小さな灯り
夜の公園のベンチに、古いランタンがひとつ置かれていました。
通りかかった少年が拾い上げると、ふっと柔らかい光が灯ります。
「おかえり」
ランタンの中から、声がしました。
驚いて耳を澄ませると、ランタンは続けます。
「僕は道に迷った人の灯りになるんだ。君も迷ってるのかな?」
少年は少し考えてから、うなずきました。
学校のこと、友達のこと、家のこと。
うまくいかない気持ちを、言葉にできずに抱えていたのです。
ランタンは静かに光を強めました。
「大丈夫。暗い道を歩くときは、明るさは小さくてもいいんだよ。足元が見えれば進めるだろう?」
少年は思わず笑ってしまいました。
不思議と心の中の霧が、少し晴れた気がしました。
やがてランタンの光はすっと消えます。
手の中に残ったのは、あたたかいぬくもりだけ。
次の日も、その次の日も。
少年はふと迷いそうになると、胸の奥にある小さな灯りを思い出しました。