一段落した後
*
田阪さんが帰った次の日、朝から暑さが本格的になってきた。
日差しはきつく庭の様子を見るだけでカラカラに干上がりそうに思うけど、エアコンがきいている室内は快適だ。
「首尾よく行ったようでまずは感謝する」
「っぎゃーーー!!!」
情けないび声をあげてしまったけど、数秒後にはちょっとだけ冷静さを取り戻せた。
完全に腰を抜かしてしまっていても、机に手をかけて何とか倒れなかったところも評価したい。
「あっ……あの、ウサギさん……ですか?」
「すまない。驚かせてしまったようだね」
ウサギが来るのは予想できていたのだから警戒心が足りなかっと言われてもしかたない。
でも知らない間に部屋に上がり込んで声をかけてくるのも悪いと思う。
「特に必要はないのだが」
「いえ……、どうぞどうぞ」
緊張していて一度した提案をうまく引っ込められず、意味ないかもしれないのにしつこくウサギにクッションをすすめてしまう。
「――ではありがたく座らせていただこう」
気を使ってくれたのかな?
よかった点もある。いくら外見に似合わない渋い声の持ち主でも(わりといい声だった)、クッションの上にウサギがちょこんと座っているのはカワイイ。
なんとか落ちついたので――その間、最低限しか動かないウサギがあきれた顔をしているように見えた――、ウサギの話を聞くことに。
「おかげであの青年――田阪と言ったか、彼の問題は収まりそうだ」
「あっあの、……ちょっと待ってください。その前にウサギさんに聞きたいことがあるんです」
これだけは先に確かめなければいけない。
一呼吸おいて問いかける。
「ウサギさんに関わったことで、海くんに何か危険はないんですか?」
自分が思っていた以上に冷たい声が出た。