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35. 狙撃

 ナルーシの飛虫船が前方から接近してくるべつの飛虫船を捉えた。


「ん? 引き返してきた。ほほう、ぼくとやり合うつもりかい? たしかあれは……一日100リボンの飛虫船だな。そんな船でぼくとやろうとは愚かなことだ」


 ナルーシの借りている飛虫船はタケクロ蝶と言い、蝶々をモデルに作られたものなのだ。借りるには一日1000リボンを支払わなければならない。


「パレセク、竜巻の準備だ」

「はい」


 ウヒカはこちらに接近してくる飛虫船を確認すると、直ちにパレセクを呼んだ。


「あっ! あれは! あの飛虫船は……あいつが来たんだ。白いストーカーのナルーシ。パレちゃん」

「はい」

「前方にいる飛虫船を攻撃する方法ってないの?」

「ありません」

「なんでもいいんだよ」

「このゾウゴロウにはなにも搭載されておりません」

「なんで?」

「最安値の飛虫船は飛行だけしかできません」

「なんとかならないの?」

「オプションをご用意しますか?」

「おぷしょん?」

「はい、このゾウゴロウに緊急用として攻撃用や防御用の装備をつけることができます」

「そうなのか? じゃあ、なにか攻撃用のやつをつけてくれるか?」

「わかりました。それではどれになさいましょうか? つらら……」

「……えっ? おわり? っていうかなにか絵で見せてくれないの? なんか画面に映すとか。どんなのかわかんないよ」

「申し訳ございません。諸事情により搭載できますのは『つらら』だけでございます。いまイゲンキョウを映します」


 氷のとがったものが一定方向に飛んでいく映像が映し出された。


「こちらの攻撃は、ゾウゴロウの真下に装着することができます。大きさはゾウゴロウの体の半分ほどでございます」


 パレセクが説明するとウヒカはこれしかないと思い、これを注文することにした。


「攻撃ならなんでもいい。じゃあ、それを搭載してくれ」

「かしこまりました。では、搭載の準備に入ります」


 すると、室内に大きな水晶玉のようなものが浮かび上がった。パレセクはそれの説明をしてきた。


「恐れ入りますが、ご利用料金のほうをお願いします」

「ごりようりょうきん?」

「はい、つららの搭載には10万リボンほどかかります。その料金をそこの丸いところに入れてくださいませ」

「じゅ、10万なんて持ってないよ」

「それでは搭載はできません」


 頭を抱えながらどうするか悩んでいるウヒカに一筋の光明が差した。


「わたしのネックレスではだめですか?」


 ロマン姫は首からネックレスを外すとそれを差し出してきた。


「王家で代々と伝わるものです。これを……」

「……えっ、いいのか?」

「はい、この窮地を救えるなら」


 ウヒカはうなずくとパレセクに言った。


「パレちゃん、金じゃないがネックレスでもいいか?」

「構いません。そのネックレスの価値から料金のほうを算出しますので」

「そうか、じゃあ……」


 ウヒカはロマン姫に合図を送ると彼女はネックレスを丸いところへ置いた。


「いま算出しています……このネックレスのお値段は、なんと50万リボンほどの価値になります」

「ご、50万!?」


 ウヒカは驚きながらロマン姫を眺めた。彼女はほっと安心した顔を見せて返した。


「そんな高価なもの、本当にいいのか?」

「はい」

「うーん、姫さまがそうおっしゃるなら」


 ウヒカはパレセクに言った。


「パレちゃん、つららを搭載してくれ」

「わかりました」


 そこへズボラがやってきた。


「なにが搭載されるって?」


 開口一番にズボラがたずねるとウヒカは意気揚々と答えた。


「つららだ。あいつが来てるからな」

「あいつって?」

「ナルーシだよ。ロマン姫さまを救出のとき、やつを止めてたでしょ?」

