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前編

「見ろ!サティアはイザベラを見て、こんなに震えている。これが証拠だ!」

「殿下、それは私がイジメをした証拠になりませんわ!」


 ヒィ、殿下が私を背中に隠して、庇ってくれている。

 更に、後ろに、私の取り巻きがいる。


 ・・・増えている。メガネ、お前は関係ないだろう。誰だ。飛び火するから、引っ込みなさいよ!


 そりゃ、震えるよ。婚約者の公爵令嬢イザベラ様の後ろに、彼女の取り巻きがいる。

 貴族学園の高位貴族の令息、令嬢のトップ対決だ。


 私は、孤児出身、男爵家に引き取られたばかりなのに、怖くて震えが止らないわよ!


「やめて、下さい。その件は、やった方が、一言、謝ってくれたら、・・・グスン、良いから」

 ただ、それだけの話だ。イザベラ様は関係ないのだからねっ!


 いくら、派閥の長だからと言っても、イザベラ様に謝られても、困るだけだからね。

 やった奴が一言、「ごめんあそばせ」と言ってもらえたら良いからね!



「おお、安心しろ。サティア、俺たちが付いているからな」

「あら、ですから、私の指示で、サティア様をイジメさせた証拠をお示し下さいと申し上げています」



 私は可愛い。少し勉強が出来る。だから、男爵家に養子に行けた。

 この世の春だと、思ったよ。

 自分だけの部屋、メイドがついて、

 ウキウキで、貴族学園に行ったら、


 入学式の日に拉致されかけたよ。


『グヘグヘへへへへ、お前、可愛いな。学校サボって、俺たちと遊びに行こうぜ。俺は侯爵家の5男のヨハンスだぜ!』


『ヨハンス、このピンクブロンド、男爵家だぜ。夜帰しても、逆に侯爵家と縁がついたと喜ぶぜ』


 プルプルプル~

 何、この理屈は?どうしよう。酌婦のお姉さんに習った技をお見舞いしてやろう。



 クネクネクネ~~~と体をくねらしながら、

『あたし、今日、女の子の日~~~、高級レストランで食事だけなら~~~』


 一部受け入れ、体は拒絶の反応をする。


「「「えっ」」」


 あっけにとられている隙に、逃げた。


 ここは、危険だ。

 後ろ盾が惜しい。


 クネクネクネ~~~~

 しなりながら、殿方に愛想よくしていた。


 なるべく、高位の貴族がいい。

 貴族は序列社会、高位には逆らえないだろう。


 とやっていたら、一大、サティア派閥が出来上がった。

 殿方ばかりだ。


 令嬢たちから忌み嫌われる。

 イジメに遭うようになった。


 ドタン!

『あら、ごめんあそばせ!』


 突き飛ばされた我慢だ。一応、謝罪はしてくれたようだし、泣いて、溜飲を下げてもらおう。


『グスン、はい』


「「「サティアを虐めるな!」」」


 噴水にバチャン!もあった。


『ヒドイ、こんなことまで、サティア嬢の背中をおした令嬢は、イザベラ様の取り巻きだ!』

『殿下に報告だ』


 そして、学園のパーティーで、殿下がイザベラ様を断罪されている訳なのだ。



 ・・・・・・



 しかし、計算がある。

 今日は、陛下と王妃様が来られる日なのだ。

 イザベラ様の10回に9回、勝ちになるであろう。



「イザベラよ。イジメの黒幕であることは明白!よって」【ヘンドリックよ!ならんぞ!】


「「「陛下!王妃殿下」」」

「父上!母上」

「伯父様!おば様」


 陛下と王妃様が来てくれた。

 これで、止めてもらえる。一件落着、めでたし、めでたしだ。

 私は死刑にはならんだろう。

 と高をくくっていたら、話は妙な方向に行く。



「ヘンドリック、学園で騒動が起きているから、カゲをつけておきましたのよ」

「母上」


「イジメは事実ですわ。イジメをしていた令嬢に、イザベラの家門に属している令嬢が多数おりましたのよ」


「「「「やったーーーー」」」


 えっ?殿方が勝っちゃう?


「イザベラ、貴方は王妃になるべき身、社交界で派閥を築いて、ヘンドリックを助けなければならないのよ」


「王妃殿下・・・でも」


「ヘンドリックよ。王たる者、偏った見方をして、裁断を下してはならない。時には、搦め手も必要なのだぞ」


「父上!」


 よし、イザベラ様の方に、風向きが変わったか?


「ここで、もし、もしもだ。婚約破棄と言ったなら、取り返しが付かない。王家と貴族派の間に溝が出来る。婚約破棄をしたら、サティア嬢を、王太子妃にするつもりか?混乱に拍車がかかるぞ」


 ・・・ヒゲヒゲの陛下!分かってらっしゃる!


