田阪さんの苦悩
ウサギの説明にそうなのかもしれないと思わせられそうになるけど、とまどいは隠せなかった。それを察したのかウサギは、
「とはいえ納得しにくい事は想像つく。相馬渚と田中海、適性のある君達二人の協力は必要である以上、信頼関係は築いていきたい。最低限の情報は随時開示していく。君達にはそれで納得してもらいたい」
適正とは? クリアになっていないことばかりで、簡単にはうなずけない部分もある。
「あの……、一旦保留にさせてもらってもいいですか?」
「仕方がない。――では、今回の顛末の報告だけでも聞かせてもらおう」
うながされ、まだ迷う部分もあったけど田阪さんとのやり取りを話していく。
*
「僕はこれからどうしたいか、正直自分でも分からないです。迷ってしまっているんです。やっぱり後悔は強くて」
田阪さんはポツリポツリと語り出した。
「僕のこれまでの人生、自分勝手な言い分かもしれないけどつらい思い出はいっぱいあったんです。どうして僕が、と怒りの様なものもあった。惨めで理不尽としか思えなくて。なのにそれを変えられる権利を放棄してしまうなんて、何をやってるんだと何度も後悔しています」
田阪さんの苦悩に、私が一体何を言えるんだろうかと考えてしまう。それなら――。
「普通に考えれば【スイッチング】した世界の方が条件的にも良かったですよね?」
田阪さんの体に――特に肩のあたりに力が入ったのが分かった。