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24. 占い

 ウヒカはさっそく中に入って行った。あとの者はそれに続くようにのろのろとついていく。


 中は薄暗く一本の通路がまっすぐに伸びていた。両脇には火の付いたロウソクが立ち並び、その淡い明りが来るものを招き入れるかのように誘っていた。


 そのまま進んでいくとカーテンが道を塞いていた。ウヒカたちはそれをめくり中へと入って行った。


 そこはただの広い部屋だった。ステンドグラスの天窓からは弱い陽の光が射している。ただ、微かにそこから風が流れ込んでいた。


「ようこそ、おいでくださいました。ささ、みなさまこちらへ」


 女の声が部屋に響いてきた。その声に従うように四人は部屋の中央へと歩いて行く。そこにはソファーが向かい合わせになっており、その片方に座っている人物がいた。


 彼女はコウモリ化の女だった。


「どうもみなさま、よくおいでくださいました。わたくしは占い師のテンシラムです。どうぞそこへお座りください」


 彼女に促されて四人はもう一方のソファーに腰を下ろす。


「それで、あなたたちはなにを占ってほしいのかしら?」


 切り出したのはウヒカだった。


「あのう、ロマン姫の居場所を……」

「ロマン姫さまですか。少々お待ちください」


 そう言って、テンシラムはソファーの目の前に薪を持ってきて火をつけ始めた。


「わたくしの占いは焚火を使って占いますので、こうして薪を組んで火の玉セットを一つ取り出し、この丸いガラス玉の中に火種が入っていますのよ。それをこの棒で叩けば」


 彼女がガラス玉を叩くと薪に火が付き、瞬く間に燃え上がった。


「これで準備は整いました。それでは……」


 テンシラムはソファーに座ると、ふうっと一呼吸付き話し出した。


「とりあえず、自己紹介のほうからお願いできますか?」

「えっ? ああ、あたいはウヒカ」

「俺はズボラだぜ」

「グータラ」

「ナマケ」


 それぞれの自己紹介が終わると、自分の手をもみもみしながらテンシラムはうなずいた。


「まーね、ロマン姫さまをお捜しになっているということで、ウヒカさんでしたか? ロマン姫さまとはどういったご関係なんでしょうか?」

「えっ? いや、関係って言っても、ただ、誰かにさらわれたから捜しているんだけど」

「そうですか。でもまあ、お捜しになっているにはそれなりになにか理由がおありなんでしょ?」

「え? 理由? まあ、懸賞金目当てだけど」

「はーなるほど、懸賞金ですか。えっ? なに? お金を持ってらっしゃらないの?」

「いや、一応持ってるけど、そんなには」

「失礼ですけど、おいくらお持ちなんですか?」

「えっと、4万7000だけど」

「へえ、でもけっこうお持ちじゃないですか。なにに使われたりなさるの?」

「あ、え? いや、生活費とか」

「普段どんな生活をなさっていらっしゃるの? 4万7000お使いになって。そこそこいい生活できますわよね」

「まあ、どんなって、べつに一気に使うわけじゃないから……借金返さなきゃならないし」

「あなた借金してらっしゃるの?」

「え? ええ」

「それは大変じゃないですか、あなた」

「まあ」


 テンシラムは隣にいるズボラに話しかけた。


「えっと、ズボラさんでよろしいかしら?」

「あ? 俺か? そうだぜ」

「あなたはなにを占ってほしいのかしら?」

「占い? 俺はべつに占ってもらいに来たわけじゃねーけど」

「おやまあ、そうでしたの。それは大変失礼しました。でも、なにか占ってほしいことってないのかしら?」

「俺が占ってほしいことかぁ、そうだなぁ……なんか食い物ってないか? 腹減っちまってさぁ」

「あら、お腹がお空きになってるの? あ、これは失礼しました。いま、お持ちしますから少々お待ちください」


 それから数分経ちテンシラムはお盆にお茶菓子などを乗せて持ってきた。それらをテーブルに乗せてカップをそれぞれに分け与えた。


「どうぞ、お召し上がりになってください。キュウノコのお酒とキュウノコのクッキーでございます」

「ああ、すまねーなぁ」


 ズボラは酒を飲みクッキーをいただいた。それにつられてほかの者もおなじくいただき出す。


