54.実力の差
辻斬りシュンにとって状況は悪い。
前方には金ランク冒険者キルロイが立ちはだかり、後方には俺たちが控えている。
この状況で逃げ切るには、どちらかを撃破しなければならないが……。
「いいか、お前ら。手ぇ出すなよ。ソイツは俺の獲物だ」
キルロイが拳を構えながら、言った。
どうやらタイマン勝負をお望みのようだ。
ならば俺たちは退路を断ったまま、このまま見物と洒落込もう。
金ランク冒険者の実力、とくと拝ませてもらいたい。
ボッ!!
キルロイが〈縮地〉で距離を詰めて拳の一撃を放つ。
残念ながらシュンに回避されて空を切ったが、連打は止まらない。
【剣聖】の斬撃が五連撃なら、【拳聖】の拳は八連撃だ。
〈拳・打撃〉ひとつで左右のワン・ツーの二連撃である。
【拳聖】まで行けば〈拳・打撃Ⅳ〉までいくので、八連撃というわけだ。
もっとも連撃数だけならば二刀流のシュンは十連撃。
二発の違いがどういう結果をもたらすのか?
その答えはすぐにやってきた。
「オラァ!!」
「――ッ!?」
シュンの攻撃に合わせた〈カウンター〉が炸裂する。
【拳聖】ならば押さえておきたい攻防一体のスキルだ。
キルロイの連撃が止まったと見て大振りの一撃を放ったシュンの油断が、〈カウンター〉の餌食となった。
「コォォォォォ――……」
「く、がは」
血を吐くシュンに対して、独特の呼吸法を発するキルロイ。
恐らく次で決まる。
ゴウッ!!
目で追うのも難しい拳の一撃がシュンの顎を砕いた。
【聖人】の〈練気〉だ。
〈練気〉は独特の呼吸音とともに身体能力を一時的にブーストするスキルだったが、実際に見るとこうなるわけか。
崩れ落ちるシュン。
金ランク冒険者キルロイの圧勝だった。
「やれやれ、こんなモンかよぉ」
俺たちが苦戦したシュンをあっさりと沈めた“剛腕の”キルロイ。
【拳聖】と【聖人】のシナジーは強力だ。
自然と身に着けたのだろうか?
だとしたらメニュー画面のないこの世界では、それは才能と呼ばれるべきものだろう。
「徒手空拳でシュンを……なんという使い手か」
アリサが驚愕と悔しさに奥歯を噛みしめている。
仇を討つ、その一念でここまで来たというのに、それを為せずに他人にシュンを倒されたのだから悔しかろう。
……俺も治癒魔法の強化なんてしている場合じゃなかったか?
いや、どのみち【魔法使い】を活かしてシナジーを組むには前のめり過ぎる。
もしものときのために〈ヒーリング〉の回復量を上げるのは必須だ。
ああもっとSPが欲しい。
前世で再現したコンボやシナジーの数々が思い起こされる。
かくして領都での辻斬り事件は幕を閉じることとなった。
金ランク冒険者ひとりの活躍により、シュンは捕らえられて処刑されたのだ。
金ランク冒険者パーティ『牙』、か。
あのキルロイと同等の奴があと何人かいるってことだよな。
この事件を通じて、これから何を為すべきかを考えさせられたのであった。




