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逃亡と冷たい妹

誤字脱字日本語がおかしいなどあまり気にしないでいただけると嬉しいです!


「ととと、とにかく!!絶対婚約破棄しますから!」

珍しく張り上げられた声にアルヴィンは目を見開いた

「どうしてだ…?そんなに私が嫌いか?」

(言えない……もうすぐ死ぬからだなんて…)

そして、セシリアは苦し紛れに口を開いた。

「そっ、そうですよ!アーネント様が好きな殿下なん て、とても一途だとは思えませんもの!!」

空気が一瞬静まり返った。

アーネント様ーー

第一王子の婚約者で美人で才女と名高い人。

第一王子のユーライ様が側室との子だったから

王太子妃には選ばれなかったけれど正直、私は

あの人が次期王妃に相応しいと思っていた。

だからといって……

嘘だとわかりきっている噂を言ってしまったぁ!!

そう、何年も前に流行った噂!!

アルヴィン様は実はアーネント様が好きなんじゃないかという噂……。

正直、信憑性はないけど!!

もう、こうなったらどうにでもなれ!!

アルヴィンはポカンとした顔でセシリアを

見つめーー、首を傾げた。

「私は、貴方以外を愛したことはないが?」

「……ん?」

「確かに友人ではあるがーーアーネントは兄の婚約者

 だ。恋愛感情を抱いたことはない」

「うそぉ……」

思わずセシリアは崩れ落ちそうになった。

なに?今になって今更愛の告白されましても!!

もう、婚約破棄するって決めたしーー

というか、余命2年半だし……。

遅いのよ!!色々!!

というか、あれが本心なら今までなんで冷たかったの!?頭が痛い。いや、でも本心って確証はない。

やっぱり殿下は公爵家の勢力がーー


「も、もう帰ります!!疲れました!!

 あと!絶対に婚約破棄しますから!!絶対に!!」

もう、何もかも、限界だったのかもしれない。

余命だとか、妃としての責務だとか、

想いを伝えることすらできないこの状況だとか。

「セシリア、待て」

低い声が私の耳元に響く。

昔、欲しくて欲しくてたまらなかった声。

「待ちません!!」

半ば意地になりながら、鬱陶しいドレスの裾を持って

ドタドタと階段を降りて行った。

途中、驚いた顔をした侍女たちと目が合ったが気にしている場合ではない。

私は、待機していた馬車に早々と飛び乗った。

「公爵邸まで!!早く!!」

あーもう、何なのあの人!!

でも、もう、生きられない私があの人の未来を

縛り付けるなんてーーあってはならないこと。

そうよ。これで正解なのよ。

これで、余生を楽しく過ごせるわねーー。



なんて思えていた自分が妬ましい。

何でそう思うかって?それはーー

〈10分前・アルスデット公爵邸〉

「フィーネ!!」

「な、何!?お姉様。すっごく顔色悪いけど…」

優雅にお茶をしていた金髪に紫色の瞳の美少女。

私の妹・フィーネ.アルスデット。

「ねぇ!!あなた……アルヴィン殿下のこと、

 嫌いじゃないよね!!?」

突然の問いかけに一瞬フィーネは目を見開いたが、

次の瞬間、顔をしかめてドンっと机を叩いた。

「はぁん!?冗談じゃないですよ!!あんなクソ野  郎、好きなわけないじゃないですか!!」

「く、クソやろう……?」

「そうですよ!!姉様という素晴らしき人がそばに

 いるっていうのになんだよあの態度は!!!

 あの塩対応!!なに!?高嶺の花ムーブ!?

 拗ねらせてんのかよこのクソ野郎が!!」

(あ……これは、、無理ぽ)

「ま、まぁ、落ち着いてーー」

(こんな状態で余命宣告されたから婚約変わってなんて

言えるわけないーー。言ったとしてもフィーネの怒りが殿下に向かうだけ……。あぁ、もうどうしよ)

その時だった。

突然ドアの方から轟音が響いた。

そして、ドアから父ーーアルスデット公爵が

突進してきた。

「セシリアぁあぁあぁああっ!!!」

「よっ余命2年半ってほんとか!?!?」

「ぶふぉおおーー」

案の定、フィーネが紅茶を吹き出した。

「ね、姉様!!!余命ってーー」

「ちょっ、な、なんでお父様は知ってるのーー!?」

「王宮から報告があったんだよ!!

 というか、親になんで黙ってるんだ!!?」

「………すみません……」

セシリアは小さく縮こまった。

「は、はい…。私の聖神力は祝福ではなくて、、

 命を削ってできてて……」

心配をかけたくなかった。驚かせたくなかった。

悲しませたくなかった。困らせたくなかった。

だから、バレたくなかった。

でも、今この屋敷に響いたのは 

悲鳴でも、後悔でもなく怒りと愛情だった。

「バカかぁああっ!!!もっと、さっさと言わんか  い!!!」

「姉様ぁあぁああっ!!ほ、本当になにそれ!?

 最悪!!最悪なんですけど!!

 どうして誰も教えてくれなかったのよ!!?」

父もフィーネも、こんなに怒って心配してくれて。

本当にーー温かい。

心の中がじんわりと熱を浴びていくのが感じられる。

その時、涙がこぼれ落ちた。

「ご、ごめんなさい……ほんとうに……ごめんなさい」

悲しみのような怒りのような感情で声が震える。

すると、父がそっと頭に手を置いた。

「次からは、ちゃんと言うんだぞ……」

「こんな報告に次はいりませんからぁ!!」

あぁ、本当にーーいい家族を持ったな……。

セシリアは束の間、家族の温かさの中で過ごした。

一件落着……

と、その時ーー。

「だから、殿下が好きかだなんて聞いてきたのね…」

フィーネがふとつぶやいた。

セシリアの肩がびくりと揺れた。

確かに……聞いたけれど……

やっぱり私はまだーー

「はぁぁあああぁっ!!?」

アルスデット公爵の怒号が響いた。

「今まで散々冷遇してきておいて、まだ、この余命わ ずかな娘をいじめたりないのか!!!??あのクソ 王太子がぁああっ!!!」

「ち、違うの!アルヴィンはそんな人じゃーー」

「いい!!安心しろ、セシリア!!

 パパが直談判してくるからな!!!」

「えっ、ちょっ!」

止める間もなく公爵はマントを翻して部屋を出て行こうとしていた。

「ちょっっ、待て待て待て!!待って!!!ダメ!」

セシリアが慌てて立ち上がり父の腕を掴む。

「ここまで我慢してきたんですから!今、余計な

 波風を立てたら……」

そう言った瞬間、父の顔に怒りと困惑と泣きそうと言わんばかりの感情が写し出される。

「セシリア……」

「大丈夫よお父様。私は、別にーー」

言い終えるその瞬間……


ーーコン、コン。


扉が規則正しい音を立てた。

「……誰…?」

フィーネが眉をひそめながらドアを開けた瞬間ーー

「……失礼する。セシリアはいるか?」

見慣れた背の高い人。

流れるような黒髪にサファイアのような深い青の瞳、

凛とした低い声、歩くたびに響く靴の音、

「あ、アルヴィン…様……?」

(ど、どうして今ここにーー?)

セシリアは目の前にある光景が信じられず、

部屋の中には少しの静寂が走った。


最後までお読みいただきありがとうございます!

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