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トゥエルブ ~TS転生した世界は俺がやり込んだゲームにそっくり!12のスキルでシナジーとコンボを駆使する~  作者: イ尹口欠
冒険者少女ふたり旅

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25/73

25.領都に到着!!

 俺たちは遂にバードナ辺境伯領の領都に辿り着いた。

 手前の街での冒険者ギルドの不正行為には後ろ髪を引かれるものがあったが、所詮ランクが鉄程度の冒険者が何を吠えたところで解決するわけでもない。

 願わくば『旋風』の彼らがなんとかしてくれるといいのだが……。


 さて領都ともなると、他の街とは異なり堅固な城壁が幾重にも重なっている。

 どうやら街が拡大するにつれて城壁を新たに建造しているからこのような形になったのだろうと想像はつくが、つまりこれまでの街より遥かに広く大きいのだ。


 俺たちは完全にお上りさん状態で、街を見物しながら宿を探した。

 領都で冒険者活動をする以上、安くて清潔で治安の良い場所を選びたい。

 長逗留するつもりなので、居心地の良い宿は必須だろう。


 冒険者ギルドで聞いても良かったが、カウンターは生憎と混み合っていた。

 他の冒険者たちに聞くという手もあったが、年上の男ばかりのところに突撃するのもなんとなく憚られる。

 そうそう変なのに出くわすこともなかろうが、リスクのある行動を取るべきではないと俺たちは判断した。

 というか俺が、判断した。


 ディアーネは完全に都会の空気にあてられていて判断力が低下している。

 人のことを言えたもんじゃないが、もう少し落ち着いて欲しい。


 ……まああの農村しか知らなかった頃から随分と色々、見てきたとはいえ、この街は大きすぎるからなあ。


 気持ちはわかるんだけどね。


 さて何軒かの宿を見て回っていると、「あ、君たちもしかして宿屋を探してたりする?」と女性に話しかけられた。

 十代後半くらいだろうか、長い金髪を綺麗に整えている。


「ええまあ。この辺に安くて綺麗なまともな宿はありますか?」


「あるよ。お姉さんオススメの宿。案内しちゃうよ~」


「え、ちょ――」


 腕を取られて女性はグイグイと引っ張っていく。

 表通りから一本外れたところにある、ちょっと寂れた宿に連れてこられた。


「あはは……ちょっと表は薄汚れているけど、サービスいいし、ご飯も美味しいし、何より安いよ!!」


「はあ。その割りには流行ってませんね」


「んー、まあその辺はちょっと事情があってね。先代の店主が病気で急逝しちゃってさ。常連さんが離れちゃって。でも奥さんと娘さんが今は切り盛りしているの。ちゃんとしたとこだから安心していいよ!」


「じゃあ覗くだけ」


「うんうん、見てってあげてよ」


 あれ、今の話だとこの女性が奥さんか娘さんかと思ったが違うらしい。

 宿に入ると、女性を見て十二歳くらいの女の子が目を丸くした。


「あ、マーシャさん」


「こんにちは、スーちゃん。お客さん連れてきたよ!」


 ちょっと待て、まだ泊まるとは言ってないぞ。

 しかし確かに外見に反して、店の中は綺麗に掃除されている。

 まあ試しに一泊くらいはしてもいいかもしれない。


「マーシャさん……強引に連れてきちゃったんですか? もう……ごめんね、君たち」


「ええと、いえ。宿屋を探していたのは確かなので。とりあえず一泊だけ。ふたり部屋ありますか?」


「ありがとう、ふたり部屋ね。あるよ。――お母さーん!!」


 スーちゃんと呼ばれた宿の娘さんが店主である母親を呼んだ。

 奥から「はーい」と言って奥から出てきた女性は、まだ二十代も中頃くらいの美人さんだった。

 そして居合わせた面々を見て、すぐさま状況を把握したようだ。


「あらあら、お客さんを連れてきてくださったの、マーシャさん」


「ええ。この宿はキチンとした宿だってことを分かってもらえれば、リピーターは必ず増えると思ったから」


「ありがたいけど、あんまり強引な客引きは……」


 困ったように頬に手をやる女将さん。

 俺は歩き詰めで少し疲れていたので、早めに会話を切り上げたくてさっさと部屋に通してもらうことにした。


「いえどのみち宿を探していたのは本当ですし、とりあえず一泊だけお願いします」


「あら、ありがとうね。それじゃあ記帳をお願いします」


 真新しいページに名前を書いた。


「お食事はいかがします? 夕食と翌朝の朝食を用意できます」


「両方ともここで摂ります」


「分かりました。それでは食事付きで、ふたり部屋一泊ですね」


 領都にしては割りと安い宿代を支払ってから、部屋に案内してもらう。

 部屋の方も綺麗にしてあって、ベッドの布団からはお日様のいい匂いがした。


「良さそうな部屋ですね」


「ありがとうございます。こちらこの部屋の鍵です。無くさないようにお願いしますね」


 部屋の鍵を預かり、とりあえずお湯を用意してもらう。

 気がついたらマーシャという女性はいなくなっていた。

 結局、なんだったんだろう、あの人は。


「ひとまず良さそうな宿だね。あとは料理が美味しければここに決めちゃってもいいかもね」


「うん! 悪くなさそうな宿だね。女性だけでやっているらしいから、大変そうだけど……」


「でも掃除は行き届いているようだし。領都にしては宿代、安かったしね。あれでやっていけるのかなあ」


 内心で訳ありではないだろうか、ここの宿、と思っていたところ。

 表で何やら大声でのやりとりが聞こえてきた。


「あんたたち、ここはれっきとしたスザンナさんとスーちゃんの宿だよ! 文句ある!?」


「文句はねえけどよぉ。だけどなあ? ひひひ」


 マーシャという女性の声だ。

 対するは複数の男たちの声、なんとなくガラが悪そうな物言い。

 揉め事だろうか?


 眉をひそめた傍から、立ち上がるディアーネ。

 おいおい、首を突っ込む気か?


「ちょっと様子を見に行ってくる」


「待った。私も行くから」


 この宿に何か事情があるのなら、情報を得ておきたい。

 それにディアーネだけだと心配だしね。


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