22.範囲攻撃は優秀なのだ
「おお、冒険者さんかね。えらく可愛い子らが来たもんだ」
依頼主の村長は、恰幅のいい腹を揺らしながら笑顔で言った。
街から半日ほどの距離にある農村。
都会に近いこともあって、俺たちの故郷よりなんというか彩りが豊かだ。
――ほんとにウチはド田舎だったんだなあ。
なんてことを思いながら依頼について話を聞くと、驚くべき情報をもたらされた。
「ファングボアが村の作物を荒らして困っている。目撃証言を合わせると、六頭いるみたいでなあ」
「六頭? 聞いてないな……」
「ん、そうなのかい。冒険者ギルドに行かせた若いのにはちゃんと依頼するように言っておいたのだが……」
「ああ、でも六頭は狩れない数じゃないから大丈夫です」
成功報酬の割りにハードだが、六頭分のファングボアの売り値を考えれば路銀稼ぎとしては悪くない。
村長の「そんじゃまあ、頼りにしておくわ」という声を背にして、村近くにある森へと向かった。
森の手前で、ディアーネが心配そうな顔で問うてきた。
「ねえ、六頭が一度に出てきたらどうするの?」
「実は範囲魔法を習得したんだ。多分、楽勝だと思うよ」
「範囲魔法? いつの間に……」
ディアーネが「また水をあけられちゃったか」と呟く。
多分、ディアーネも強くなっているはずだが、確かめる術がないのが悩ましいところだ。
「じゃあ森に入ろう。全部で六頭、一気に片付けられれば美味しいね」
「そうだね。ファングボアならそれなりにいい値段で売れるしね」
森はそう広くはない。
小一時間ほど歩いたところで、めいめいにたむろするファングボアを発見した。
ただしその数、八頭。
「多くない?」
「多いけど……まあ範囲魔法だから何頭いても変わらない。先制攻撃するよ!」
「うん!」
こちらに気づいたファングボアたちが立ち上がる。
俺はそこに魔法が出現するように意識しながら、スキルを発動した。
「〈ブリザード〉!!」
ヒュゴォォォォ!!
半球状の吹雪が吹き荒れる。
全部のファングボアをうまく巻き込めたようで、あっけなくファングボアは全滅した。
「はえー凄い」
「数は撃てないけど、一発でこれだから。効率がいいね」
まだ息のある個体もいたが、半身が氷漬けになっており満足に動くこともできない。
ディアーネがトドメを刺していき、俺はファングボアをアイテム袋に収納していく。
依頼の数より多いが、少ないよりは良いだろう。
俺たちは村に戻った。
「おお冒険者さんたち、どうだったね?」
「狩ってきました。いま出しますから確認してください」
「出す?」
首を傾げた村長を尻目に八頭のファングボアの死体を並べる。
「な――いま、何を!?」
「こういう魔法なんです。森には見ての通り八頭いました。数は十分でしょう。依頼票にサインをお願いします」
「う、うむ。若いのに凄い冒険者さんだったようだなあ」
無事にサインをもらって、ファングボアを回収してから街へと戻った。




