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5. 借りる

 三人は開いている席に座り、さっそくメニュー表を確認していく。


「うまそーなやつがたくさんあるなぁ」


 ズボラはそれを見ながら目を輝かせる。グータラは疲れも忘れてメニュー表に描かれているものに目移りをしていた。


「おいしそうな酒もあるよ」

「おお、いいねぇ。とりあえず酒を注文するか」


 ズボラは三人分の酒を選んだ。酒が来るなり「えいーす」と言って飲み始める。それから、ヨロイムシの揚げ物を注文した。


「おーなかなかうまそうだなぁ」


 ズボラは手づかみでそれを頬張る。グータラも摘まみ上げて口に入れると笑みを見せた。するとそのにおいにひかれてナマケが目を覚ました。


 這い上がるようにテーブルのふちに体を預けるとヨロイムシの揚げ物のにおいを嗅いだ。


「うーん、おいしそうだね」


 ナマケは手を使わずに食べた。ズボラはナマケに気づいて酒を進める。


「なんだナマケ起きたのか? じゃあ、とりあえずこれでも飲め」

「あーありがとう」


 ナマケは銀のカップを持たずに直接口をつけて飲み始めた。


「しかしーあいつらは働き過ぎだな。俺たちを構ったりロマン姫を助けに行こうとしたりさ」


 ズボラがそう言うと、グータラはうんうんとうなずいて答えた。


「そうだね。動き過ぎだね。だって速すぎて見えなかったもん」

「ああ、移動が」

「うん、あれは速すぎるよ。なにをそんなに急いでいるのか」

「たしかになぁ、俺はあんなに速く動けねーぜ。疲れるしさ」

「彼らも、もう疲れてるんじゃないのかな。あんなに速かったらさぁ」

「ははは、そこらへんで寝ころんでるかもな。馬鹿だぜー、たぶん急ぎ過ぎて飲物なんか持っていってねーだろうからさー」

「あっ! そういえば指輪つけてたよ」

「ゆびわ?」

「うん、ズボラがつけてるやつと一緒のやつ」


 ズボラは自分の人差し指につけてあるクロバーの指輪を見つめた。


「そうかぁ、あいつらも買ったのかぁ、本当はおまえたちの分も買ってやろうとしたんだけど、金がなくなったからさぁ」

「しょうがないよ。結構高かったしね」

「うーん、まあそうだな。……そうか、ロマン姫を助ければ100万リボンもえるんだよなぁ。そうすれば買える。俺たちは買えるようになるんだ」

「そ、そうだけど。助けるって言っても……」


 ズボラは隣で飲んでいるナマケに相談した。


「ナマケさぁ、これからロマン姫を助けに行こと思うんだけどさぁ、どうする?」


 ナマケは飲むのをやめて、ヨロイムシを頬張るとズボラの質問に答えた。


「あーロマン姫を助けるの? なんで?」

「捕まったんだってさ」

「誰に?」

「悪いやつに」

「あーそうなんだ。あー助けに行くの?」

「そう決めようとしてるんだ」

「いやーちょっっと、そのー、ちょっと、め、めんどうっていうか」

「待て待て早まるな。助ければ100万もらえるんだぜ」

「んー100万? ひゃ、100万ねぇー。ちょっとなんだろ。あのーちょっと、少ないー感じが」

「おいおい、気はたしかか。俺の全財産だったその100倍だぞ。桁が違うんだぜ間違いなく」

「うーむ、まあまあまあ、うーん、えっ? 本当に行くの?」

「だから、そう決めようとしてるんだ」


 ナマケは酒をとてもゆっくりと飲んでから、ヨロイムシをとてもゆっくりと噛みしめながらたべると、そのまま寝てしまった。それを見たズボラはすばやく杖をナマケの手に当てた。するとナマケはそれをつかみ目を覚ました。


「あっ! ごめんごめん。寝ちゃった。そうだねー、うーん……」


 行くか行かないか渋っているナマケを見てグータラはいい案を提示してきた。


「ナマケは寝てていいんだよ。俺たちがロマンティス城まで連れて行くからさ」


 そう言って、ズボラに合図を送った。ナマケはそれを聞いてピンと耳を逆立てた。


「え? ほんとー? ぼくを運んでくれるの?」

「うん」

「あーなるほど、あーそう、そうーならー。それでー、うん、ならいいかなぁ」


 その答えにズボラとグータラはお互いに顔を見合わせた。


「そうだろうそうだろう。これは行くっきゃねーぜ。なあ」


 ズボラはナマケの肩を叩き「あっはっは」と笑った。


 こうして三人はロマンティス城へ向かうことに決めた。ナマケはすでに寝ていたので例の方法で彼をロマンティス城まで運ぶことにした。ズボラとグータラは杖を担ぎ、そこにぶら下がって寝ているナマケを運んでいく。


