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7. 到着

 彼らが寝ている間にゾウゴロウは飛びつづけてロマンティス城の城下町前まで来ていた。その近辺に降りてパレセクは寝ている彼らを起こした。


「お客さま、ロマンティス城に到着いたしました」


 ズボラが目を覚まして辺りを見回したあと「なんだ、もう着いたのか……もうすこし寝る」と言って、また眠ってしまった。


 それから1時間ほど経ちズボラは目を覚ました。それと同時にグータラも眠りから覚めた。ナマケはいまだに寝ている。


 日差しに目を細めながらズボラは窓の外を眺めた。塀で囲われている城下町の門が見え、その先のほうには城の尖った屋根が見えている。


「あれがロマンティス城かぁ」


 ズボラが言うと「はい、そうでございます」とパレセクが答えた。


「ロマンティス城に着いたんだね」


 グータラも窓の外をのぞきその風景を眺めた。


「じゃあ、さっそく行ってみっか」


 ズボラは船内を出ようとした。だが、出方がわからなかった。辺りを見ながら出口らしきドアを探しているようすを見ながらグータラはそれを止めた。


「もう行くの? もうちょっと休んでいこうよ」

「あ? それもそうだなぁ、そうすっか」


 それからまたふたりは酒をたのみ飲み始めた。ミズゼミ焼きというつまみもついでにたのみ、それをあてに酒が進む。


「しかし、こんなに早く到着するとは思わなかったぜ」


 ズボラはつまみを頬張りながら窓の外に目を向けた。グータラは食べたことのないつまみに舌つづみをしつつ相槌をする。


「外の景色を見たいのでしたら透明にしましょうか?」


 パレセクはそう告げると船内が透明になり外の風景が丸わかりになった。


「おお! すげーなぁ、そんなこともできるんだ。っていうか外にいるみてーだな」


 グータラはあることに気がつきそわそわとし始めた。


「すごいけど、もしかして外からも俺たち見えるのかな」

「いいえ、見えませんのでご安心ください。外からはゾウゴロウが止まっているように見えています。ちなみに、ゾウゴロウも透明にできます」

「え? この飛虫船自体が透明になるってこと?」

「はい」

「なんのために?」

「たとえば、どこかに隠しておきたいけど、隠せる場所がないときとか」

「ふーん」

「それが嫌でしたら。小さくして持ち運ぶこともできます」

「どうやって?」

「使用者が外に出て5秒間ほどこの飛虫船をさわれば、手のひらに乗るくらいに小さくなります。最初、飛虫船をレンタルしたときと同じ状態になります。ですが船内に人がいる場合は小さくできませんので」

「ふーん、なるほど」


 ズボラは酒を飲みながら外の風景を見ていると、ロマン姫などどうでもいいように感じてきた。


「こうして風景を見てるとさぁ、ロマン姫を助けに行くのなんか面倒くさくなってきちまったぜ」


 グータラも酒を飲みつつ外の風景を眺めた。ロマン姫を助け出せば100万という金が手に入ることと、この風景を見ながら酒を飲むのではどちらがいいかというと、当然ここで風景を見ながら酒のほうがいいと思った。