「ああ、あいつか。あいつが来るのか。じゃあ俺は寝てるぜ」


 ズボラはその場に寝転んだ。


「つららの準備が整いました。いつでも発射できます」


 パレセクはそう告げる。ウヒカは狙いを定めていた。だんだんとナルーシの飛虫船が近づいて来る。


「パレちゃん」

「はい」

「つららを前方にある飛虫船にぶつけたいんだけど、ちゃんと当たる方法ってなにかない」

「確実に当たる方法ですか? すみませんがつららはまっすぐにしか飛びません」

「えっ? じゃあ外れたら」

「まっすぐ飛んでいき、途中で粉々になり消えていきます」


 ロマン姫はそこをどうにかならないものかとしつこくパレセクにたずねた。


「つららとやらがどのくらいの速度で移動するのかはわかりませんが、なにかもうすこしだけ、あの飛虫船に当たる確率は上げられないものですか?」

「確率を上げる方法はあります」

「それはなんですか?」

「至近距離で撃つことです」

「えっ?」


 ロマン姫はナルーシの飛虫船を確認すると、それはまじかに迫っていた。


「ああーどうすればいいんだ!」


 ウヒカは頭を抱えてうなだれた。「なーに落ち込んでんだ?」とズボラが寝ながらたずねてきた。


「なにか悪いもんでも食ったのか?」

「違うよ、あの飛虫船につららを当てたいけど、避けられるかもしれないんだよ。だから困ってるんだ」

「なんだそんなことか。べつにいいじゃねーか。避けられても」

「ダメだよ。絶対当てなきゃいけないんだから」

「まず、その絶対ってのがダメだぜ。適当にやっときゃいいんだよ」


 ウヒカは深呼吸をすると、一か八かを願いながらパレセクに言った。


「パレちゃん」

「はい」

「つららをあの飛虫船に向けて撃ってくれ」

「わかりました。発射まであと5秒……」


 ナルーシは目の前に近づく飛虫船を見ながら優雅に酒を飲んでいた。


「なにかやってくる気だね。でも、そう簡単にはいかないよ。パレセク」

「はい」

「火の玉の準備だ」

「わかりました。火の玉の準備をいたします」

「ふふふ、きみたちは本当におバカさんなんだね。ぼくの本当の恐ろしさを思い知らせてあげるよ。あっ、ロマン姫、きみは特別だからね」


 そうして、いよいよ二隻の船が激突するときが来た。


「3秒、2秒、1秒、氷のつらら発射!」


 ゾウゴロウからつららが勢いよく飛んでいく。ナルーシの飛虫船をめがけてまっすぐに向かう。


「……なるほど、つららってやつか。うわさには聞いていたけれど、どれほどのものかと思いきや、所詮は子どもだましだね。パレセク竜巻だ」

「はい」


 タケクロ蝶はいったん止まると羽をバタバタと羽ばたかせた。すると、ものすごい突風が吹き荒れた。


「なんだ? ナルーシのやつ、やはりなにかやってきたな」


 ウヒカは親指の爪を噛みながら悔しそうに眺めた。これ以上なにも打つ手がないためつららにすべてがかかっていた。


 そして、つららが竜巻に入った。風の力に抵抗するべくぶれながらもつららはまっすぐに飛んでいた。


「ほほう、なかなかやるではないか。しかし、それもここまでだね。パレセク火の玉だ」

「はい」


 タケクロ蝶の両目から火の玉が飛び出した。勢いよくふたつの火の玉はつららを狙った。


 ひとつの火の玉は当たったが、もうひとつのほうは外れた。しかし、その外れたほうの火の玉は竜巻によってゾウゴロウへめがけて行った。


「ひ、火の玉がこっちにくる!」


 ウヒカはそう言うとすぐにパレセクに命令をした。


「パレちゃん! あれを避けて!」

「はい」


 ゾウゴロウはやや傾いた。が、火の玉は避けきれずに背中の部分をかすってしまった。その衝撃で、中にいた者は転んでしまった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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