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8. 迷子

 ナマケは行くことを決意した。その言葉を聞いてズボラはうんうんとうなずく。それから滑り台のところまで歩いて行った。


「ナマケも行く気になったんだね。俺もちょっと行こうと思ったんだよ」


 グータラは背中を押すようにナマケの肩をポンと叩くと、陽気な感じに滑り台の前まで歩いて行った。


 それから、ふたりはナマケが来るのを待った。10分、20分と経ち、1時間ほど経ったとき、遅いと思ったズボラは振り返った。ナマケは急いで彼らが待っている場所まで行こうとしているが一向に着かない。


 だが、すこしずつ近づいているのはたしかだった。ナマケは必死に彼らの場所まで行こうとして汗をかき始める。


「もうすこしだ。もうすこしで外に出れるんだぜ。がんばれナマケ」


 ズボラは彼の必死さにエールを送った。


「ナマケ、おまえならできる。がんばれー、もうすこしだよ」


 グータラも彼の一生懸命さにエールを送る。


 ナマケは彼らの声援に応えようと歩きつづけ。そしてようやく、ナマケは彼らの前にたどり着いた。


「よーし、ここを滑れば外に出れるはずだ」


 そう言いながら、ズボラは滑り台を滑っていった。グータラもそれにつづく。ふたりは下に着くと辺りを見回した。


「ここがロマンティス城の周辺かぁ」


 草原が広がる中に一本の川が流れている。木が所々にあり、森などは遠くのほうに見え、その先には山もあった。


「俺、初めて来たよ」


 グータラは感動しながら辺りを眺めると近くの木に登り始めた。


「俺もそーだぜ。こんな遠いところまで来ねーからなぁ」


 ズボラはその場に寝そべり片肘を立てた。緩い風がゆっくりと吹き抜ける。そうして1時間が経ち、滑り台からナマケが降りてきた。


「おお、ようやく降りてきたか、じゃあ出発すっか」


 ズボラは立ち上がって歩き出した。グータラも木から降りてズボラのあとについていく。ナマケもそのあとにつづこうとしたがどんどんと離されていった。


 もう追いつけないと思ったナマケは、その場に寝転んで眠ってしまった。


「もうずいぶん時間が経っているから、セカチたち見つからねーかもな」


 ズボラは城下町の門を見据える。そこには様々なケモにんが行きかっていた。グータラは門や塀の高さに圧倒されながら返した。


「そうだね。もうロマン姫を助けたかもね」

「ああ、そうだな。なあ、ナマケもそう思うだろ?」


 ズボラは振り返る。だが、そこにナマケはいなかった。てっきり一緒についてきているものだと思っていたのだ。


「あれ? ナマケがいねーぞ」


 グータラも振り返りナマケを捜したが見つからなかった。


「そうだね。どこに行ったんだろ?」


 ふたりは彼を捜しながらしばらく待っていたが、いくら待っても彼が来ることはなかった。


「しょーがねーなぁ、捜しに戻るか」


 ふたりはあちこちとナマケを捜し歩く。すると、ナマケらしき人物を発見することができた。道端で眠っている彼は紛れもなくナマケ本人だった。


「あんなところにいるぜ」


 やれやれと言わんばかりにズボラはナマケに近寄っていった。グータラはナマケを見て急に疲れ出した。


「俺も疲れたよ」


 グータラはその場に座り込んだ。それから横になった。グータラはナマケの寝ている姿を見てもらい眠りをしてしまったのだ。


「おまえもかよ。しょーがねーな、じゃあちょっと休むか」


 ズボラはその場に寝転んで寝息を立て始めた。


 こうして三人はその場で眠ってしまった。数時間後、ズボラは目を覚ますと辺りは夕方になっていた。


 ズボラはいまだに寝ているふたりを揺り起こす。グータラは難なく起きたがナマケは起きなかった。


「ナマケ、もう時間だぜ」


 ナマケは寝息を立てながら石のようにじっとしている。


「起きねーか、しょーがねーなぁ、またあれを使うか」


 ズボラは杖を取り出してナマケの手にふれさせた。ナマケはその杖を無意識につかんだ。


「よーし、グータラそっちを持ってくれ」


 ズボラに言われてグータラは杖の先端をつかんだ。それを確認するとズボラはさらにつづけた。


「そのまま上げるぞ」

「うん」

