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第81話 事の顛末

 理事長室で資料に目を通しているラーナの前に、かつてない程の魔力を持ち合わせた者と対峙する。


「やあ、取り込み中だったかい?」


「……君だったのか」


 突然の来訪者にラーナは手元の資料を床に落としてしまうと、それを拾い上げる余力もなく平常心を保つのに精一杯で生きた心地が全くしない。

 今までの彼女を評価するなら、気立ての良い運動神経が抜群の女子高生。

 だが、今は違う。

 目の前にいる彼女は完全な人外であり、吸血鬼のラーナですら屈服してしまいそうな恐ろしい存在、神と呼ぶに相応しいだろうか。


「先日は部下が失礼したね。少し驚かす程度で足止めをお願いしたのに、まさか冷蔵庫や電気系統を壊してしまうとは思わなかったよ。これはお詫びと思って受け取って欲しい」


 来訪者は懐から札束を提示すると、柔和な笑顔を向ける。


「これを渡すために正体を明かして現れた訳じゃなかろう?」


「まあね。本当は誰にも悟られずにクシャちゃんと接触して目的を達成するつもりだった」


「その目的については興味深いね。支障がなければ、君達の目的を話してくれないかな?」


 提示された札束に興味はない。

 魔力を抑え込んで学園に忍び込み、何を掻き回っていたのか。

 返答次第では学園を守るために来訪者とその仲間達を相手に戦う選択肢もあり得るかもしれない。

 勝算は限りなく0に近いが――。


「そうだねぇ……マザーラーナには色々とお世話になったし、時間があったらデートでもしながら話したかったなぁ」


「お世辞でも嬉しいことを言ってくれるね。でも、私は自分より年上の女性はタイプじゃないんだ」


「ありゃ、それは残念だ」


 来訪者は見事にフラれて、おどけたように両手を広げて見せると、ラーナに事の顛末を話した。

 黙って来訪者の話に耳を傾けて聞き終えると、普通なら現実味がない途方もない話で片付けられてしまうだろう。


「二人のデートを見届けた後はもうここを離れるよ。それで私とキャスも自主退学ってことで受理してくれると有り難い」


「ふぅ、わかった受理しよう。でもまさか、あの女神様がキャス君だったとはね。参考までに君の部下で他の女神様もあんな感じなのかい?」


「お転婆なのはあの子ぐらいさ。態度とおっぱいは大きいけど、根は優しい子なんだけどね」

「ふーん、それを聞いて少し安心したよ。キャス君みたいな女神様だらけだったら、教会で神に祈るのを止めようかと悩んでしまうところだった」


 しばし談笑に花を咲かせると、いつの間にか生命の危機に怯えていたラーナの心は平常心を取り戻していた。

 恐ろしい力を有しているのは間違いない。

 そんな女神達を欺く存在があることを、真実を知ったダークエルフの少女はどんな反応をするのか。


「それではそろそろ失礼するよ。マザーラーナの作ったカレーはとても美味しかったよ」


 来訪者はそう言い残してその場を去ると、理事長室には散らばった資料の上に腰を抜かしたラーナが天を仰ぎながら女神達と二人の少女の行く末に祈りを捧げた。

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