「そこでだ。イザベラ嬢と、サティア嬢、勝負をしてもらおう!」


「「「「何だってーーー」」」」

「「「何ですってーーー」」」




「勝負は、視察対決である!」

「ええ、為政者たる者、民の政治が分かってなければならないわ。どちらの令嬢が、正しくヘンドリックと視察できるかが勝負ですわ」


「カゲをつける。泊まる場合は、別室だ。カゲの監視があるから、純血証明は大丈夫だ」


「裁定者は、異世界から、転移してこられた。タイカイ・ヤマナ氏に裁定を願おう」

「さあ、タイカイ殿」



 ドスン、ドスンと大柄の男がやってきた。黒髪に黒目?デブと言うことは、異世界で高位貴族だったと判定され、王宮付きアドバイザーになったと噂に聞いたわね


「ウオオオオオオオーーーーー、我は、山名大海!婚約破棄ソムリエなり!我は悪役令嬢派なり。ピンク頭は、修道院に直行なり!」


「タイカイ殿、それを言っちゃ」

「タイカイ!おだまりなさい!」

「うむ。大船に乗ったつもりで、我に任せるが良い。イザベラたんの勝ちである!」



 あるほど、視察対決をさせて、私に負けさせるつもりね。

 それでいい。為政者たる者、ただしい判断ね。

 こんなぽっと出の男爵令嬢に未来の王妃が勤まる道理がない。


 なら、綺麗さっぱり、負けて見せましょう。


 私は拙いカーテシーをして、宣言をした。


「あたし、孤児出身だからね!平民の生活なら、知っているのだからね!」


 イザベラ様は、炊き出しや、孤児院や救貧院に寄付を好んでしている慈愛の令嬢と評判だ。


 孤児院出身の私に勝てば、箔が付くというものよ。

 つけて見せましょう。イザベラ様に箔を、遣り手BBAの厚化粧のように、べっとりとね!


「おのおの準備期間が必要だろう。こういった勝負は先が不利になるな。双方、期間はどれくらい欲しい?」


「はい!はい!あたし、今から、殿下と視察したーい!」


 殿下の手を引っ張り。そのまま、城を出た。


 行き先は、私が育った貧民街だ!


「サティアよ!この服装だと危険だぞ」

「考えがあるのだからねっ!」


 平民街と貧民街の境にある。雑貨屋、ボロ屋にに向かう。




 ☆☆☆ボロ屋


「ここで、服を着替えるのだからね!」

「ここは?」


「貧民落ちする平民、貴族が最初に行く店だからね!」


「おっちゃん。銅貨一枚の服!」


「はいよ!行き倒れの服が入ったよ!それとも、小麦袋で作った服、どっちがいい?」


「ウへ、シミがついているのは衛生的にちょっと、小麦粉の袋で作った貫頭衣、荒縄付きでお願いだからねっ」


「はいよ。荒縄銅貨一枚、服、銅貨一枚、二人分、合計四枚ね」


 チャリン、


「今着ていた服はどうするね?買い手がつくまで、預かろうか?」


「後で、人が取りに来るから渡して下さい!」


「何だ。服まで抵当に取られているのか?頑張りなよ」


「有難うだからねっ」


 服はカゲに回収してもらおう。

 殿下はあっけにとられている。


 茶色の服に、ベルト代わりに荒縄で締める。


「サティアよ。どこに行くのだ!」


「その前に、殿下、財布を出して!」


 殿下の財布をドブ川に捨てる。


 ポチャン!


「ヒィ、何をするのだ!」


「そう、そう、その顔、一文無しになった情けない顔でないと、ここでは追い剥ぎにあうのだからねっ!」


 裏組織に行って、話を通して、市場の吟遊詩人コーナで、芸をする。


 スカートの裾を片手で、つまんで、私は、習ったばかりのダンスを披露した。


「これが、貴族の間で流行っている。陽気な令嬢のダンスですっ!」


 ヒラヒラヒラ~~~~


 チャリン!チャリン!とお金が入った。


「ヘンドリック!お金が入ったら、投げ銭有難うっ!って言いなさいよっ!」


「ええ、これは物乞いでは?」


「芸よ!芸をしてもらっているのだからね!」


「あ、投げ銭ありがとう・・・」

「もっと、大きな声で!」


 ここで、お金を稼いだら。地回りのゴロツキに、一部、お金を渡す。



「よお、新入りだな。何だ。商家の旦那をたぶらかせて、追放された口か?

 おっと、ここでは、過去を聞いちゃねんねえ決まりだったぜ。兄ちゃん。女の子に働かせてばかりだな。

 頑張らないとこの先、辛いぜ」


「ご助言、痛み入る・・・」


 隣の、あやとりの芸をしている姉妹にお金のお裾分けをする。


「ありがとうございます。これで、パンを買えます」


「いいんだからね。その芸が化けたら、助けてねっ!」


 いいぞ。殿下はあっけにとられている。

 あきれているな。

 虐められている華奢な女の子が、こんなに、がめついとみて、放心している。

 もう、嫌いになっただろう。


 次の視察先は、私の出身の孤児院だ。



最後までお読み頂き有難うございました。

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