「せーの」


 ふたりは杖を持ち上げた。それと同時にナマケはその杖にぶら下がった。だが、彼はまだ眠っている。


「このまま町まで行こうぜ」

「うん」


 三人はロマンティス城の城下町へと入って行った。町のにぎやかさにふたりは目もくれずセカチたちを捜した。


 適当に町の中を歩き回る。町の中央に来ると噴水広場に出た。


「いねーなぁ、どこ行ったんだぁ」


 見渡す限りどこにもそれらしい人物を見つけることができなかった。しばらく歩いているうちに、ズボラはなにかを引きずっていることに気がつき後ろを振り返った。


「なんだぁ、グータラがいねーじゃねかぁ。どこ行ったんだぁ」


 ズボラはしかたなくナマケをそのまま引きずるようにして歩き回る。するとちょうど酒場を見つけたので中に入った。


 テーブルに着きズボラは酒を頼むとそのにおいにつられてナマケが目を覚ました。


「あれー? おいしいお酒ってそれ?」


 ズボラはカップの半分ほど飲み終えるとナマケの問いに答えた。


「おお、起きたか。さあな、わからねーがここでしか飲めねー酒なのは間違いねぇ」

「へー、じゃあぼくにもそのお酒をお願い」

「ああわかった」


 酒を注文して酒が出てくるとナマケはそれを飲み始めた。


「しかし、グータラはどこ行ったんだろうなぁ」

「グータラどうしたの?」

「いやぁ、ナマケを運んでいる途中でどっかに行っちまったんだ」

「あーそうなんだね。ぼくも捜すよ」

「そうか、そいつは助かるぜ」


 ふたりはしばらく飲んだあと店を出てグータラを捜した。歩いているうちにナマケはどんどんとズボラから離されていく。


「なかなか見つからねーなぁ、なあナマケ」


 返事がないので振り返ってみると彼は離れたところにいた。ズボラはしかたなく彼が来るのを待つことに。数十分後、ナマケはズボラのところまでたどり着く。


「よし、じゃあ行くか」


 ズボラはまた歩き出した。ナマケは彼に置いて行かれないように必死について行こうとするが結局離されてしまう。


「しかし、グータラはどこにいんだろーなぁ、なあナマケ」


 また返事がないので振り返ってみると、ナマケはまた離れたところにいた。しかたなくズボラは地面に座り、あくびをしながら人の行きかう町の風景を眺めていると、木にしがみついているグータラを発見した。


「あ! いた!」


 ズボラはさっそく彼のもとへと向かう。近寄ってみるとどうやらグータラは眠っているようだ。ズボラは彼が起きるまでそこで待つことにした。


 待つのも疲れてズボラは寝転んだ。それから、うとうととし始めてそのまま眠りにつく。数時間が経ち目を覚ますと辺りはすっかりと夜になっていた。


「なんだぁ、夜か」


 ズボラは立ち上がり寝ているグータラに声をかけた。


「おーいグータラ。そろそろ行くぞ」


 その声にグータラは目を覚まして木から降りてきた。


「どこに行くの?」


 あくびをしながらグータラはたずねるとズボラは辺りを見ながら答えた。


「そうだなぁ、あいつらも見つからねーし、今日はこの町で休むとするか」

「うん」


 宿屋を目指して歩き始めた彼らはとあることに気がついた。


「あっ! ナマケがいねーぞ」


 ズボラは辺りを見ながらその本人を捜してみる。街灯の光に照らされていないか探ったがそれらしき人物は見当たらない。グータラも一緒に捜したが結局見つけることはできなかった。


「どうすっかなー、さっきまで一緒にいたんだがなぁ」

「捜してみよう」


 グータラはナマケを捜すために歩き出す。「あっちのほうにいるかもしれない」と、なんの根拠もなく言い先陣を切っていく。


「おおホントかぁ、助かるぜ」


 ズボラはグータラのあとについて行った。数歩ほど歩いては止まりを繰り返しながら進んでいく。そうやって進んだ先は噴水広場だった。


「あっ! ここは噴水広場だな。俺がさっきまでいたところだぜ」

「え? そうなんだ。じゃあ引き返そう」

「ああ」


 彼らは引き返していった。すると宿屋の前にたどり着いた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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