51.拙者ござるの少女
黒髪を後頭部で括った少女は、太刀を鞘に納めてこちらへ向き直った。
「あなた方はこの街の冒険者でござるか?」
「ござる……?」
ディアーネが小首を傾げる。
東方にある隣国を越えて、さらにその先にある島国の方言だ。
王国の西の果てまで旅をして来たにしては、若い。
十代中盤くらいかな。
「はい、私たちは冒険者パーティ『妖精の友』です。あなたは?」
「拙者は銅ランクのソロ冒険者アリサ。先程の男を追って故郷から旅を続ける剣士にござる」
「アリサさん。さっきの辻斬りのことを知っているの?」
「うむ……シュン、という名だ。故郷では知られた武人だったが、西方大陸に興味を持ち、旅立った。拙者の両親の仇でもあるゆえ、こうして追いかけて来たのでござる。ようやく、ようやく相まみえることができたのでござるが……まさかアレほどまでに強くなっておろうとは」
「とりあえず、私たちじゃ敵いそうもないですね」
俺の発言に、ディアーネとマーシャさんが意外そうな顔をする。
「え、レイシアでも勝てないの!?」
「レイシア、あの男はそれほどまでに危険なの?」
ふたりとも俺を過大評価しすぎだ。
「ディアーネより遥かに格上の剣士ですよ。あんな腕前がありながら、何故に辻斬りなんてしているのか理解しがたいです」
アリサが俯く。
「シュンは……戦いに魅了されているのでござるよ。さしづめ今は血に飢えた獣のごとし。なんとしてでも、この手で命を奪わねばならぬ相手でござる」
「しかし先程の戦いぶりを見ましたが、ディアーネとふたりがかりでも良くて互角、悪ければ各個撃破されかねません」
「うむぅ……そうでござるな。まさかあれほどまでに腕を上げていたとは思いもしなかったのでござる。はぁ、どうしたらいいやら」
ヘナヘナと語尾が小さくなっていくアリサ。
そのとき、銀ランクパーティの『戦神の斧』が走ってくるのが見えた。
どうやら合図を見て駆けつけてきたらしい。
「レイシアちゃんたち!? なぜ……」
「実はさきほどまで辻斬りと戦っていたのですが、まんまと逃げられました」
「この冒険者たち、みな辻斬りにやられたのか!?」
「はい……」
「くそ、みんな……」
この場を衛兵に通報して、冒険者たちの遺体を片付けてもらうことになった。
俺たちはひとまず宿に戻ることにする。
「アリサはこれからどうするの?」
「拙者も今日は宿に戻るでござる。そしてまた明日の夜になったら、シュンを追うのでござるよ」
「でも勝算は? 今のままじゃ最悪、殺されてしまうでしょう」
「……そうでござるな」
「もしかして相討ち狙い? それも正直、分が悪い賭けだと思う」
「ぬぅ、よく拙者の狙いを……しかして分が悪いとは?」
「多分、届かない。それ程までに差があるってこと」
「な、ならば拙者の仇討ちはどうすれば……っ」
「協力しない? せめて四人ならもう少し戦いようもある」
「協力でござるか……」
アリサはしばし瞑目してから、「分かったでござる。よろしくお頼み申す」と告げた。