「うん、そうだね。こうしてたほうがなんだかのんびりできるよ」

「そうだよなぁ、わざわざロマン姫を助けるために歩くのも面倒だぜ」

「うん、疲れるし、どこにいるかわかんないしね」

「そうだよ、捜すったってどこを捜せばいいんだよ。ロマンティス城まで来たけど、もうね、べつによくね。助けなくても」

「うん、こうしてのんびりしてたほうがいいよ。酒もあるし風景も綺麗だし」

「ああ、どうせほかのやつが見つけるだろ。俺たちには関係ねーぜ」


 しばらくして酒のにおいにつられてナマケが目を覚ました。とてもおいしそうな見たこともない食べ物がテーブルの上に乗っているのを目にしてゆっくりと歩き出した。


「おいしそうなにおいがするね」


 ぼーっと外を眺めているふたりにナマケが言った。ゆっくりと歩いて行きテーブルの席に着いた。


「おお、ナマケ起きたか」

「うん、ぼくお腹すいちゃった。そこにあるの食べていいの?」

「ああ、いいぜ。タダだからな」

「へぇーそうなんだー」


 ナマケはミズゼミ焼き頬張り酒を飲んだ。それから外の景色を眺めるとちょうど門のところにセカチたちを見つけた。


「あーあの人たちってセカチたちだね」


 ナマケの言葉にズボラとグータラは外を注意深く眺めた。


「あっ! ホントだ。あいつら俺たちが飛虫船に乗ってきた時間と変わんねーじゃねーか」


 ズボラはセカチたちの速さに驚きはしつつもなかば呆れていた。


「うん、そうだね。疲れないのかなあ」


 グータラは彼らのようすを眺めながら感心した。


「よーし、あいつらにあいさつしに行こうぜ」


 ズボラは意気揚々と飛虫船から出て行こうとした。だが、やはりどこにも出口がなかった。


「パレちゃん」

「はい」

「出るにはどうしたらいいんだ?」

「出口はこちらでございます」


 後方のほうが開き下に滑り台が出現した。


「あちらの滑り台で降りてくださいませ」

「そうか、わかったぜ」


 ズボラはその滑り台へ向かった。ほかのふたりは酒を飲みながら外の風景とともにセカチたちを眺めている。ついてこないふたりにズボラは言った。


「おーい、おまえらも行こうぜ」

「え? 行くの? 帰るんじゃなかったの?」


 グータラはそう返すとズボラは首を振り答えた。


「ああ、帰るがちょっとあいさつするだけだ」

「そうなんだ。それなら行こう」


 グータラは滑り台へ移動した。残ったナマケはまた眠り始めようとしている。目覚めた彼が寝ようとしているのを止めるためズボラはふたたび声をかけた。


「おーい、ナマケ行こうぜ」


 だが、ナマケは彼の声を適当に聞き流しながら眠ろうとしていた。


「聴こえねーのかぁ、しょーがねーなぁ」


 ズボラとグータラはお互いにうなずき合って、ナマケのところまで戻り杖を彼の手元に差し出した。すると、ナマケをそれをつかんで目を覚ました。


「ナマケ行くぞ」

「え? どこに?」

「外だ」

「あーぼく疲れてるから、あのーちょっと、そのーなんていうか、もうすこしここで休んでいたいんだけど」

「疲れた? そうか、それじゃあしょーがねーな、すこし休んでいくか」


 こうして、三人はまたミズゼミ焼きをつまみつつ酒を飲んだ。しばらくするとセカチが門の中に入って行った。


「あいつら中に入って行ったな」


 ズボラはそれを見るなり酒を飲み干すと立ち上がった。


「おい、そろそろ行こうぜ」


 グータラとナマケは半分寝ているような態度で「えー行くの?」と答える。ズボラは負けじとふたりを連れて行こうとした。


「そうだ。あいつらにあいさつしてくるだけだぜ」

「そう言ってもなあ、俺はここに残って帰りを待ってるよ」


 グータラはそう返して行かないそぶりを見せた。


「行かねーのか? あいつらはこれからロマン姫を助けに行くんだぜ。俺たちはもう帰るけど、その前に応援しに行こうぜ」

「おうえん?」

「おお」

「うーん、わかったよ。俺がロマン姫の情報を持ってきたからね。ここまで来させちゃったからには責任は取るよ」


 グータラは立ち上がりズボラのあとにつづいた。そして、ナマケの番になった。


「ナマケ、おまえも行くぞ」


 ズボラの声が聞こえていないのか、ナマケはテーブルに突っ伏している体勢から止まったまま動かないでいる。


「グータラも行くってさ……ちょっと、そこまで出かけるだけだぜ。簡単な仕事だ」


 それでもナマケは全く動かなかった。


「しょーがねーなぁ」


 ズボラは例のように杖をナマケの手に持っていった。ナマケはそれをつかむと起き上がった。


「あーなに?」

「ちょっと外へ行こうぜ」

「えーそと?」

「ああ、グータラも行くって」

「あーなにしに行くの?」

「セカチたちがいたからあいさつしに行くんだ」

「あー彼らがいたの?」

「うん、あいつらはもうロマンティスの城下町に入って行ったからさ、早く見つけねーとなぁ」

「あー、いやー、べつに彼らと会ってもとくにーそんなにー、うーん、べつにー、うーん」

「あいさつをすませたらすぐ帰るからさ」

「うーん、でもーなんでそんなに彼らのことを追いかけようとするの?」

「え? なんでっていわれてもなぁ、特にねーけど。とりあえず行こうぜ」

「あーんー……、いやーちょっと、そのーもうすこし、ここで飲んでいようよ」

「そうしたいのはやまやまだが、もしかしたら城下町にもっとおいしい酒があるかもしれねーぜ。どうだ?」

「んー……酒かー、たしかにそうだね。ここで飲んでいる酒よりもっとおいしい酒があるかもしれないね」

「そうだろ。こりゃあ行くっきゃねーぜ」

「うーん、うんうん、まあまあ、まあ、そうだねー行くよ」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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