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義妹が可愛すぎて同棲生活が大変です  作者: 桜井正宗
God does not play dice. 同棲生活 - 2

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ホラー映画鑑賞①

 親父のせいで、そういう気分でもなくなった。菜枝も恥ずかしがってお風呂へ行ってしまったし……残念。


 俺は晩御飯の準備を進めた。

 とはいえ、お湯を沸かす作業だけだから直ぐ終わるけど。


 電気ケトルに水を注ぎ、セット完了。

 五分もあれば沸く優れものだ。


 カップ麺は『壱蘭(イチラン)』という細麺タイプのカップ麺だ。具がないので、自分でトッピングしないといけない。


 そのままでも美味いが、せっかくなので煮タマゴ、もやし、チャーシューくらいならあるし、投入するか。おっと、海苔(のり)も必要だな。



 ある程度だけ準備して、菜枝を待った。



 だけど、菜枝の風呂は長いからなぁ。

 その間、俺はスマホでネットニュースを閲覧したり、ゲームをしたりして時間を潰した。



 ――三十分後。



「お待たせしました、兄さん」



 LVの文字が入ったシャツとスポーツタイプのショートパンツ。菜枝はどんな姿でも可愛い。スレンダーで無駄がないから、思わず感動するほど芸術的だ。だから見飽きないし、少しの変化でも新鮮で心が躍るんだ。



「そろそろと思ってカップ麺を用意しておいた。壱蘭にしておいたぞ」

「わぁ、良い香りです。でも兄さん、壱蘭って高いのでは?」


「カップ麺にしては五百円と高額だ」

「わぁ、一個で五百円もするのですか。普通、百五十円とか二百円ですよね」



 元金持ちのお嬢様である菜枝ですら、そう思うらしい。とはいえ、俺もこのカップ麺に関しては割高だとは思う。高いけど、これがいいんだよな。



「最近は儲かっているから、いいさ。よし、蓋を開けてもいいぞ」

「それもそうでしたね」



 納得する菜枝は、席に着いて手を合わせた。俺も同じように「いただきます」をした。蓋を開けると良い香りが漂った。


 う~ん、この“とんこつスープ”の香り……食欲がそそられる。



「まずはスープ……」



 レンゲで掬って口へ運ぶ。

 う~ん、さっぱりしていて、くどさがない風味。これこれ、これがいい。秘伝のタレで少しピリ辛だが、これもまたいい。



「兄さん、これとても美味しいですっ」

「久しぶりに食べたけど、いけるな」

「具材は入れてくれたのですよね」


「ああ、トッピングしてみた。そのままだと味気ないと思ってさ」

「煮タマゴが大好物なんです。ん~、美味しい」



 本当に美味しそうに煮タマゴを味わう菜枝の表情は幸せそうだった。ここまで喜んで貰えるとは。そういえば、菜枝は卵料理全般が好きだったな。



「それ美味いよなあ」

「はい。なので、兄さんにも“あ~ん”です」



 食べかけの煮タマゴをレンゲで掬い、俺の口元へ運んでくれる菜枝。なんと、ここで“あ~ん”とは、これはありがたくいただくしかない。


 俺はパクっと煮タマゴを(かじ)った。



 ……美味すぎて涙が出た。



「……うまい、うますぎる」

「良かった。兄さんに喜んで貰えて」

「菜枝からしてもらえる“あ~ん”が世界一美味いよ」

「そんな、兄さんってば」


 頬を深紅させる菜枝は、照れながらもラーメンを啜った。

 ほのぼのとした食事が進んでいく。



 * * *



 俺も風呂を済ませ、自室でまったりタイム。――のはずだったが、菜枝が俺の部屋にやって来た。なんだか挙動不審で。


「どうした、変だぞ」

「いえ、これは、その……兄さん」

「うん、なんだ?」


「えっとぉ……えっちな動画……一緒に見ませんか」

「え!?」


「ほら、わたしってあんまりそういう知識がないので……兄さんと一緒に見れば勉強になるかなって」


「つまり、エロ動画を一緒に鑑賞するってこと?」



 はい、と菜枝は返事をした途端に背を向けた。めちゃくちゃ恥ずかしそうだ。……ていうか、兄妹でエロ動画を見るとか気まずすぎるって!


 そりゃ、興味がないわけじゃない。

 それに今時はネットでいくらでも見られるからな。サブスクとかサンプル動画とか。



「ダメでしょうか。少しでも大人になりたいんです」

「いや、無理して背伸びする必要はないと思う。ほら、菜枝ってまだ高校一年生じゃん。中学生から高校生になったばかり……急ぐ必要はないさ」


「でも、クラスメイトの女子は……もう経験してるって」


「んなッ!?」



 嘘でしょ……。もう!? 早い、早すぎるな。いやでも、早い子は中学生時代で彼氏作ってイチャイチャしまくっているだろうからな。俺にはそんな青春時代なんて無かったけど、今は高校生にして菜枝がいる。


 この特殊で奇跡的な邂逅(かいこう)、同棲生活、特別な毎日はそう経験できることじゃない。


 そもそも、菜枝は本来なら天笠家のお嬢様。俺程度の人間が気安く触れていい女の子じゃなかった。けれど、今はもうそうじゃない。


 義理の妹だ。

 身近な存在になってしまった。


 だからこそ、大切にしたい。

 でも……菜枝はえっちな女の子だから……。



「兄さん、わたし……」

「ま、待て。エロ動画はなしだ。ほら、今日親父が来たじゃないか。また不意に来られた時がマズい。今度こそ同棲生活を打ち切られてしまう」


「……そ、それは嫌です。分かりました。今晩は諦めますね」


「ああ、それでいい。映画鑑賞にしよう」

「じゃあ、えっちな映画にしましょ」


「そこは譲れないんだな。分かった、ホラー映画にしよう」

「ホラーですか?」

「うん、マイナーなホラー映画にはエロ要素もあるからね。少しだけど」

「それはいいですね! ついでに兄さんに抱きつけるので」



 菜枝を隣に座らせ、さっそくネット配信(サブスク)で映画を選んでいく。こういう時のアマゾ~ンプライムは役に立つ。


 お、この『テリファー』ってホラー映画、面白そうだ。これにしよう。

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