47.ゲームと違ってなかなか会えない
「そうでしたか、地下墓所にレイスが……」
冒険者ギルドの受付嬢は依頼内容よりも多くのアンデッドの魔石が持ち込まれたことに驚きつつ、申し訳無さそうな顔で俺たちに謝罪した。
ギルドとしてもレイスがいるとは想定外だったらしい。
調査不足を詫びるからと成功報酬と実績の加算については一旦、保留となった。
魔石はゾンビやスケルトン、そしてゴーストのものはゴブリンと大差ない大きさと重さだったが、レイスのものは見てそれと分かるほどに大きくて重かった。
秤にレイスの魔石を乗せると、ぐぐん、とボウルが沈み込む。
査定の結果、なかなかの額になった。
魔石だけでの代金としては解体したキマイラと同等くらいか。
後日、難易度を訂正された依頼票を差し出され、お詫びとともに増額された成功報酬を受け取り、加算された実績でマーシャさんが銅ランクに昇格した。
マーシャさんの昇格祝いということで、宿の食堂でささやかながら豪勢な夕食を頂くことにした。
宿の女将であるスザンナさんの料理の腕前は相変わらず素晴らしく、楽しい時間を過ごすことができた。
「それにしても……レイシアは上位魔法に治癒魔法まで使えて、ディアーネは霊体を斬る凄腕の剣士。私、自信がなくなるわ」
「マーシャさんはまだ冒険者になって日が浅いからさ。そう遠くないうちに【鷹匠】になれるよ」
「【鷹匠】? なぜに【鷹匠】?」
あ、しまった。
この世界では【鷹匠】が【斥候】の上級クラスだと認知されていない。
ただ弓の腕前は同じくらいで、鷹を操れる程度の差しかないと思われている。
「えーとね。実は【斥候】より【鷹匠】の方が格上なんだよ」
「そうなの? どちらも狩人で、弓が扱えて……まあ鷹を操れるだけ【鷹匠】の方が芸がひとつ多いのは確かだけど」
「実は弓の腕前も【鷹匠】の方が若干、上なんだよ」
「それは知らなかったわ」
「ただ難しいのはね。鷹を操らない【鷹匠】がいるってこと。だから実は【鷹匠】なのに【斥候】扱いされている人もいるんだ」
「え、じゃあどうやってそれを見分ければいいの?」
「うーん、見分け方かあ。純粋な弓の腕前で見分けるしかないかな」
「結局、弓の腕前次第ということね」
ワインの入った盃を傾けて、「もっと精進するわ」とマーシャさんは言った。
ちなみに俺たちもアルコールを飲んでいる。
この世界では水道が現代日本ほどには発達していないから、水を飲むなら煮沸してからになる。
だから大抵は自家製の酒で喉を潤すのだ。
とはいえアルコール度数は大したことはない。
これで酔っ払うのは子供でも難しいといった程度のもの。
とはいえ酒精の殺菌作用は確かなので、安全な飲み物といえばアルコール飲料になるわけだ。
閑話休題。
「それにしても、レイシアは色々なことを知っているわね」
「まあね」
「妖精から得た知識なの?」
「えーと……まあそういうことになるかな」
半目になるマーシャさん。
とはいえ前世の記憶について語るのは避けたい。
「あ、そうだ。もし次に妖精に会えたら紹介するよ」
「え? 妖精に?」
「私は故郷の森で妖精に会えたんだけど、どうも運が良かっただけみたいで、それ以後は会えず仕舞いだったんだ。ディアーネとマーシャさんのことも紹介するよ。だって私たちは『妖精の友』だからね」
妖精のフェイとはもう五年も会っていない。
あちらは妖精だから時間の感覚が人間とは違うだろうが、それでも間が空いてしまったのは確かだ。
フェアリーサークルがあれば見逃すことはないと思っていたが、なかなか見つけることができない。
……できれば、このふたりにもアイテム袋とメニュー画面があればいいのだけど。
もう一回、会えたら頼もう。
「私たちが妖精と友達になれるかもしれないのね。それは素敵だわ」
マーシャさんが盃を掲げる。
今日、幾度目かの乾杯をした。




