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短篇

赤ん坊人形

作者: 蒼本栗谷

 目が覚める。真っ暗な部屋。

 可笑しい。いつもなら日差しが部屋を照らしているはずなのに。

 起き上がり、よく周囲を見渡す。――ここはどこだ?

 見覚えのある部屋かと思えば違う、何かが違う。ここは私の部屋ではない。限りなく我が家に近いが違うと確信する。違和感が取り払えない。

 何故、どうしてここに。疑問に思考が沢山になる。


「おぎゃあ」


 ――なんだ?


 声が聞こえた。赤ん坊の声だ。

 部屋の中から聞こえた。一体どこから?

 

「おぎゃあ」


 また泣いた。周囲を見渡すと部屋の中央に先程まではなかった箱があった。

 声はその中から聞こえていた。

 確認するべきか? 考えているとまた――泣いた。

 

「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ――――」


 声は少しずつ大きくなる。まるで開けろと言われているかのように。

 泣き声は鳴りやまない。私は耳を塞ぎながら決心して箱を開けた。

 そこには――


「にん、ぎょう?」


 赤ん坊の人形があった。

 これが声を発していた? 首を傾げると泣き声が聞こえない事に気づいた。

 さっきまでの声は? この人形は? 頭の中がぐるぐると回って思考が安定しない。

 そして今気づいた、妙に肩が重い。

 誰かが乗っているような重さ。そして人形を手にしてから感じる視線。

 何かに見られている。体が震え、唇が震える。

 私は恐る恐る背後を見た。だがそこには、誰もいなかった。

 安心すると同時に肩の重さが少しづつ重くなっている事に気づいた。

 そして段々と息苦しくなっていく。首を絞められているかのように。


 幽霊。私の思考にその言葉がよぎった。

 私は幽霊にこの我が家にそっくりな部屋に連れ込まれ、肩に乗られている。

 見えないのは私に霊感がないからだろう。


「おぎゃあ」


 うんうんと頷いていたら正面と背後から先程の声が聞こえた。

 思わず人形を見る。なんの変哲もない女の赤ん坊の人形。

 電池で動いている人形かもしれない。人形の服を脱がし背中を見る。だがそこに電池を入れる部分が無かった。

 

「おぎゃあ」


 また泣いた。今度ははっきりとわかった。この人形から泣き声が発されている。

 

「おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ――」


 また人形が段々と泣いて行く。気のせいだろうか、背中からも聞こえる気がする。

 そして眠くなっていくのは何故だろう。

 私はその場に寝転がった。酷く――眠い。


 ――そういえば、こんな状況なのに恐怖を感じない。何故――?


 そう思った時、持っていた人形がニヤリと笑った気がした。

 何が? 私は疑問を持つ前に意識を失った。


「おぎゃあ」




 ――次のニュースです。一人の男性が部屋の密室で亡くなっていた事が判明しました。

 男性の手には赤子の人形を持っていたとのことで、今までの人形密室死亡事件と何か関係があるのでないかと調査を進めています。

 では、次のニュースです――――

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