婚約破棄の危機・後編
誤字脱字日本語がおかしいなどあまり気にしないでいただけると嬉しいです。
・前回までのあらすじ
国王によって婚約が破棄されていようとしている
セシリアとアルヴィン!!!
セシリアはそれを受け入れようとするが、
アルヴィンは未練たらたらなまま、セシリアを引き止めることができるのか!!?
ここで、フィーネさん!一言どうぞ!!
「だから、なんかデジャブなんだって!!!」
では、本編をどうぞ!
「陛下!!」
アルヴィンの声が謁見室に響く。
「私は、セシリアとの婚約破棄など致しません!!」
「だが……」
「余命わずかな者と結婚する気か……?」
国王が重たく言葉を返す。
(それでもーー、彼女と一緒にいたい)
そう、言おうとした。
その瞬間ーー
「殿下」
セシリアの高い声が静かにその言葉を遮った。
「もう……私のことはお忘れください。
私は、もう、殿下を愛しませんので」
言葉の意味がすぐには理解できなかった。
(……………え?)
アルヴィンの思考が止まった。
(今、なんて……)
アルヴィンの手が僅かに震えた。
「ですから、婚約の件、謹んでーー」
(馬鹿ですか殿下!!このまま行くと、
セシリア様との縁がーーー)
レオンが慌てて口を出そうとしたその時だった。
「陛下」
重く、しかしそれとは裏腹に柔らかな声が
場に響いた。
その声の主は、アルヴィンの兄であり、
アーネントの婚約者のユーライ.ルクレイルだった。
(ゆ、ユーライ様!?どうしてここに……)
セシリアが疑問に思っているのも束の間、
ユーライが口を開いた。
「婚約解消には私も賛成ですが……
なんのお詫びもなし、というのはあまりに
不誠実なのでは?」
「……それも、そうじゃのう…」
「ですから、私達の妹であり、
この国の第一王女であるリリアナ.ルクレイルの
侍女にセシリア嬢を推薦したいと考えます」
(第一王女様……!?あの有名な……)
セシリアは頭の中で情報を整理した。
王宮は、実力至上主義だ。
もちろん貴族であることも重視されるが……
どれだけ高貴であっても頭がいる。
逆に平民であってもずば抜けた才能があれば
雇ってもらえる。
そういう場所ではあるんだけれど……
王族直属の従者はその両方が必要となる。
血筋、気品、才能などの能力はもちろん、
家族構成や借金の有無、さらには過去の噂まで
洗いざらい調べられ、ようやくなれる役柄だ。
(……そんな大事な役目を、私が……?)
その時、セシリアの思考を陛下の低い声が遮った。
「ーーよかろう。
セシリア嬢、この話受け入れてくれるかの?」
(婚約破棄の件も、侍女になる話も、今の私にとって
悪いことは、ひとつもない……)
「全て、謹んでお受けします」
その声が、嫌と言うほど部屋に響いた。
(殿下は、どんな顔をしているだろうか……。
今まで疎んできた私と離れられて嬉しいかしら……
それとも、いつもと同じように無表情かしら…)
気になる。
けれど、見たくない。
見てしまったら、終わってしまう。
自分でも矛盾しているとわかっている。
自分が終止符を打とうとしているのに、
王子様への恋、物語みたいな、小さい頃の思いを
終わらせようとしているのに……。
すると、お父様が口を開いた。
「話は終わったようですね。我々は失礼します。
侍女の件は後日連絡を」
フィーネとお父様が次々に立ち上がりドアへ向かう。
私も遅れまいと急いで立ち上がった。
(そう、これでいいのよ……。
王子様との恋は、もう終わり)
私は、その時もアルヴィン様の顔が怖くて見えなかった。
馬車に向かっている途中も廊下は嫌に静かだった。
父様とフィーネがなにやら話しているようだが、
耳がまるで曇っているかのように音を通さない。
そうこうしているうちに、もう馬車に辿り着いてしまった。
周りには普段と同じように赤い薔薇が咲いていた。
これで終わる。
これでアルヴィン様の婚約者としての役割は終わる。
すると、後ろから低い声がした。
「セシリア!!待ってくれ!!」
昔、あれだけ欲しかった声が今は、遠く聞こえる。
「殿下……っ」
「セシリア……私はーー!」
「殿下……」
ゆっくりとスカートを持ち上げる。
王妃教育で何回もしたこと。
この人はそんなこと興味ないんだろうけれど…。
「今まで、ありがとうございました。
ーーさようなら」
その言葉に、アルヴィンの喉が震えた。
そんな気がした。
アルヴィン様が何か言っていたような気がしたけれど
その言葉は風にさらさらと流されていった。
馬車の扉が、静かに閉まる。
車輪が転がり始め、王宮が遠ざかっていく。
中庭にはいつも通り赤い薔薇が咲いていた。
太陽の光を浴びてまるで燃えているようで、
目が腫れていくようでとても痛かった。
(これが正しいの……これでいいの……。
あの人に私は釣り合わない。
あの人には…もっと綺麗で優しくて誰にでも
愛される人が………)
じゃあ、もし……もし、あの人の隣に、
誰かが立っているのを見たら……。
(私…どんな気持ちになるんだろう……。
自分から切り離しておいて…馬鹿だなぁ…私…)
思わず涙が溢れてきそうになって
それを止めるので精一杯だった。
「殿下、国王陛下からご報告が」
「父上から……?」
第一王女、リリアナの高く縛り上げられた黒髪が
ゆっくりと揺れた。
そこに、側近のタリアが書簡を差し出した。
「何これ……?報告なら第二騎士団に回してって
言ってるのに……」
「いえ、新たな深窓のご令嬢をご用意されたとの
ことです」
「……またか…。父上も本当に飽きないな……」
リリアナは肩をすくめ、書簡をパタンと閉じた。
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