義妹と同棲生活
天使が舞い降りた。
俺はそう感じた。
今、目の前には甘そうなクリーム色の髪を靡かせる美少女がいた。
彼女の髪は腰まで伸び――女神のようだった。
俺の通う高校と同じ制服。
「菜枝です。今日からあなたの義妹になるので……『神堂 菜枝』となります。よろしくお願いします」
菜枝と名乗る少女は、頭を深々と下げて丁寧に挨拶をした。
俺は見惚れていたせいで、まともな思考が出来なかった。……って、義妹?
「えっと……」
「神堂家も天笠家も了承済みです」
「そうなのか。今日から俺のアパートに住むの?」
「はい。……その“同棲”という形になると思います」
「ど、同棲!? マジ?」
「男女で住むことですから間違っていないですよね? これから、わたしと兄さんで一緒に生活するんです」
間違いではないけど――俺とこの子が? 信じられんな。俺は学生の身で一人暮らしこそしているけど、女の子の気配なんて一ミクロンもなかった孤独人生。一生童貞であると確信していたほどだが……まさか、こんな日が来るとは。
でも、まだ信じられない。
信じられないけど、菜枝は大きなキャリーバッグを持っていたし……住む気満々だった。
「理由を教えてくれ。なんで俺の義妹? なんで同棲したい」
「頼れる人が來くんしかいないんです。だから……」
久しぶりに名前で呼ばれた。
そう呼ばれて思い出した。そういえば、かなり昔に菜枝とは遊んだことがあった。少し記憶が蘇ってきたな。
「事情は教えてくれないのか」
「……今はまだ。でも、いつか話します」
「分かった。困っているみたいだし、まずは暫定でいいか」
「はいっ。それでも構いません! お試しでもいいです。もし気に食わなければ、わたしを捨てても構いませんから」
捨てるとか、そんな非情な真似はできないがな。まあいいか、こんなアイドル級の美少女と一緒に住めるとか夢のようじゃないか。
菜枝がこんなに綺麗に成長していたとも思わなかったし、もう縁がないかとも思っていた。
一応、幼馴染だったこともあった。
知らない仲でもないか。
直後、スマホに連絡が入った。
見てみると親父からだった。
『來、いいか。今日の朝、天笠家の菜枝ちゃんがそちらへ向かう。覚えていないかもしれないが、昔の幼馴染だ。その娘と一緒に学生生活を送るのだ。後はお前に任せる』
――なんてこった。
こうなったら面倒を見るしかないかな。
親父には、アパートを借りて貰った恩があるし、断れない。
俺は、菜枝との“同棲”をはじめた。
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