48.山賊退治
俺たちは今、国境へ向けて歩みを進めている。
別に隣国に用事はない。
用事は国境その場所にあるのだ。
隣国との境目に最近、山賊が出るということで、討伐の依頼を受けたのである。
人間を相手にするのはこれで二度目、マーシャさんは初めてになる。
マーシャさんにも対人間との殺し合いというものを一度、経験させてあげたくて、この依頼を受けたのだ。
もっとも貴族として教育を受けたマーシャさんが、山賊を殺すのを躊躇う理由はないらしいが。
国境に山賊が出て困るのは、国境に隣接する領地の領主、すなわちマーシャさんの父親であるバードナ辺境伯である。
隣国との交易で潤う領都を脅かしている山賊を殺すのに、何の躊躇が必要なのか? と本心から不思議そうに言われた。
というわけで精神鍛錬は必要ないが、タチの悪い山賊で弱そうな相手しか狙わないともっぱらの噂だ。
女性三人の俺たちなら、きっと襲いかかってくるだろうという読みもあるので、この依頼はうってつけでもある。
交易の邪魔になるということで、依頼主は冒険者ギルドとバードナ辺境伯だ。
報酬はなかなかに魅力的で、依頼票を見つけた瞬間に取っていた。
金に困っているわけじゃないが稼いでおいて損もない。
それにそろそろディアーネの装備も更新しておきたいという目標がある。
十歳の女の子としては成長著しく、俺もディアーネも身長が順調に伸びていた。
鋼の胸甲はサイズ調整が効くように予め準備してあったからまだ使えるが、この前のレイス戦では遂に本格的にディアーネが被弾したこともあって、この際だから防具を見直そうということになったのだ。
また鋼の剣の方も長く使い続けてきているから、そろそろ新しくしても良い頃だ。
できればミスリルが少し入った良質なものが良いので、俺の財布からもある程度は出す予定でいる。
なおマーシャさんはまだそれほど自分の稼ぎはないので、蓄えてもらうことにした。
というわけで、報酬の良い山賊退治に来たわけだが。
「あ、街道から逸れたところに多分、人間の気配。こちらに気づいたのか、遠ざかっていくね」
「山賊の見張りかな? 上手く釣れるといいんだけど」
のんびりと国境へ向けて歩みを進める。
多分だが俺たちを獲物と見定めたなら、集団で待ち構えているはずだ。
三十分ほど歩くと、マーシャさんが「前方に人間の気配多数。どうやら待ち伏せされているわね」と告げた。
どうやら山賊たちは俺たちを獲物と見定めたらしい。
「よし、〈ブリザード〉とマーシャさんの長弓で先制攻撃する。近寄る奴が出たらディアーネ、頼むね」
「わかったわ」
「了解ー」
さあ、山賊との戦闘だ。
山賊たちとの戦闘は、あっけなく終わった。
なにせ範囲魔法の〈ブリザード〉を二、三発撃ち込むだけで大半の山賊が半死半生になり、立っている者はマーシャさんの長弓が狙撃する。
破れかぶれに接近戦を挑もうとする輩は、ディアーネの剣の錆となった。
「さて、生きているのはいるかな。できればアジトも潰しておきたいよね」
「そうね。一網打尽が望ましいわ」
果たして生きている山賊はいた。
六人と少し多かったが。
「素直にアジトの場所まで案内しなさい」
「だ、誰が――ぎゃあ!?」
ディアーネが断りもなく声を上げたひとりを血祭りにあげた。
「これで残り五人。最後まで生き延びられる幸運な奴は誰かな?」
怯える山賊たちは、あっけなくアジトの場所を吐いた。
五人が五人とも同じことを言ったので、もう用事はない。
「よし、せめて苦しませずに殺してあげましょう」
「そんな……話が違うぞ!?」
「山賊を見逃すほど、心が広くないの。依頼では皆殺しで、ともあったしね」
ディアーネの剣が閃く。
残った五人を処理したあと、アジトへ向かうことにした。
アジトに山賊はいなかった。
どうやら俺たちのために律儀に全員が出払っていたらしい。
一応、こちらは武装もしていたから戦力を集めたかったのかもしれない。
ただ人はいた。
山賊に捕まった可愛そうな女性がふたり。
とりあえず〈ヒーリング〉をそれぞれにかけておいた。
さああとはアジトの家探しだ。
親分の部屋の床の敷物を剥がすと、床板に分かりやすく四角い切れ込みが入っていた。
床下には宝石や銀貨がぎっしり入ったツボがあった。
これは戦利品として、俺たちの懐に入る。
ふたりの女性を領都まで連れて帰り、依頼達成となった。




