詰みセーブ
ある日、女神は一人の少年にチートスキルを備えて転生させた。
そのスキル名は『セーブ&ロード』。
名前の通り、どこでもセーブをしてロードをすることが出来るのだ。
これによりあらゆるゲームで見られる『勝つまでチャレンジ』が出来るようになる。
言うまでもなくこのスキルは反則そのものだ。
何せ、諦めない限り絶対に負けない力なのだから。
「さて、あの子はどう暮らしているかな?」
そして女神は少年を探して見つけた。
「うっわ……何してんの。あの子……」
少年はとあるボードゲームにハマっており、同年代で最も強い少年と戦っていたのだ。
だが、彼は一体何度『ロード』をしたんだろうか。
目は血走り、脳はとっくに焼き切れている。
「ねぇねぇ」
女神が話しかけても少年は気づかない。
どうやら必ず勝つと決めており、それ以外の事には意識が割けないらしい。
「えぇ……ねぇ、聞こえないの? 悪い事言わないから一回止めなさい。これ、絶対に勝てないタイプの敵だから……」
しかし、それでも少年は反応せずに必死に相手の少年に食らいつく。
いや、食らいつけていないのだが。
どうやらチートスキルを持っているからこそ絶対に勝たなければ……という気持ちになり、挙句にその思いに囚われてしまっているらしい。
女神は大きなため息をついて頭を抱える。
どれだけセーブ&ロードが出来ようとも人間は空を飛べない。
そういうシステムになっているからだ。
つまり、それはどれだけロードしても変わらないことだってあるということだ。
「いや、分かるよ? 相手は同い年の子供なんだからムキになっちゃうのは……だけど、この子だけは絶対無理。勝てないんだから……」
女神の言葉を聞きもせず少年はロードをし直してボードゲームを続けていた。
「先手、2六歩」