兄さんが好きです
指が、掌が、俺の背中を撫でていく。
ボディソープを上手に泡立てる菜枝は、愛情を込めて丹念に洗ってくれた。明らかに昨晩とは指使いが違う。
昨晩には緊張があったし、ロボットのようなぎこちない動作に近かった。でも今日は、ひとつひとつの動作が丁寧。
「……っ」
あまり擽ったくて、俺は悶えた。
「兄さん、わき腹が弱いのですね」
「大体の人が弱いと思うぞ……」
「このまま兄さんの大切なところへ手を伸ばしても……」
乱れた息遣いで菜枝は、俺の下半身に侵入しようとした――が、俺は手で阻んだ。
「そ、それはダメだ! 危険すぎる。今は背中限定だ」
「……そうですか、残念です」
本気で残念ながる我が妹。
「それより、この勝負は俺の勝ちか?」
「兄さん、思ったより耐えていましたね。悔しいですが、裸では抱き合えないです」
「それはまだハードルが高すぎる……勘弁してくれ。でも、ビキニは解いていいんだよな」
「……は、はい。では、場所を交代しましょう」
場所を代わり、今度は菜枝が前へ。
少し震えながらも背中を向けた。
さすがの菜枝も正面から水着を解かれるのは恥ずかしい、ということか。
「本当に良いんだな」
「……もちろんです。優しくお願いしますね」
「あ、ああ……」
男のロマンであるビキニのヒモ。
だが、まずは上からだ。
菜枝の胸を包むビキニ。こちらもヒモで固定されている。
「に、兄さん、もしかして上下両方脱がすつもりですか?」
「え……そういうことじゃないのか」
「…………うぅ、両方は恥ずかしいです」
「指定はなかっただろ。上も下も脱がすぞ」
そうだ、この勝負が俺が勝ったんだから……当然の権利なんだ。
まずは上のヒモから手に掛けていく。
引っ張るだけで簡単に脱げてしまった。
菜枝は耳まで真っ赤にして、両腕で胸を隠した。健気で可愛い。
「綺麗だよ、菜枝」
「あ、ありがとうございます、兄さん。でも、今は絆創膏もないので……本当に恥ずかしいです。鼓動が鳴りっぱなしで死んでしまいそう」
「でも、次は下の方だぞ」
俺はもう我慢できなくて、ビキニの下の方のヒモに手を伸ばしていた。これを引っ張れば……菜枝は生まれたままの姿になる。
菜枝だって望んでいることだ。
俺もこの先を見てみたい。
ヒモを摘まんで、ゆっくりと引っ張る。
しゅるしゅると解かれていくビキニ。菜枝は少し屈むようにして耐えていた。そんな姿が可愛くて愛おしかった。
なんだこれ……すげぇ興奮する。
「……兄さん、やっぱりダメッ」
恥ずかしがって、くるっとこちらに向く菜枝は飛びついてきた。
「うわッ! な、菜枝……抱きつくなよ」
「だ、だって……裸になってしまったんですよ」
俺の手にはビキニが握られていた。……そうか、俺は本当に菜枝を全裸にしてしまったようだ。
こう抱きつかれていては肝心な部分が見えない。でも感触は理解できた。全てが柔らかい……手も足も、胸もお腹も、腿も足も……なにもかもが。
「このままでいいのか」
「はい……このままがいいです。やっぱり、わたしまだ……処女だから……いろいろ分からないことが多いんです。さっきはビックリしちゃって」
「そういうことか。――って、さりげなく処女を告白するな……その方がビックリしたわ」
とは言え当然か。さすがに高校一年生で経験がある方がショックすぎるというか、複雑すぎる。
「彼氏いなかったんだ」
「そんなのいないです。わたしはずっと兄さん一筋です」
「そ、そっか。嬉しいなそれ」
「兄妹としても、異性としても兄さんが好きです」
「……俺もだよ、菜枝」
結局、ほぼ裸で抱き合う形にもなった。
妹がこんなに可愛い存在だったなんて……知らなかった。この生活を続けたい。ずっと。




