36.早すぎる指名依頼
翌朝。
クリムゾングリズリーの死体をアイテム袋から出して、村長から依頼票に依頼達成のサインをもらった。
解体は帰ってからでいいだろう。
これから領都に戻れば、夕方には着くだろうから。
何度も村の人たちからお礼を言われ、俺たちは村を後にした。
領都、冒険者ギルド。
道中、特にトラブルもなく戻ってくることができた。
討伐依頼の成功を報告すると、受付嬢から「指名依頼が出ています」と言われた。
指名依頼――読んで字のごとく、特定の冒険者を指名して出す形式の依頼だ。
しかし指名されるには知名度が必要だし、もっと言えば実績も必要だ。
俺たちにはどちらも欠けていると思うのだが……。
「ええと、なぜ指名されたんでしょうか。私たちはまだ銅ランクに上がったばかりですけど」
「それは十歳の女の子ふたりだけのパーティがキマイラを討伐して、銅ランクに昇格したという話は、冒険者の間では有名ですから」
「あ、ああ。そうなんですか」
「キマイラは普通、銅ランクパーティでも苦戦する相手ですからね? それをたったふたり、しかもまだ十歳。噂にならない方がおかしいというものです。――指名依頼の詳細はこちらの封筒にありますので、確認してください。必要なら個室をご用意できますが」
「あ、じゃあお願いします」
俺たちは個室を借りて、封筒の封蝋を切って中の依頼票と手紙を拝見する。
依頼内容は護衛。
依頼主は――バードナ辺境伯!?
俺たちは顔を見合わせた。
「え、辺境伯ってこの街で一番偉い人?」
「ディアーネ。この街じゃなくてこの領地全体で一番偉い人だよ」
「ああ、そっか。……え、なんで?」
「手紙も同封されているから、読んでみよう」
手紙によれば、銀ランクパーティと合同で護衛依頼を受けて欲しいとのこと。
俺たちふたりだけではないようだ。
少し安心したが、しかしこれ見方によれば銀ランクパーティ並みに信頼されているということでは?
「ディアーネ。私たち、何かしたっけ?」
「キマイラ倒したでしょ」
「うーん、でもそれでいきなり領主様の護衛に加われるものかな?」
「私に聞かれても分からないよ!!」
そうだね、分からないよね。
ともあれ指名依頼は特に条件がおかしいとかでなければ受けるのが筋というものだ。
特に今回は依頼主が辺境伯とあって、断る選択肢は実質ない。
俺たちは再びカウンターに戻り、指名依頼を受領した。
その後は解体場を借りてクリムゾングリズリーの解体をして、宿に帰ったのであった。