 ズボラたちは南の門を抜けると平原に出た。見渡す限りの草地が広がっている。緩い風に吹かれて歩いて行くと「疲れたよ。ちょっと休もう」とグータラが言ってきた。


「つかれた? 門を出てから数歩しか歩いてねーけどなぁ、しょーがねーなぁ」


 グータラはすでに杖を担いでいなかった。彼は門を出た途中から杖を担ぐのをやめていたのだ。しかたなくズボラは担いでいる杖を地面に下した。それからふたりは寝転んだ。


「あとどのくらいかかるの?」


 グータラがたずねると、ズボラはあくびをしながら答えた。


「そうだなぁ、セカチのやつが5日ぐらいって言ってなかったか」

「遠いよ」

「しょーがねーよ。だって100万のためだ。がんばろーぜ」

「いやあ、なんか楽に行く方法ないかなぁ」

「ああそうだな。それがあれば疲れなくて済むんだがなぁ。あっ! そうだ。飛虫船で行こうぜ」

「ひちゅうせん? ああ! 町にあるレンタル屋で借りるんだね。でも、借りれるかなぁ。レンタル料高いんじゃないの?」

「だが、このまま歩いて行くのも面倒だ。借りれるかどうかはわからねーけど、とりあえず行ってみようぜ」


 そうして、三人は町へと引き換えしていった。ふたたび南の門をくぐり抜けレンタル屋へと向かう。


『プレズフィールレンタル』という看板のある店の前来ると、三人は中へ入っていった。


「いらっしゃいませ」と店内から声が響いてきた。辺りには何人かの客がいて、それぞれが思い思いにレンタルをしている。


 初めて入るズボラたちはなにをしていいのかわからなかった。


「グータラやり方わかるか?」


 ズボラはたずねるとグータラは「さあ」と首を振った。


 店の中には半円状の球体が台に乗せてあり、それがいくつか置いてあった。客はそれを操作しているようだ。それを見たズボラたちはとりあえずそこへ行った。


 寝ているナマケを下すと、ズボラはさっそく操作してみることにした。すると「お客さま、初めてのご利用でしょうか?」とブタ化の女の店員がたずねてきた。


「ああ、そうだぜ」

「こちらにあるものは、プレズフィールクリスタルと言いまして、いろいろな物をレンタルできるものです」

「へー、じゃあさっそく飛虫船をレンタルしたいんだが」

「飛虫船でございますね」


 そう言いながらプレズフィールクリスタルにふれると飛虫船の映像が浮かんできた。多種多様の虫をかたどったものが映し出されている。


「お客さま、どれをご希望でしょうか」

「きぼう? そうだなぁ、これでいいや」


 ズボラはゾウゴロウを指さした。それは楕円形で表面がつるつるした飛虫船だった。


「かしこまりました」


 店員は手早く操作すると手を止めて希望を聞いてきた。


「お客さま、何人乗りをご希望でしょうか。五人乗りが最小サイズになりますが」

「え? 俺たち三人しかいねーから、最小サイズでいいぜ」

「かしこまりました。レンタル期間は一日からになります。いつまでをレンタルでご希望でしょうか」

「ロマンティス城に行くだけだからなぁ、一日でいいぜ」

「一日のレンタルでございますね……最小サイズで一日のレンタルですと料金のほうは100リボンになります」

「100リボンか。それでいいぜ」

「かしこまりました……それでは、こちらをお受け取りください」


 料金と引き換えに店員は小さなゾウゴロウをズボラに渡してきた。


 支払いはコインで払う場合とクロバーの指輪の中に入っている残高から引き落とされる場合がある。実際には店員がいなくてもプレズフィールクリスタルでそのやり取りができるため、金を持っていれば誰でもいつでも借りられる仕組みになっている。


「その飛虫船を広いところでお使いください。そちらを5秒ほど長押ししますと擬音が鳴ります。そうしましたら、人が乗れるほどの大きさになりますのでそれにお乗りください。そのあとの操作のほうは船内のほうでご案内がありますので、それに従ってくださいませ」

「うーん、わかったぜ」

「それでは以上でご説明のほうは終わりになります。ご利用ありがとうございました」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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