en.next……
「……やっぱり、そうだよね」
何処かの世界。
何時とも知れぬ、その時間軸で。
彼との戦闘の後、姿を消した彼女は静かに呟いた。
壊れた残骸と思しき瓦礫の山。焼け焦げた地面に、土砂降りの雨が降り注ぐ。
「あの程度の偽物なんかじゃ、相手にならないよね」
俯いて、独りごちる彼女は。
「…………ぅ、ふ」
笑っていた。
「ふ、ふふっ、あは、あははははッ!!!!うん、そう!!!!そうだよね!!!!あんな、贋物如きに、貴方が負けるなんて、ありえないよねッ!!!!」
クルクルと、舞を舞うように軽やかに。
ボロボロの、その場所で彼女は踊る。
ニコニコと、その顔を喜びに染め上げて。
雨水が染み込み、跳ね上げた泥と共に、彼女の衣服を汚していく。
綺麗な舞を見せながら、それを穢すかのように衣服を汚していく。
狂った感情を宿した瞳が、爛々と輝いていた。
「ああ、もう!!!!どうして貴方は生きているの!?!?貴方に負けて欲しいのに!!!!貴方が生きられるようにしてあげたのに!!!!血反吐をぶちまけて欲しいのに!!!!嬉しいよ!!!!苦しいよ!!!!会いに来てよ!!!!顔も見たく無い!!!!どうして…………どうし、てっ!!!!貴方、は、貴方はぁっ!!!!」
大声で喉が裂けそうなほどに笑いながら、体中の水分を全て吐き出しているのでは無いかと思えるほどに大粒の涙を止めどなく流す。
笑っているのに、泣いている。
慟哭を上げているのに、口の端は吊り上がっている。
享楽を纏い、悲嘆を叫ぶ。
憎悪を撒き散らし、愛情を吐く。
どんな言葉を吐こうとも、どんな感情を持とうとも、必ず矛盾する。
祝福、呪縛。
彼が死ぬ事を望んでいるのに、彼が生きる事を望んでいる。
彼が生きている事を許せないのに、彼が死ぬ事を許さない。
彼の勝利を確信し、彼の敗北を望む。
彼の敗北を拒絶し、彼の勝利を否定する。
「ああ、もう、どうして、どうしてなの……?」
それでも彼女は笑う。
笑い、狂い、更に先へと進んでいく。
暗く、苦しい道に、躊躇無く踏み入れ、闇を受け入れて。
「いつまでも待っててあげるから。
早く、会いに来てね」
まるで壊れた人形のように。
クルクルと、ただ彼女は踊り続けた。




