27.少女たちが奔走を始める
翌朝の朝食後、マーシャさんがやって来たので宿の営業立て直しのための打ち合わせが始まった。
女将であるスザンナさんも同席してもらっている。
結論から言えば、夕食も朝食も美味しかった。
贅を凝らしたわけではないが、丁寧に下処理された肉や野菜をこれまた丁寧に調理して出しているのだ。
不味いわけがない。
料理に問題はなかったということが、まずは分かった。
では何が問題かと言うと、ハッキリしないのだ。
スザンナさんの夫が亡くなった途端に常連たちがパッタリと姿を見せなくなる理由が分からない。
「これが常連さんたちの名前をまとめたリストです」
スザンナさんが紙に書かれた人名の羅列を寄越してくる。
これを見ただけじゃ分かることはないかと思っていたが、存外に常連の客数が多かった。
つまりこの宿、ほとんど常連で埋まっていたようなのだ。
マーシャさんは鼻息荒く、「このリストの人たちを探して、声をかけてくれるだけでいいから」と言った。
「どうかスザンナさんの宿に戻ってきてくれませんか、って感じかな。無理強いできる話でもないし、……あ、でも宿代は以前のままだし、料理も以前のように美味しいし、掃除も行き届いているって教えてあげてよ。店主が亡くなって、その辺の心配があって出ていったのかもしれないし」
「そうだね。ここの料理、本当に美味しかった!!」
ディアーネは完全にやる気でいる。
だが俺はなんとなく裏を感じて、これは一筋縄じゃいかない気がしていた。
リストには常連客の名前以外にも簡単に職業なども書かれており、ほとんどは冒険者だった。
リストは二枚あり、一枚は宿に宿泊していた常連客。
二枚目には食事だけを摂りに来ていた常連客の名前が書いてある。
食事だけを摂りに来ていた客層はさすがに職業がバラバラだが、珍しいところでは酒場の店主や店員が見受けられる。
ちなみに夕食のときは宿泊しないけれど食事だけを摂りに来ていたお客さんも少ないながらいた。
その人たちは以前からの常連客ではなく、スザンナさんの旦那さんが亡くなってからのお客さんらしい。
マーシャさんは用事があるとかで打ち合わせの後で慌てて姿を消したので、今はディアーネとふたりでリストを眺めてどこから行こうか相談しているところだ。
「やっぱり宿泊客を戻すのが一番だと思うんだよね。片っ端から探そうよ」
「……いや、多分その人たちって今は他の宿に宿泊しているんだよね? それを他所の宿に来てくれというのは、その宿の人たちに恨まれそうだし、簡単に頷ける話じゃないと思う」
「えー……うん、なるほど?」
「だから私は二枚目から攻めるべきだと思う。まずこの酒場の店主に話を聞きに行こう。酒場なら昼間は店を閉めているだろうから、話がしやすいと思う」
「ほうほう、さすがレイシア。やる気だね!」
いや、単に事情が気になるだけなんだけどね。
それに食事を提供するという立場で同業者である酒場の店主ならば、ある程度、事情に通じていると思ったのだ。
かくして俺たちはまず、酒場の店主に声をかけに行くことにした。




