不審者への対応
二人ともキッチンに来てしまっているけど、一見割といい人そうとは言え得体の知れない不審者が家に入ってきているのだから、海くんにはあの人を監視してもらった方がよかったんじゃないのかな。
いやいやいや。むしろ二人きりにする方がまずかった。いくら体が大きくなったからって海くんをそんな危ない目に合わせるなんて。
だめだ。まともに判断できていない。とにかくあの人を一人きりにさせる事も、海くんと二人きりにさせるのも避けないと。
急いで氷を入れたグラスに麦茶を注いで、適当なお茶菓子をひっつかんでお盆にのせ、――包丁はやり過ぎと思ったけどとりあえずすりこぎだけ尻ポケットに差し込み――、ちゃっかり缶入りのクッキーを抱えた海くんの手を引きながら私の部屋に戻る。
ああ緊張する。お腹の奥が重い気がする。
「お待たせ……、しました」
さっきまで出ていた声が半分ぐらいしか出ていない気がする。
「すみません、ありがとうございます」
心配は杞憂で、不審者の方は静かに座っていた。体育座りみたいな感じで、ちょこんと。でももう一つの心配は――。
「おねえちゃん、しらない人がニガテなんだよね」
海くんがそっと耳打ちしてきたけど、その内容にギクッとした。お盆をテーブルの上に置いていなければお茶をこぼしていたかもしれない。
なおも海くんは続ける
「あのね、おかあさんが言ってたんだよ。たしかさ、しらない人のまえだときょどうふしんになるって」
よくそんな単語覚えたね、難しいのにえらい、と心はえぐられたけどそこはほめてあげたかった。
しかし自他ともに認めるコミュ障ではあるけど、話はちゃんと聞きださないと。この人の素性はもちろん、特に相談事という【人間のスイッチング】についても。