「それでは……えっと、そのお隣のグータラさんですか? あなたはなにを占ってほしいのかしら?」

「お、俺? 俺はーそうだねぇ、んーとねー、んーと、んー……ない」

「そうですか。では、そのお隣の……ナマケさん?」


 ナマケは眠っていた。テンシラムが呼び掛けても反応しない。


「彼、眠ってらっしゃるじゃない。誰か起こしてあげて」

「ナマケを起こすのか? しょーがねーなぁ」


 ズボラは杖を取り出してナマケの手にふれさせた。すると、ナマケは目を覚まして酒を飲み出す。彼が起きるや否やテンシラムは質問をした。


「ナマケさん。あなたはなにを占ってほしいのかしら?」

「うらない? あーえーんー、えー、そう、だねえ、うーんとねー、そのー」

「まあ、なにか占ってもらいたいことがおありなのね。でもすごいわね、さっきまで寝ていらっしゃって、その棒ですぐに起きるんですから」

「あーまーそう、ね。んーなんだろう。なんて言うのかなぁ、そのーあのー、条件反射ぁてきな」

「そうでしょうね。でも、そちらの彼に起こしてもらっているんだから、彼に感謝しないといけないわね」

「あーはい……」

「それで、なにを占ってほしいのかしら?」

「うーんと、えーっと、うーん……明日の天気」

「明日のお天気を占いたいの?」

「まあ」

「わかりました。それじゃあ、明日の天気を占ってみましょう」


 テンシラムは焚火の前に膝をつき手を温め始めた。しばらく経ち彼女はその答えを出した。


「晴れと出ています。明日は晴れですね」

「はー、そうですかぁ」


 テンシラムは焚火から離れてソファー座ると質問をしてきた。


「どうして明日のお天気を知りたかったのかしら?」

「えっ? いやーあのー、なんかぁ、なんか気になって」

「それで?」

「それでー、えーとーそのー、晴れなら暖かいかなーとか」

「うん、それで?」

「雪ならー寒いかなーとか」

「へえーなるほど、そう思いになっていらっしゃったのね。わたくしもね、暖かいのはいいけど寒いのは苦手なのよ。手がかじかんだりするじゃない?」

「はあ、まあ」

「この前なんか寒くて焚火に火をつけようとしたら、あっ! ごめんなさい。薪に火をつけようとしたら手が動かなくてなかなかつかなかったのよ。つくまでお待ちいただいたお客さまには大変申し訳ないことをしたわ。あなたも焚火をおやりになるとき手がかじかんだりするの?」

「いや、まあ……そんなんじゃ」

「雪だと……なんとおっしゃっていたんでしたっけ?」

「えーっと雪なら、寒いかなーって」

「そうでしょ。わたくしも焚火をするうえで手がかじかんだりしたら大変だから、こうして手をこすって温めているですよ」

「はーそうですかー」


 テンシラムはそこまで話すとふたたびウヒカにたずねた。


「それで、この四人の中で誰がリーダーなのかしら?」

「えっ? リーダー? べつにあたいたちはリーダーなんていないけど」

「あ、でもグループなんですからリーダーぐらいは決めておいたほうがよろしいんじゃないかしら」

「まあ、時間があれば」


 ズボラはそこで話に割って入った。


「リーダー決めんのか? だったらウヒカでいいんじゃねーか?」

「ええ? なんであたい?」

「いや、単純にいろいろ知ってそうだからさぁ」

「べつにあたいはなにも知らないって」

「でも、カードバトルやってたじゃねーかぁ」

「あんなの、誰だってできるわ」

「そうなんか? 俺たちは出来ねーぞ」

「簡単だよ、カードをめくればいいだけ」

「いや、よくわかんねーな。なあグータラ」


 ズボラはグータラに話を振った。


「うん、そうだね。俺たちカードなんてもの見たことなかったし。そうだよな、ナマケ」


 グータラはナマケに話を振った。


「あーそうだねー、ぼくーあんな薄いもの初めて見たよ。カードっていう言葉もわかんなかったし」

「だろう」


 テンシラムはカードバトルに興味が出てきてそのことで頭がいっぱいになった。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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