「ギャア!」

みんなが悲鳴を上げた瞬間、その巨大な蟻は、教室へ入り込みました。そして、すごい速さで生徒を一人喰い殺しました。そして、また一人と、次々に捕食していきます。

「嫌だ!死にたくない!」

教室中は大パニックです。

「大変だ、あっちのドアから逃げるぞ!」

みんなは教室から逃げようと、もう一方のドアの方へ走ります。しかし、教室を出ようとした瞬間、巨大な蟻はお尻から体液を分泌しました。

「クソっ、目が!」

「いやん、何も見えない!」

強力な蟻酸です。

「ゴミが!アリンコの分際で!死ねよ!」

「そうよ!蟻地獄に堕ちろ!」

視力を失った生徒たちは、必死に蟻を侮蔑しましたが、終いには頭を喰われ、足を喰われ、無惨に殺されました。そして、1分も経たないうちに、クラスの全員が食い殺されてしまいました。

「さて、後は何室残ってる」

巨大蟻は、凄い速度で次の教室へ向かい、同じ様に全員を食い殺しました。


他の階でも、巨大蟻が、生徒を食い殺しています。総勢6体。1年生から6年生の教室まで、各学年に1体ずつ、それぞれの学年の生徒を駆逐していきます。生徒たちは、その蟻の巨大さと、動きの速さになす術もなく、とうとう、学校中全ての生徒が、巨大蟻の餌になりました。全ての生徒を食い殺した後、巨大蟻の1体が、最後の一口を飲み込んで、こう言いました。

「珠ちゃん、これから、蟻だけの世界を築いていくからね」

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― 新着の感想 ―
さ、サンダー! 楳図か〇お先生の画風で想像しながら拝読しました。
善意の表し方が物騒……。  家族を亡くした寂しさを蟻との触れ合いで紛らわす子に、慈しみはおろか同情すらせず、侮辱や加虐ばかり行って、珠ちゃんの寂しさと蟻への悲しい依存を加速化させた輩への報復、なんです…
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